不死の魔法使いは鍵をにぎる

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2人の子供

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襲い来る魔物を蹴散らしつつ、3人連れ立って村を目指して歩く。

男は執念で熊の血抜きを行ったらしく、持ち帰る肉の重みが肩にのしかかる。
3人で分割して持ってもかなりの量だ。




その日のうちに帰れる距離ではなかったため、野宿をすることになった。

持ち帰る用の肉を少し削り、夕食とする。
火を起こし、マーツェが常に持ち歩いている香辛料を肉に塗りつけて焼くと、すぐに香ばしい匂いが漂い始める。

匂いにつられて魔物や獣が集まってくるが、魔具で周囲に結界を張っているため、見えない壁にぶつかっては諦めて引き返していく。
侵入だけを拒む、簡単な結界だ。


そろそろ中まで火が通っただろうかと肉に手を伸ばすと、マーツェが声をあげる。





「あっ」

「どうした」

「子供だ。子供が2人いるよ。あそこに」




マーツェが指さす先。
木に隠れるようにこちらを見る2人の子供がいる。

反射的に声を上げたらしきマーツェは、きちんと子供の容姿を認識してほのかに顔を強張らせた。




1人は褐色肌。
1人は目深にフードを被り、口元を仮面で覆っている。


ベスツァフ達と同じ一族だろうか。
いや、けれどあの村の者ではないだろう。
見覚えのない顔である。

そのうえ、あの村からこの森はかなりの距離がある。
子供の足ではたどり着けまい。










軽く警戒するマーツェ。
子供の出方を見る私。

動きを見せない私たちに、何も知らない男は親切心で魔具を解く。



「親とはぐれたのかい?腹が減ってるんだろう。こっちへおいで」





フードの子が褐色肌の子の顔を伺い、褐色肌の方が小さく頷いた。
小走りで子供たちが結界の中に入ったのを見届けてから、男は魔具を再び発動させる。

お人好しはすぐ人の意見を聞かずに行動しやがる。
私の舌打ちを聞いてこちらを振り向いたが、気にせず子供らに向き合う。





「ほら。ちょうどいい感じに焼けたところだ。食べるといい」


自分の分の肉を与え、新たに肉を削いで焼き始める。



「熊の肉だ。脂身が多いからうまいだろう。魔物に襲われたりはしなかったかい?怪我はしてないかい?」



差し出された肉に即座に齧り付いている子供らに男は話しかける。
大きく頬張り、口をもごつかせながら褐色肌の方が返答した。



「怪我、してない。平気」



大きく喉を動かして飲み込むと、食べ終えた褐色肌の子はまだ火にかけている肉を食べたそうに見つめる。
もう一人の面を付けた方は、褐色肌の背に隠れるようにして肉を食べている。



「はい。これ食べていいよ。少し話そう?話を聞かせてほしいな」



焼いていた自分の肉を差し出しながら褐色肌の子へ話しかけるマーツェ。
子は頷きながら肉を受け取る。



「私たちはあっちから来たんだ。あっちの先にある村から。君は?どこから来たんだ?」


大きく頬張った肉を飲み込んでから褐色肌の子は口を開く。


「…あっち」



指さす方向は、根城のある方向よりも少し西より。
褐色肌をよく見かける地域は、国の北西地域である。
間反対と言ってもいい。

ズィリンダたち双子がいた褐色肌の村同様に、まだ地図に載っていない村だろうか。
それともあの一族とは全く関係なく、普通に町で過ごしていたのか。


けれど、隠れるように褐色肌の子の後ろで肉を食べているもう一人の子。


目深にかぶったフードに口元を隠す面。そして肌を一切晒さない服装。
異形の者らに通じる格好だ。

褐色肌の方は置いておいても、もう一人は関係があるのではないだろうか。
その面の下、服の下に、異形の部位を隠しているのではないだろうか。
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