不死の魔法使いは鍵をにぎる

:-)

文字の大きさ
4 / 201

行楽スタイル

しおりを挟む
それからは頻繁に、手土産を片手に少女はやってくるようになった。
ミートパイやチョコパイなどのパイ系や、ベイクドチーズケーキや軽めのクッキーなど。

籠のバスケットを持って森をうろうろする少女の姿からは、ピクニックでもしてるかのような暢気さが漂う。



魔王が現れてそれどころじゃないはずなんだがな。
魔王登壇の報など聞いていないかのような行動。

そのうちまた魔物にやられそうな気がするが、まあどうでもいいことだ。
それよりも少女に餌付けされているかのような現状が気に食わない。





来るな邪魔だと言っても聞かず、毎日森の違う場所で行動しているにも関わらず少女は現れる。

少女の顔を見るとイラッとするのだが、今日は何を持ってきたと甘味を出されては無視も拒否もできなかった。
少女の持ってくるものはどれも素晴らしい味で、どんどん虜になっていくのだ。



差し出される極上の甘味をもう手放せない。
だんだんとノーラの登場を待ちわびるようになっていた。



「こんにちは」

「ノーラか。今日はなんだ」



最近強くなってきた日射し対策にか、大きな麦わら帽子を被っていて完璧なる行楽スタイルのノーラ。
籠のバスケットを私に見せるように持ち上げる。



「今日はスコーンだよ。喉乾くだろうからハーブティーも持ってきた」

「随分とお気楽な格好だな」



私の指摘に、眉尻を下げて肩をすくめた。



「お母さんは私が村の近くの小川で遊んでると思ってるみたいだから」






私の根城を隠している森とノーラの住む村とは、少しばかり土地が離れている。
子どもの足で歩いたら往復2時間ほどかかるだろうか。

そのうえ、私が森のどこにいるかは定まっていないので、私に辿り着くまでに結構な距離を歩いているはずだ。

そんな遠くへ子ども一人で足を運んでいるとは考えないだろう。




スコーンを取り出しハーブティーをコップにつぎ、としている少女の足にふと引っ掻き傷を見つける。

葉っぱや枝で引っ掻くよりも、もっと鋭く長い傷痕。
かすかに感じる魔力の残り香。



「…魔物か」

「え?」



私の呟きに顔を上げた。



「ああ、足の傷か。小さいのに威嚇されただけだよ」



けろりと何でもないことのように言う。

本当にこいつ、魔物やらを全く怖がらないな。



近頃は私もちらほらと魔物を見かけるようになっていた。
そのうちに人里でも現れるようになるだろう。


人の少ない森や山から魔物は出始め、だんだんと人の住む村などにも出現地は広がっていく。



「はいどうぞ」



スコーンとハーブティーを乗せた小さいトレイを差し出された。
食べやすいように小さい皿やフォークなどをノーラは持ってくるようになり、最近は私も食べやすいように小さいテーブルを用意するようになっていた。


スコーンを口に入れると、ほろりとした軽い口当たり。
甘さ控えめながらバターがいい風味を出している。

うん。
今日も最高に美味しい。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

もしも生まれ変わるなら……〜今度こそは幸せな一生を〜

こひな
恋愛
生まれ変われたら…転生できたら…。 なんて思ったりもしていました…あの頃は。 まさかこんな人生終盤で前世を思い出すなんて!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

〖完結〗終着駅のパッセージ 

苺 迷音
恋愛
過去、使用人に悪戯をされそうになった事がきっかけとなり、分厚い眼鏡とひっつめた髪を編み帽で覆い、自身の容姿を隠すようになった女性・カレン。 その事情を知りながらも夫ローランは、奇妙で地味な姿の妻を厭い目を逸らし続けた。 婚姻してからわずか三日後の朝。彼は赴任先の北の地へと旅立ちその後、カレンの元へと帰省してきたのは、片手で数えるほどだった。 孤独な結婚生活を送る中。 ある冬の日に、ローランの上官であり北の地を治める領主ハルシオン公爵が、カレン夫妻の邸にやってきた。 始まりは、部下の家族を想う上司としての気遣いだった。 他愛もない会話と、節度を守ったやり取り。ほんの僅かな時間を重ねていく。 そのうちに、お互いに灯り始めた小さな心の想い。 だが二人は、それを決して明かさず語ることはなかった。 それから一年ほどたった冬の夜。 カレンから届いた手紙に、たった一度だけハルシオンは返事を書く。 そこには彼の想いが書かれてあった。 月日は流れ、カレンとローランが婚姻して三年目の冬の日。 カレンはひとつの決意と想いを胸に、北へ向かう汽車に乗った。 ※微さまぁか、もしくはざまぁになっていないかもしれないです。 ※舞台は近世・産業革命初頭を基にした架空世界だと思っていただけましたら有難いです。 稚拙な作品ではありますがご覧くださいましたら凄く嬉しいです。よろしくお願い致します。

「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。

しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。

【完結】婚約破棄、その後の話を誰も知らない

あめとおと
恋愛
奇跡によって病を癒す存在――聖女。 王国は長年、その力にすべてを委ねてきた。 だがある日、 誰の目にも明らかな「失敗」が起きる。 奇跡は、止まった。 城は動揺し、事実を隠し、 責任を聖女ひとりに押しつけようとする。 民は疑い、祈りは静かに現実へと向かっていった。 一方、かつて「悪役」として追放された令嬢は、 奇跡が失われる“その日”に備え、 治癒に頼らない世界を着々と整えていた。 聖女は象徴となり、城は主導権を失う。 奇跡に縋った者たちは、 何も奪われず、ただ立場を失った。 選ばれなかった者が、世界を救っただけの話。 ――これは、 聖女でも、英雄でもない 「悪役令嬢」が勝ち残る物語。

まず、後宮に入れませんっ! ~悪役令嬢として他の国に嫁がされましたが、何故か荷物から勇者の剣が出てきたので、魔王を倒しに行くことになりました

菱沼あゆ
ファンタジー
 妹の婚約者を狙う悪女だと罵られ、国を追い出された王女フェリシア。  残忍で好色だと評判のトレラント王のもとに嫁ぐことになるが。  何故か、輿入れの荷物の中には、勇者の剣が入っていた。  後宮にも入れず、魔王を倒しに行くことになったフェリシアは――。 (小説家になろうでも掲載しています)

【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。 過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。 魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。 そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。 これはシナリオなのかバグなのか? その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

《完結》雪の女王を追って消えた、あんたは私と婚約してない!

さんけい
ファンタジー
「雪の女王」を追って村から消えたエイナル。 「君は僕の足かせだ?」ふざけんな、私はあんたの婚約者じゃない!

処理中です...