不死の魔法使いは鍵をにぎる

:-)

文字の大きさ
3 / 201

陥落一歩手前

しおりを挟む
次の日、前日とは場所を変えて、ありったけの落ち葉を集めて一山作った。
あたりの地面はすっきり綺麗な状態だ。


枯れ木も集めてそろそろいいか、というところで少女ノーラが現れた。




「あ!やっと見つけた!お兄さん酷いじゃないか。昨日は話の途中で消えちゃって」

「ちっ」



あからさまに舌打ちをした。



「舌打ちも失礼だよ。普段から気をつけてないからつい出ちゃうんだよ」



説教くさい小娘だ。

返事をするのも面倒で、視線を逸らして帰り支度を始める。



「無視しないでよ。一応傷つくんだよ」




知るか。
さっさと帰ろう。


転移魔法を発動しようとして光る私の手を見て、早口で少女が言う。



「待って待って帰らないで。母親にアップルパイ焼いてもらったんだ。持ってきた。一緒に食べよう?」






アップルパイの単語に反応して、つい少女の姿を確認する。
少女は左手に籠のバスケットを下げていた。

アップルパイのような手の込んだ食べ物は久しく口にしていない。



少女と仲良くする気は一切ないのだが、食の誘惑に負けて気付いたらすぐ近くの倒木に腰を下ろしていた。
嬉しそうににっこりと少女ノーラは笑って、私の隣に腰かける。




「お兄さんを探し回ってたから冷めちゃった。焼きたて持ってきたんだけど」



バスケットを開けて食べる準備をしながら少女はそう言葉をこぼす。
用意のいいことに、切り分けるナイフに取り分ける皿、食べるためのフォークなど一式籠に入っていた。

温度が下がって少ししっとりとしたアップルパイに、ナイフがゆっくり差し込まれる。
柔らかくなりつつも静かにサクッとした音がなる。


これは美味しそうだ。
バターとリンゴのいい匂いがほんのりと鼻をくすぐる。


こんなもので釣られるなんてバカみたいだが、まあいいだろう。
以前食べたのがいつだったのか、もうわからないくらい前なのだ。





「はいどうぞ」



八等分に切り分けられたアップルパイ。
自分の分を取り分けずに私の動作を見つめる少女。
自分の子どもが食べるところを見守る親の視線と似たものを感じる。


下に兄弟がいたりするんだろうか。
じろじろこっちを見るな。


緑色の透き通った瞳が私の手の動きを追う。

口に入れたアップルパイは、程よくしっとりとした生地に甘いリンゴのフィリングがよく絡んで、負感情が吹っ飛ぶ美味しさだった。

中にカスタードも入ってるな。
少女の不躾な視線も許せるクオリティの高さ。



「美味しいでしょう。お母さんのアップルパイ、近所でも大人気なんだ」



私の様子を満足気に笑ってノーラもアップルパイに口をつけた。


こいつからの下に見られてる感はなんなのだろう。
少女はもぐもぐと口を動かしながらこちらを見る。



「よかったらアップルパイの残り持って帰って。涼しいところに置いておけば5日間くらいもつと思うよ」

「…もらっていこう」



早食いなのか、一気にアップルパイを食べ終えて立ち上がる少女。
落ち葉や枯れ木の山、アップルパイを見て口を開いた。



「荷物たくさんで一人じゃ持ち帰れないでしょう。運ぶの手伝うよ」



勝ち気に笑ってそう申し出られるが、お断りだ。



「必要ない」



瞬間、魔法を使って転移した。












森には一人、少女だけが取り残される。
取り残された少女はぽつりとひとりごちた。





「あと何回かで胃袋つかめそうだな」

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

もしも生まれ変わるなら……〜今度こそは幸せな一生を〜

こひな
恋愛
生まれ変われたら…転生できたら…。 なんて思ったりもしていました…あの頃は。 まさかこんな人生終盤で前世を思い出すなんて!

