不死の魔法使いは鍵をにぎる

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人探し

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「私まで行く必要はないだろう」

「必要だよ。ゲルハルトがいなくちゃ。怪我してたらどうするのさ。治癒する必要があるでしょう」




人探しくらいならマーツェ1人にさせて私は調査をしていようと考えたのだが、問答無用で連れていかれた。

面倒だなと舌打ちをして、荒く辺りを見渡す。
森の実りが多いわけでも、動物が狩りやすいわけでもない。
食料を求めて森へ行ったという話だったから、もっと深いところまで足を踏み入れているだろう。







魔物を倒しつつ森の奥へ進む。
ふと木の根元に食べ散らかした果物の皮が落ちていることに気づく。



「誰かが居たね。まだ新しそう。今日か昨日くらいの跡かな。探し人だといいけど」



残骸の乾き具合を見ながらマーツェが言う。


大人一人にしては随分と計画性なく食べ散らかしている量だ。

怪我をしたのか、充分な量の食材を確保できていないのか、帰り道がわからなくなったのか、数日森を彷徨っている青年。

見たところ果実を豊富に取れる森ではない。
後々を考えて、最低限の食事で抑えるのが普通だろう。

残されている皮の量から考えると、大人一人が食べるにしてはかなり多く食べている。
他の遭難者と合流しているのだろうか。


しかも食べ方が贅沢だ。
熟して甘い中心部分を主に食べ、味が薄く酸味のある皮付近は実が厚く残っている。
理性ある大人ならば、食料を節約し後日にまわすために、味など気にせず食せる部分は全て食すはずだろう。




この森に子供でもいるのか?




マーツェもその可能性を考えているのだろう。
首をかしげながら歩を進める。



大人でさえ生死の危険が伴うというのに、子供が森をうろつけるだろうか。



少しして、探し人を呼ぶマーツェの声に返答があった。
声を辿っていけば、崖にあいた横穴の中に人の姿。



「俺を呼んでいたのは君たちかい?」

「うん。探しに来たんだ。君の両親が心配していたよ」



マーツェが声をかけると男は表情を和らげた。

熊を狩ろうとしていて足を怪我したらしい。
止血のためふくらはぎに巻いてある布は赤黒い。
すでに乾いている血の跡が傷の大きさを示唆する。

死に物狂いで治癒魔法で止血したため出血死は免れたが、歩くことができず帰れなかったようだ。
腕の力で体を引きずって行ける範囲に運よく横穴が見えたため、ここで体を休めていたという。


止血の布を取って傷の具合を見ると、割と深く抉られていた。
本当に止血だけを施したようで、筋肉や血管など傷ついた組織はずたずたである。

治癒魔法で足をさっさと治し、男を歩ける状態にして帰宅を促す。



「問題なく歩けるはずだ。とっとと村に戻るぞ」

「すごい技術だな。痛くもなんともない」



その場で足踏みをして様子を確かめている男。
当然だとなぜかマーツェが頷きながら質問をする。



「貴方はずっとここに?この洞窟に居たのか?近くに果実を食べた跡があったんだ。あれは貴方か?」

「いいや、俺じゃない。怪我を負ってすぐに洞窟に入ったんだ。果物を取れる状態じゃなかったよ」






そうすると、あの果実の残骸は他の誰かということになる。

魔王が立ち魔物が凶暴になっているこの時期に、森に入り込む馬鹿が、こいつの他にもいる。
死にたいのなら勝手にすればいいが、人探しさせられるのは御免だ。


いい迷惑である。
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