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崩れ始める均衡
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その日、館の廊下には薔薇の香りがほのかに漂っていた。
細いヒールの音が静かに床を打つ。
セシリアが夜会服のまま、綾乃の部屋を訪れたのは、満月の真下だった。
「……綾乃さん。入ってもいいかしら?」
ゆったりとした声に、綾乃は心臓が跳ねるように応えた。
「セシリア……」
ドアを開けると、そこにいたのはいつもの優美な貴婦人ではなかった。
その瞳には、穏やかな慈しみと――燃えるような嫉妬が宿っていた。
「聞いたわ、あなた、彼にくすぐられたのね」
綾乃は息をのんだ。その声には、微笑みと毒が混じっている。
「……うん。ごめんなさい」
「謝ることはないわ。あなたは愛される権利がある。
でも……私も、あなたを愛しているの。
同じ女だからこそ、あなたの心も身体も、全部わかる。
だから――私のくすぐりで、思い出させてあげるわ」
そう言って、セシリアはベッドに腰を下ろし、
そっと綾乃の髪を撫でた。
「……脱いでちょうだい。今日のあなたには、おしおきが必要なの」
綾乃が身に纏っていた部屋着をそっと脱ぎ、シーツに身を預けると、
セシリアは上品な手つきで、柔らかなシルクの紐で手首を束ねた。
「逃げられないけれど、怖くない。ね? 私は、あなたの味方よ」
そう囁いて、セシリアの指先が、綾乃の足の甲に触れた。
「んっ……ふふっ……あっ、そこ……くすぐった……ぃ……」
「ここが反応するの、彼も気づいていたわね。でも……女である私の指は、違うのよ」
セシリアの指は、足の甲の骨のすじを沿って、
まるで香水をなぞるように、やわらかく、じっくりとくすぐっていく。
「ふふっ……はぁっ……セシリア……それ、だめぇ……っ」
「“だめ”と言いながら、足の指がピクピク動いてる。かわいいわ、綾乃さん」
ゆっくりと、指先は足首、ふくらはぎ、太ももへと昇っていく。
どこにも逃げ場のないくすぐったさが、じんわりと快楽に変わっていく。
「次は……この“脇腹”。
男のくすぐりは直線的。でも、私はあなたの“揺らぎ”に合わせて愛してあげるわ」
セシリアの爪先が、肋骨にそって曲線を描いた。
「ひぁっ……ふふっ、くすぐっ……セシリアっ、それ……! んふっ……ぁあ……!」
「あなたの笑い方が、昨日より柔らかくなってる。
彼の指で開いた扉を、私の愛で満たしてあげる……ね、そうでしょう?」
セシリアは、脇腹を撫でるだけでなく、
脇腹から脇の下へ、流線を描くように指を滑らせていく。
「んんんっ、セシリアぁっ……あっ、あぁんっ……そんなの、ずるいぃっ……!」
「ずるいのはどっちかしら? 私の大切な綾乃さんを、先に味わった執事こそ――」
そして、脇の下に中指と薬指だけでリズムを刻むくすぐり。
女だからこそわかる、“本当に感じるくすぐったさ”がそこにはあった。
「くすぐったいだけじゃない……セシリアの指って、……甘い……」
「それでいいの。くすぐりって、愛の一種だから。
痛くも苦しくもない、ただ笑って、溶けて、感じる……あなたをいちばん素直にする魔法よ」
綾乃の笑い声が、涙まじりに変わる。
「もう、だめ……っ、身体が溶けちゃうぅ……っ」
「……泣いていいのよ。笑いながら泣いて。くすぐったさに溶けてしまえばいい」
セシリアは顔を寄せ、頬に唇を寄せた。
「でも――この身体には、もう他の男が触れてるのね。
あなたの皮膚に残った“彼の指の記憶”が、私を嫉妬させるのよ。わかる?」
「セシリア……ごめんなさい……っ、でも……どちらも、嫌じゃないの……!」
「……ふふ。ならいいわ。
あなたを奪い合うくすぐり、続けてあげる。
脇の下も、脇腹も、足の裏も……全部、あなたがどう反応するか、知ってるから」
