くすぐったさに心惹かれて

文字の大きさ
4 / 5

『ささやきの夜、ほどけていく心』

しおりを挟む

夜は深く、窓の向こうには風がそっと樹々を撫でていた。
静けさの中で彼女──璃紗(りさ)は、一枚の柔らかなガウンに身を包み、アンティークの椅子にもたれていた。

「本当に……こんなこと、されると思わなかった」

その声には、照れとも困惑ともつかぬ響きが混ざっていた。
目の前に立つ彼──悠真(ゆうま)は、ただ静かに微笑む。どこか、何もかも見透かすような眼差しで。

「怖くはない?」

「……怖くはない。けど、くすぐったいの、ほんとうに苦手なの……」

「知ってるよ。だからこそ、優しくする」

彼はそう言って、璃紗の足首にそっと触れた。
その手はとても温かく、ふれるというより、風のように、忍び込む。


◼️「抵抗と、期待のはざま」

璃紗は膝を抱えるように身を丸めた。
「だめ……そこ、触れられたら笑っちゃう……ほんとに」

「笑っていいよ。恥ずかしくても、ちゃんと見てるから」

彼の指先が足の甲をかすめ、指の間へと滑り込む。
くすぐったさがじわじわと滲むように湧いてきて、思わず体が震える。

「んっ……ふふっ……も、もう……ちょっと……!」

身体は逃げようとする。けれど、心の奥が逃げたくないと願っている。

逃げ場のない快感に包まれながら、璃紗は気づく。
くすぐられているのに、彼の手は決して乱暴じゃない。
愛おしむように、触れてくる。


◼️「くすぐったさの中の安らぎ」

次第に璃紗は笑い声を洩らすことさえ、恥ずかしさより心地よさが勝ってくる。
迷走神経が目覚めるように、深い呼吸ができるようになっていく。

──ああ、これは「責められている」のではない。
これは、「許されている」──そう思った。

指先は今、うなじをやさしくなぞっている。
髪をかき分け、くすぐるというより、記憶を辿るように。

「ここも……ちょっと、くすぐったい……ふふ……」

「ちゃんと反応してくれてるんだね。うれしいよ」

彼の声には、欲望ではない、慈しみがあった。


◼️「甘美な支配」

手は肩、わき、肋骨へと彷徨う。
璃紗はもう、完全に身を委ねていた。
無理やりではない。自分で選んで、ほどかれている。

「弱いところ、ぜんぶ知られてしまう……」

「でもそれって、すごく綺麗なことだよ。僕だけに見せてくれるなんて」

最後のくすぐりは、おへそのすぐ下。
神経が交差する場所に、羽のような刺激がひとつ。
そこはもう、「笑う」よりも「感じる」──静かな快感の泉。

璃紗は深く息を吸って、瞳を閉じた。


🌸「くすぐりとは、心の儀式」

くすぐったさは、ただの笑いではない。
それは「感じることを許された証」。
自分でいることを赦されたとき、人はようやく快感にほどけてゆける。

悠真は囁く。

「璃紗……笑ってくれて、ありがとう。心をひらいてくれて、うれしかったよ」

そして、璃紗もまた小さく頷いた。

「わたしも……よかった……あなたの手、優しかったから」

──夜の深さは変わらない。けれど、璃紗の心はほんの少し、自由になっていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

三匹の○○○

𝐄𝐢𝐜𝐡𝐢
大衆娯楽
【注意】特殊な小説を書いています。下品注意なので、タグをご確認のうえ、閲覧をよろしくお願いいたします。・・・ とある家を襲おうとしている狼の、下品な話。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

👨一人用声劇台本「寝落ち通話」

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
彼女のツイートを心配になった彼氏は彼女に電話をする。 続編「遊園地デート」もあり。 ジャンル:恋愛 所要時間:5分以内 男性一人用の声劇台本になります。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...