不死の魔法使いは鍵をにぎる

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結界の上書き

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「そりゃすげえ遅れてるな?新しい情報はこの村に滅多に入ってこないからな。まあ有り得る話ではあるな?」


1200という数字に乾いた笑いをこぼしてから、真剣な光を瞳に宿らせる。







「その1200年の遅れを取り戻せるかな?」







知識は武器だ。
無知は命取りにもなる。


危険地帯に位置するこの僻地に足を踏み入れる人間などいないに等しいとはいえ、皆無ではない。
村が何者かに発覚し襲われる可能性もまた、ゼロではない。

結界を張っているこの者は、隠れた村の中で上方に位置するのだろう。
村の将来を考えての発言。



「追い付かないなどあり得ない。必ず追い付く」



時間がどれだけかかるかは不明だがな。
私がそう言い切ると、表情を和らげた。



「そうか。そりゃ安心したな?村の者たちに教育をお願いできるか?」

「ああ」



今日一日ではなく、継続的に隠れた村と関われそうだ。
首肯したところで、半面が戻ってきた。



「欠片を撒いてきた」

「おお、ありがとうな?これで魔法陣に結界を流せばいいんだったか?」

「ああ」








自分の足元に魔法陣の描いてある布を置いて、そのまま両手をついて魔力を流し始める。
椅子に腰かけたまま行っているので、地面に向かって膝を抱えているような恰好だ。

魔法陣に両手をついて数秒間。
顔を上げた犬目は目を丸く見開いてこちらを見る。



「こりゃすげえなあ?いつもより楽にきれいな結界を張れたぞ?」

「そのために生み出した方法だからな。当然だ」

「うん。これなら俺も動き回れそうだな?ベスツァフ、村の者を集めてくれるか?みんなに諸々説明してえな?」

「うん。声かけてくる」



犬目に連れられて、隠れた村の中の小さく開けた空き地へと赴く。

半面によって集められた村民は20人弱といったところか。
人間の顔、獣の顔、それらが混ざった顔。
多種多様な顔に見つめられて異様な光景だ。


1人が集団から抜け出して、犬目の前に出る。



「場所を離れて本当に結界は大丈夫なのか?」

「問題なく作動してるぞ?心配すんな?」



犬目に問いかけた者は大丈夫と言われても未だ不安そうな顔をしている。


結界を張っている間、今まではあの狭苦しい空間から動けなかったということなのか。
自分がその立場だったなら死にたくなるほどに憂鬱だな。

想像して眉間にしわを寄せた。


犬目に問いかけた者と同様に、周りの連中も心配そうにざわざわと言葉を交わしている。
静まる様子のないざわめきの上に、犬目は声を張り上げて被せる。



「聞いてくれるか?結界は問題ない。心配すんな?より強く綺麗に結界を張る方法を入手出来たからな?

この面の魔法使いが教えてくれた。知識も技術もある、すげえ魔法使い様だからな?

各々わかってたと思うが、俺らの知識は遅れてる。この魔法使いさんが言うには1200年も遅れてるらしいぞ?やばいだろ?遅れを取り戻そうじゃねえか。魔法使いさんから教えてもらえることになったからな?」
 





村人のざわめきが種類を変える。


結界の効力は大丈夫かという心配から、魔法を勉強できるという期待へと。









「魔法使いさんはバウム様の信頼もあるからな?信用できるお人だ。ベスツァフも大丈夫と判断したんだよな?」

「うん」



話を振られた半面が頷く。



「この人は見た目は違うが、バウム様と同様に呪われてるんだそうだ。そのせいで酷い目にあったこともあると言っていた。
我の顔を見ても冷静に会話をして、結界を強める魔法陣や方法も編み出した。教わる意義はあると思う。
我々の村に攻撃しない、対立しないという誓いも立ててもらっている」

「そういうことだからな?場所や時間、方法などは後で通達する。始めるのは明日からかな?みなよろしく頼むな?」
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