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約束5
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約束の日が訪れた。
馨は結局待ち合わせの時間まで待ちきれず、二時間前には到着してしまっていた。
車の往来の音のなか、橋のたもとに設けられた夏祭りの告知看板を呆然と眺め、馨は呟いた。
「なにやってんだ、俺…」
先程から、気づけば腕時計の時間しか見ていない。
日が長いとはいえ、まだ明るすぎる。
当然早くに瑠璃子が現れるという奇跡が起こる筈もなく、しかも事態は悪い方向へと向いていた。
約束の時間になっても、瑠璃子は現れなかったのだ。
すっかり日が落ち、辺りは暗くなった。
待ち合わせの橋から、少し離れた支流の河原に馨は移動していた。
水音だけが変らず、馨の耳に触れる。焦る馨に、何も語らず水の流れは静かに響いていた。
薄闇の中に、微かに光が見えた。
見間違いかと、馨は目を擦った。
それは確かに、馨の目の前でふわりと舞い上がった。
蛍だった。
馨は呆然と、追いかけるように次々に飛び立つ蛍の光を見ていた。
綺麗だと思う反面、時間になっても現れない瑠璃子に苛立ちを覚えていた。
「俺、フラレたのかな」
ため息を一つ吐いて、水面に向かって地面を蹴った。
ポチャン。
音とともに、蛍は揺らめいた。
馨は肩を落としてぼんやりとそれを見ていた。
「馨くん」
突如、名を呼ばれて馨は慌てた。
見れば、小川を挟んだ向こう岸に、浴衣姿の少女が見えた。
瑠璃子だった。
その傍らに、誰かが立っているが、よく見えない。
「ごめんなさい。わたし、そっちに行けなくて。でも、綺麗だね」
連れがいるからだと馨は気付いた。
「ごめんなんて。気にすんな。でも本当、綺麗だよな」
もしかしたら、顔が引き攣っていたかもしれない。
でも、馨はその場を笑って、小川越しに瑠璃子に手を振った。
瑠璃子はどこか寂しそうに見えた。が、それは蛍の幽かな光の色がそう見せていたのかもしれない。
「じゃあ」
瑠璃子が手を振った。
「また会おうね」
「ああ、またな」
バツが悪いと感じながら、馨は俯いて瑠璃子に手を振った。
顔を上げると、瑠璃子は消えていた。
馨は結局待ち合わせの時間まで待ちきれず、二時間前には到着してしまっていた。
車の往来の音のなか、橋のたもとに設けられた夏祭りの告知看板を呆然と眺め、馨は呟いた。
「なにやってんだ、俺…」
先程から、気づけば腕時計の時間しか見ていない。
日が長いとはいえ、まだ明るすぎる。
当然早くに瑠璃子が現れるという奇跡が起こる筈もなく、しかも事態は悪い方向へと向いていた。
約束の時間になっても、瑠璃子は現れなかったのだ。
すっかり日が落ち、辺りは暗くなった。
待ち合わせの橋から、少し離れた支流の河原に馨は移動していた。
水音だけが変らず、馨の耳に触れる。焦る馨に、何も語らず水の流れは静かに響いていた。
薄闇の中に、微かに光が見えた。
見間違いかと、馨は目を擦った。
それは確かに、馨の目の前でふわりと舞い上がった。
蛍だった。
馨は呆然と、追いかけるように次々に飛び立つ蛍の光を見ていた。
綺麗だと思う反面、時間になっても現れない瑠璃子に苛立ちを覚えていた。
「俺、フラレたのかな」
ため息を一つ吐いて、水面に向かって地面を蹴った。
ポチャン。
音とともに、蛍は揺らめいた。
馨は肩を落としてぼんやりとそれを見ていた。
「馨くん」
突如、名を呼ばれて馨は慌てた。
見れば、小川を挟んだ向こう岸に、浴衣姿の少女が見えた。
瑠璃子だった。
その傍らに、誰かが立っているが、よく見えない。
「ごめんなさい。わたし、そっちに行けなくて。でも、綺麗だね」
連れがいるからだと馨は気付いた。
「ごめんなんて。気にすんな。でも本当、綺麗だよな」
もしかしたら、顔が引き攣っていたかもしれない。
でも、馨はその場を笑って、小川越しに瑠璃子に手を振った。
瑠璃子はどこか寂しそうに見えた。が、それは蛍の幽かな光の色がそう見せていたのかもしれない。
「じゃあ」
瑠璃子が手を振った。
「また会おうね」
「ああ、またな」
バツが悪いと感じながら、馨は俯いて瑠璃子に手を振った。
顔を上げると、瑠璃子は消えていた。
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