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蛍火1
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翌日、馨は誰もいない校内にいた。当然、瑠璃子の姿を見つけることもできなかった。
それが、余計に胸を締め付けた。
やはり、フラれたのかもしれない。
重い足取りで学校から帰宅すると、馨は母からの置き手紙と、灰色の封書をテーブルの上に見つけた。
『馨のサークル仲間の子が亡くなったそうです』
置き手紙にはそう書かれていた。
慌てて封書を手に取る。
「うそ、だろ?」
手が震えた。
何度見ても、差出人はよく知った人物と同じ名字のものだった。
訃報を伝えるための灰色の封書。
瑠璃子の父親の名がそこにはあった。
どう開いたのかは覚えていない。葉書には、残暑を伝える書面ではなく、制服姿でピースをする少女と、少女の没した日付と、齢が記されていた。
日付は、あの約束をした日だった。
また会おうね
小川の向こう岸でそう微笑んだ瑠璃子の姿がよみがえる。
その傍らに居たのは、蛍の微かな光に照らされていた浴衣姿の男は、掃除屋だったのか。
馨は駆け出していた。
にこやかに笑う浴衣姿の男。
掃除屋が何者なのか、馨は確信していた。
そして、その掃除屋と一緒に居た、瑠璃子。
蜩の声と共に、どこかで奏でられている賑やかな祭りの音が耳に触れた。
赤い西日が、ゆっくりと落ちていくのを、追いかけるように馨は走った。
それが、余計に胸を締め付けた。
やはり、フラれたのかもしれない。
重い足取りで学校から帰宅すると、馨は母からの置き手紙と、灰色の封書をテーブルの上に見つけた。
『馨のサークル仲間の子が亡くなったそうです』
置き手紙にはそう書かれていた。
慌てて封書を手に取る。
「うそ、だろ?」
手が震えた。
何度見ても、差出人はよく知った人物と同じ名字のものだった。
訃報を伝えるための灰色の封書。
瑠璃子の父親の名がそこにはあった。
どう開いたのかは覚えていない。葉書には、残暑を伝える書面ではなく、制服姿でピースをする少女と、少女の没した日付と、齢が記されていた。
日付は、あの約束をした日だった。
また会おうね
小川の向こう岸でそう微笑んだ瑠璃子の姿がよみがえる。
その傍らに居たのは、蛍の微かな光に照らされていた浴衣姿の男は、掃除屋だったのか。
馨は駆け出していた。
にこやかに笑う浴衣姿の男。
掃除屋が何者なのか、馨は確信していた。
そして、その掃除屋と一緒に居た、瑠璃子。
蜩の声と共に、どこかで奏でられている賑やかな祭りの音が耳に触れた。
赤い西日が、ゆっくりと落ちていくのを、追いかけるように馨は走った。
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