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

私は私で幸せになりますので

あんど もあ
ファンタジー
子爵家令嬢オーレリーの両親は、六歳年下の可憐で病弱なクラリスにかかりっきりだった。 ある日、クラリスが「オーレリーが池に落ちる夢を見た」と予言をした。 それから三年。今日オーレリーは、クラリスの予言に従い、北の果ての領地に住む伯爵令息と結婚する。 最後にオーレリーが皆に告げた真実とは。

王女様は聖女様?おてんば姫の大冒険~ペットのドラゴンが迷子なので冒険者になって探しに行きます!~

しましまにゃんこ
ファンタジー
アリシア王国の第3王女ティアラ姫には誰にも言えない秘密があった。 それは自分が全属性の魔力を持ち、最強のチート能力を持っていた「建国の賢者アリシア」の生まれ変わりであること! 8才の誕生日を境に前世の記憶を取り戻したものの、500年後に転生したことを知って慌てる。なぜなら死の直前、パートナーのドラゴンに必ず生まれ変わって会いにいくと約束したから。 どこにいてもきっとわかる!と豪語したものの、肝心のドラゴンの気配を感じることができない。全属性の魔力は受け継いだものの、かつての力に比べて圧倒的に弱くなっていたのだ! 「500年……長い。いや、でも、ドラゴンだし。きっと生きてる、よね?待ってて。約束通りきっと会いにいくから!」  かつての力を取り戻しつつ、チートな魔法で大活躍!愛する家族と優しい婚約者候補、可愛い獣人たちに囲まれた穏やかで平和な日々。 しかし、かつての母国が各国に向けて宣戦布告したことにより、少しずつ世界の平和が脅かされていく。 「今度こそ、私が世界を救って見せる!」 失われたドラゴンと世界の破滅を防ぐため、ティアラ姫の冒険の旅が今、始まる!   剣と魔法が織りなすファンタジーの世界で、アリシア王国第3王女として生まれ変わったかつての賢者が巻き起こす、愛と成長と冒険の物語です。 イケメン王子たちとの甘い恋の行方もお見逃しなく。 小説家になろう、カクヨムさま他サイトでも投稿しています。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

ハズレスキル『自動販売機』を授かって婚約破棄されましたが、 実は回復薬も魔力食も出せる最強スキルでした

暖夢 由
ファンタジー
十八歳の成人儀式で授かったのは、誰も聞いたことのない《自動販売機スキル》。 役立たずと嘲られ、婚約者レオンには即座に婚約を破棄され、人生が崩れ落ちたように思えた。 だがそのスキルには、食べ物を作り、摂取すれば魔力を増やし、さらに“治癒効果”を付与できるという隠された力があった。 倒れた母を救い、王都の名門・ヴァルセイン伯爵夫人を救ったことで、カミーラは“呪詛”という闇の存在を知る。伯爵邸で出会った炎の力を持つ公爵家次男レグナスとの出会いが、彼女の運命を大きく変えていく。 やがて王都全体に“謎の病”が蔓延。カミーラは治癒スープの炊き出しを行い、人々を次々と回復へ導く。 一方、病の裏で糸を引いていたのは………。 “無価値”と嘲られたスキルが、いま世界を癒し、未来を照らす光となる――。

【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢は7年前の姿をしている

五色ひわ
恋愛
 ドラード王国の第二王女、クラウディア・ドラードは正体不明の相手に襲撃されて子供の姿に変えられてしまった。何とか逃げのびたクラウディアは、年齢を偽って孤児院に隠れて暮らしている。  初めて経験する貧しい暮らしに疲れ果てた頃、目の前に現れたのは婚約破棄寸前の婚約者アルフレートだった。

黄金の魔族姫

風和ふわ
恋愛
「エレナ・フィンスターニス! お前との婚約を今ここで破棄する! そして今から僕の婚約者はこの現聖女のレイナ・リュミエミルだ!」 「エレナ様、婚約者と神の寵愛をもらっちゃってごめんね? 譲ってくれて本当にありがとう!」  とある出来事をきっかけに聖女の恩恵を受けれなくなったエレナは「罪人の元聖女」として婚約者の王太子にも婚約破棄され、処刑された──はずだった!  ──え!? どうして魔王が私を助けてくれるの!? しかも娘になれだって!?  これは、婚約破棄された元聖女が人外魔王(※実はとっても優しい)の娘になって、チートな治癒魔法を極めたり、地味で落ちこぼれと馬鹿にされていたはずの王太子(※実は超絶美形)と恋に落ちたりして、周りに愛されながら幸せになっていくお話です。  ──え? 婚約破棄を取り消したい? もう一度やり直そう? もう想い人がいるので無理です!   ※拙作「皆さん、紹介します。こちら私を溺愛するパパの“魔王”です!」のリメイク版。 ※表紙は自作ではありません。

処理中です...