その夜、綾乃はセシリアの指先で、果てなく笑い、揺れ、快楽に包まれていった。
細いヒールの音が静かに床を打つ。
セシリアが夜会服のまま、綾乃の部屋を訪れたのは、満月の真下だった。
「……綾乃さん。入ってもいいかしら?」
ゆったりとした声に、綾乃は心臓が跳ねるように応えた。
「セシリア……」
ドアを開けると、そこにいたのはいつもの優美な貴婦人ではなかった。
その瞳には、穏やかな慈しみと――燃えるような嫉妬が宿っていた。
「聞いたわ、あなた、彼にくすぐられたのね」
綾乃は息をのんだ。その声には、微笑みと毒が混じっている。
「……うん。ごめんなさい」
「謝ることはないわ。あなたは愛される権利がある。
でも……私も、あなたを愛しているの。
同じ女だからこそ、あなたの心も身体も、全部わかる。
だから――私のくすぐりで、思い出させてあげるわ」
そう言って、セシリアはベッドに腰を下ろし、
そっと綾乃の髪を撫でた。
「……脱いでちょうだい。今日のあなたには、おしおきが必要なの」
綾乃が身に纏っていた部屋着をそっと脱ぎ、シーツに身を預けると、
セシリアは上品な手つきで、柔らかなシルクの紐で手首を束ねた。
「逃げられないけれど、怖くない。ね? 私は、あなたの味方よ」
そう囁いて、セシリアの指先が、綾乃の足の甲に触れた。
「んっ……ふふっ……あっ、そこ……くすぐった……ぃ……」
「ここが反応するの、彼も気づいていたわね。でも……女である私の指は、違うのよ」
セシリアの指は、足の甲の骨のすじを沿って、
まるで香水をなぞるように、やわらかく、じっくりとくすぐっていく。
「ふふっ……はぁっ……セシリア……それ、だめぇ……っ」
「“だめ”と言いながら、足の指がピクピク動いてる。かわいいわ、綾乃さん」
ゆっくりと、指先は足首、ふくらはぎ、太ももへと昇っていく。
どこにも逃げ場のないくすぐったさが、じんわりと快楽に変わっていく。
「次は……この“脇腹”。
男のくすぐりは直線的。でも、私はあなたの“揺らぎ”に合わせて愛してあげるわ」
セシリアの爪先が、肋骨にそって曲線を描いた。
「ひぁっ……ふふっ、くすぐっ……セシリアっ、それ……! んふっ……ぁあ……!」
「あなたの笑い方が、昨日より柔らかくなってる。
彼の指で開いた扉を、私の愛で満たしてあげる……ね、そうでしょう?」
セシリアは、脇腹を撫でるだけでなく、
脇腹から脇の下へ、流線を描くように指を滑らせていく。
「んんんっ、セシリアぁっ……あっ、あぁんっ……そんなの、ずるいぃっ……!」
「ずるいのはどっちかしら? 私の大切な綾乃さんを、先に味わった執事こそ――」
そして、脇の下に中指と薬指だけでリズムを刻むくすぐり。
女だからこそわかる、“本当に感じるくすぐったさ”がそこにはあった。
「くすぐったいだけじゃない……セシリアの指って、……甘い……」
「それでいいの。くすぐりって、愛の一種だから。
痛くも苦しくもない、ただ笑って、溶けて、感じる……あなたをいちばん素直にする魔法よ」
綾乃の笑い声が、涙まじりに変わる。
「もう、だめ……っ、身体が溶けちゃうぅ……っ」
「……泣いていいのよ。笑いながら泣いて。くすぐったさに溶けてしまえばいい」
セシリアは顔を寄せ、頬に唇を寄せた。
「でも――この身体には、もう他の男が触れてるのね。
あなたの皮膚に残った“彼の指の記憶”が、私を嫉妬させるのよ。わかる?」
「セシリア……ごめんなさい……っ、でも……どちらも、嫌じゃないの……!」
「……ふふ。ならいいわ。
あなたを奪い合うくすぐり、続けてあげる。
脇の下も、脇腹も、足の裏も……全部、あなたがどう反応するか、知ってるから」
その夜、綾乃はセシリアの指先で、果てなく笑い、揺れ、快楽に包まれていった。
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