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『ささやきの夜、ほどけていく心』
しおりを挟む夜は深く、窓の向こうには風がそっと樹々を撫でていた。
静けさの中で彼女──璃紗(りさ)は、一枚の柔らかなガウンに身を包み、アンティークの椅子にもたれていた。
「本当に……こんなこと、されると思わなかった」
その声には、照れとも困惑ともつかぬ響きが混ざっていた。
目の前に立つ彼──悠真(ゆうま)は、ただ静かに微笑む。どこか、何もかも見透かすような眼差しで。
「怖くはない?」
「……怖くはない。けど、くすぐったいの、ほんとうに苦手なの……」
「知ってるよ。だからこそ、優しくする」
彼はそう言って、璃紗の足首にそっと触れた。
その手はとても温かく、ふれるというより、風のように、忍び込む。
◼️「抵抗と、期待のはざま」
璃紗は膝を抱えるように身を丸めた。
「だめ……そこ、触れられたら笑っちゃう……ほんとに」
「笑っていいよ。恥ずかしくても、ちゃんと見てるから」
彼の指先が足の甲をかすめ、指の間へと滑り込む。
くすぐったさがじわじわと滲むように湧いてきて、思わず体が震える。
「んっ……ふふっ……も、もう……ちょっと……!」
身体は逃げようとする。けれど、心の奥が逃げたくないと願っている。
逃げ場のない快感に包まれながら、璃紗は気づく。
くすぐられているのに、彼の手は決して乱暴じゃない。
愛おしむように、触れてくる。
◼️「くすぐったさの中の安らぎ」
次第に璃紗は笑い声を洩らすことさえ、恥ずかしさより心地よさが勝ってくる。
迷走神経が目覚めるように、深い呼吸ができるようになっていく。
──ああ、これは「責められている」のではない。
これは、「許されている」──そう思った。
指先は今、うなじをやさしくなぞっている。
髪をかき分け、くすぐるというより、記憶を辿るように。
「ここも……ちょっと、くすぐったい……ふふ……」
「ちゃんと反応してくれてるんだね。うれしいよ」
彼の声には、欲望ではない、慈しみがあった。
◼️「甘美な支配」
手は肩、わき、肋骨へと彷徨う。
璃紗はもう、完全に身を委ねていた。
無理やりではない。自分で選んで、ほどかれている。
「弱いところ、ぜんぶ知られてしまう……」
「でもそれって、すごく綺麗なことだよ。僕だけに見せてくれるなんて」
最後のくすぐりは、おへそのすぐ下。
神経が交差する場所に、羽のような刺激がひとつ。
そこはもう、「笑う」よりも「感じる」──静かな快感の泉。
璃紗は深く息を吸って、瞳を閉じた。
🌸「くすぐりとは、心の儀式」
くすぐったさは、ただの笑いではない。
それは「感じることを許された証」。
自分でいることを赦されたとき、人はようやく快感にほどけてゆける。
悠真は囁く。
「璃紗……笑ってくれて、ありがとう。心をひらいてくれて、うれしかったよ」
そして、璃紗もまた小さく頷いた。
「わたしも……よかった……あなたの手、優しかったから」
──夜の深さは変わらない。けれど、璃紗の心はほんの少し、自由になっていた。
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