不死の魔法使いは鍵をにぎる

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「私は自分をあいつらと同族だとは考えたくない」





かつての絶望が、憎しみが、怒りがぶり返す。


魔王を倒した勇者ですら、喉元過ぎれば強大な力を持つ危険人物だ。
人間なんて碌なもんじゃない。


私は人間ではない。








静かに怒りを燃やす私に、それでもマーツェは意見を対立させてくる。



「たしかにあったけど!苦しいことも辛いこともあったけど!でもそうじゃない!全ての人がそうじゃないでしょ?

殺されたこともあった。売られたこともあった。でも助けてくれた人がいる。道連れになった人がいる。信じてくれた。庇ってくれた。

私はその人たちに報いたい!恥じない生き方をしたい!」


「お前の行動は止めていないだろう。討伐でも何でも、勝手に行けばいい」

「駄目なんだ。私一人じゃできない。だから言ってるんだよ!ゲルハルトもいないと。一緒に行こうよ!」



「私を巻き込むな!」



拳を卓にたたきつけながら怒鳴る。
食べる手が止まっていたスープが飛び散った。



「…お師匠さんは?お師匠さんは人間じゃないか。フォルグネ。ブルデ。レフラ。バウム。私。他にも、関わってきたでしょ?関わってきた人たちも人間だ。その人たちもどうでもいい?苦しめばいいと思う?」

「もう死んでるだろ」



言葉を吐き捨てる。
マーツェとバウムは生きているが、別枠だ。



「生きてるとして考えてよ。異形の人たちは?魔法教育をしてる人たちもどうでもいい?」



バリエレやベスツァフたち。

私が教育をするようになって新たに魔法を使えるようになったと喜んでいた者。
文字が読み書きできるようになって勉強が楽しいと言っていた者。

あの者たちが苦しんだら、私は傷つくのだろうか。
わからないが、苦しめばいいという思いがないのは確かだ。





マーツェの決して譲らない態度。
少し揺らいだ私の意思。



「ちっ、…間を取る」

「間?」

「旅には出てやろう。調査だけでなく魔物退治もしてやる。でも魔王城は目指さない」



終結する気配がないため、私が折れることにした。



「行先はマーツェが決めればいい。私とマーツェで魔物の数を削る。そうすればお前の望みの、被害を減らすことができるだろう」

「治癒もつけてほしい。怪我した人たちへの治癒。魔物を倒しても、亡くなったら意味がない。襲われてた人を助けられないなら意味がない」



相変わらずの図々しさだ。
またも舌打ちが飛び出す。



「気は乗らないが治癒も施そう。代わりに魔王討伐には向かわないぞ。いいな」

「…わかった」



快諾とはいかないが、とりあえず対立していた意見は終結を迎えた。
胸糞悪い。
ぬるくなったスープを流し込み、荒い動作で立ち上がる。



「準備をするのに数日時間をもらうぞ」



返事を聞くつもりはなく言い捨てたが、マーツェは口を開く。



「わかった。1ついいか?旅立つ前にしたいことがある。異形の人に会いたい。どれくらいの旅になるかわからない。旅が終わる前に私が死ぬ可能性もある。繋がりが切れる可能性だって。ゲルハルトが教えてる人たちとの繋がりがね。その前に一度姿を見てみたい」



さらに面倒なことを言いやがる。
舌打ちをしたら、「舌打ちしすぎだよ」と茶々を入れられる。
くそ。
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