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陥落一歩手前
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次の日、前日とは場所を変えて、ありったけの落ち葉を集めて一山作った。
あたりの地面はすっきり綺麗な状態だ。
枯れ木も集めてそろそろいいか、というところで少女ノーラが現れた。
「あ!やっと見つけた!お兄さん酷いじゃないか。昨日は話の途中で消えちゃって」
「ちっ」
あからさまに舌打ちをした。
「舌打ちも失礼だよ。普段から気をつけてないからつい出ちゃうんだよ」
説教くさい小娘だ。
返事をするのも面倒で、視線を逸らして帰り支度を始める。
「無視しないでよ。一応傷つくんだよ」
知るか。
さっさと帰ろう。
転移魔法を発動しようとして光る私の手を見て、早口で少女が言う。
「待って待って帰らないで。母親にアップルパイ焼いてもらったんだ。持ってきた。一緒に食べよう?」
アップルパイの単語に反応して、つい少女の姿を確認する。
少女は左手に籠のバスケットを下げていた。
アップルパイのような手の込んだ食べ物は久しく口にしていない。
少女と仲良くする気は一切ないのだが、食の誘惑に負けて気付いたらすぐ近くの倒木に腰を下ろしていた。
嬉しそうににっこりと少女ノーラは笑って、私の隣に腰かける。
「お兄さんを探し回ってたから冷めちゃった。焼きたて持ってきたんだけど」
バスケットを開けて食べる準備をしながら少女はそう言葉をこぼす。
用意のいいことに、切り分けるナイフに取り分ける皿、食べるためのフォークなど一式籠に入っていた。
温度が下がって少ししっとりとしたアップルパイに、ナイフがゆっくり差し込まれる。
柔らかくなりつつも静かにサクッとした音がなる。
これは美味しそうだ。
バターとリンゴのいい匂いがほんのりと鼻をくすぐる。
こんなもので釣られるなんてバカみたいだが、まあいいだろう。
以前食べたのがいつだったのか、もうわからないくらい前なのだ。
「はいどうぞ」
八等分に切り分けられたアップルパイ。
自分の分を取り分けずに私の動作を見つめる少女。
自分の子どもが食べるところを見守る親の視線と似たものを感じる。
下に兄弟がいたりするんだろうか。
じろじろこっちを見るな。
緑色の透き通った瞳が私の手の動きを追う。
口に入れたアップルパイは、程よくしっとりとした生地に甘いリンゴのフィリングがよく絡んで、負感情が吹っ飛ぶ美味しさだった。
中にカスタードも入ってるな。
少女の不躾な視線も許せるクオリティの高さ。
「美味しいでしょう。お母さんのアップルパイ、近所でも大人気なんだ」
私の様子を満足気に笑ってノーラもアップルパイに口をつけた。
こいつからの下に見られてる感はなんなのだろう。
少女はもぐもぐと口を動かしながらこちらを見る。
「よかったらアップルパイの残り持って帰って。涼しいところに置いておけば5日間くらいもつと思うよ」
「…もらっていこう」
早食いなのか、一気にアップルパイを食べ終えて立ち上がる少女。
落ち葉や枯れ木の山、アップルパイを見て口を開いた。
「荷物たくさんで一人じゃ持ち帰れないでしょう。運ぶの手伝うよ」
勝ち気に笑ってそう申し出られるが、お断りだ。
「必要ない」
瞬間、魔法を使って転移した。
森には一人、少女だけが取り残される。
取り残された少女はぽつりとひとりごちた。
「あと何回かで胃袋つかめそうだな」
あたりの地面はすっきり綺麗な状態だ。
枯れ木も集めてそろそろいいか、というところで少女ノーラが現れた。
「あ!やっと見つけた!お兄さん酷いじゃないか。昨日は話の途中で消えちゃって」
「ちっ」
あからさまに舌打ちをした。
「舌打ちも失礼だよ。普段から気をつけてないからつい出ちゃうんだよ」
説教くさい小娘だ。
返事をするのも面倒で、視線を逸らして帰り支度を始める。
「無視しないでよ。一応傷つくんだよ」
知るか。
さっさと帰ろう。
転移魔法を発動しようとして光る私の手を見て、早口で少女が言う。
「待って待って帰らないで。母親にアップルパイ焼いてもらったんだ。持ってきた。一緒に食べよう?」
アップルパイの単語に反応して、つい少女の姿を確認する。
少女は左手に籠のバスケットを下げていた。
アップルパイのような手の込んだ食べ物は久しく口にしていない。
少女と仲良くする気は一切ないのだが、食の誘惑に負けて気付いたらすぐ近くの倒木に腰を下ろしていた。
嬉しそうににっこりと少女ノーラは笑って、私の隣に腰かける。
「お兄さんを探し回ってたから冷めちゃった。焼きたて持ってきたんだけど」
バスケットを開けて食べる準備をしながら少女はそう言葉をこぼす。
用意のいいことに、切り分けるナイフに取り分ける皿、食べるためのフォークなど一式籠に入っていた。
温度が下がって少ししっとりとしたアップルパイに、ナイフがゆっくり差し込まれる。
柔らかくなりつつも静かにサクッとした音がなる。
これは美味しそうだ。
バターとリンゴのいい匂いがほんのりと鼻をくすぐる。
こんなもので釣られるなんてバカみたいだが、まあいいだろう。
以前食べたのがいつだったのか、もうわからないくらい前なのだ。
「はいどうぞ」
八等分に切り分けられたアップルパイ。
自分の分を取り分けずに私の動作を見つめる少女。
自分の子どもが食べるところを見守る親の視線と似たものを感じる。
下に兄弟がいたりするんだろうか。
じろじろこっちを見るな。
緑色の透き通った瞳が私の手の動きを追う。
口に入れたアップルパイは、程よくしっとりとした生地に甘いリンゴのフィリングがよく絡んで、負感情が吹っ飛ぶ美味しさだった。
中にカスタードも入ってるな。
少女の不躾な視線も許せるクオリティの高さ。
「美味しいでしょう。お母さんのアップルパイ、近所でも大人気なんだ」
私の様子を満足気に笑ってノーラもアップルパイに口をつけた。
こいつからの下に見られてる感はなんなのだろう。
少女はもぐもぐと口を動かしながらこちらを見る。
「よかったらアップルパイの残り持って帰って。涼しいところに置いておけば5日間くらいもつと思うよ」
「…もらっていこう」
早食いなのか、一気にアップルパイを食べ終えて立ち上がる少女。
落ち葉や枯れ木の山、アップルパイを見て口を開いた。
「荷物たくさんで一人じゃ持ち帰れないでしょう。運ぶの手伝うよ」
勝ち気に笑ってそう申し出られるが、お断りだ。
「必要ない」
瞬間、魔法を使って転移した。
森には一人、少女だけが取り残される。
取り残された少女はぽつりとひとりごちた。
「あと何回かで胃袋つかめそうだな」
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