不死の魔法使いは鍵をにぎる

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ヘフテの困惑

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魔具に関する情報を引き出そうとしている間に、魔物への“友達効果”が薄れたらしい。


威嚇する猫のように喉を鳴らす魔物が2体、とびかかる間合いを図るようにじりじりと近づいている。

俊敏に動き回る種類だ。
とびかかられる前に倒しておかないと厄介である。






「ダメ!」


右手に魔力を練り始めた途端、ヘフテに止められた。





「なぜ止める」

「さっき友達だって、言った。嘘になっちゃう。怒っちゃう。他のにもたくさん、襲われるよ」

「ならどうするんだ」

「友達だって、言いなおす」






すぐさま魔具に魔力を送るヘフテ。
喉を鳴らしていた魔物の威嚇体制が弱まっていく。

襲い来る気配はなくなったが、立ち去る様子はなく、じっとこちらを観察している。


しばし膠着状態になったとき、がさりと木が揺れて1体新たな魔物が現れた。
こちらを観察していた2体と視線を交わし、一鳴きして背中を向ける。

ゆっくり歩き去るその魔物に付いて行くようにして、2体の魔物も去っていった。









マーツェは小さくなる魔物の姿から視線を外さずに、口を開いた。



「すぐに引き返すわけじゃないんだね。こっちの様子を窺ってた。変なことしたら襲われてたね。あれは」

「戦いそうだったから。信じられないよ。急に友達って、言われても」







私とマーツェがすぐに反撃体制に移ったのが原因だという。



本当に仲間なのか。
自分たちを攻撃してこないのか。


様子を見ているところに、新たに現れた魔物が大丈夫だという趣旨を伝え、それに従って立ち去って行ったということらしい。






「こういうことかな。

一度“友達”って受け入れたら、襲われない。しばらく大人しくしててくれる。ときには手助けだってしてくれる。そのかわり、しばらくの間にこっちが敵対したら、襲われる。一気に反撃される。

始めに攻撃的な態度を取った場合は、“友達”だと思ってくれない」


「うん」

「ふうん。便利そうで不便というか。面倒だな。本当に伝えるだけなんだね。その魔具は」



ヘフテの視線が魔具と私を行き来する。



「なんで、ゲルハルトはダメだったの?ゲルハルトも、ダモンと一緒じゃないの?」






面を被っている私を見て、ダモンと同じだろうと、異形の者なのだろうと判断していたヘフテ。
ダモンと同じなら使えるはずの魔具が私には使えなかった。

逆に、褐色肌でも異形の部位を持つわけでもない、赤色肌のマーツェに魔具を使うことができた。




困り顔でヘフテは問いかけてくる。


「なんで、マーツェができたの?」

「私はヘフテとダモンの仲間みたいだ。遠い遠い親戚なんだよ。どうやらね。だから魔具を使えた。ゲルハルトは違う。仲間じゃないんだ。残念ながらね。面は被っているけど」

「同じじゃ、ないの?」

「うん。ゲルハルトは違う」





「じゃあ、どこに行けばいいの?」



震える声とともに、ヘフテの目に水膜が張り、揺らめいた。










「2人の村、行けばいいと思ったのに。ダモンと仲良く、できると思ったのに」



だんだんと大きくしゃくり上げていく。
瞬きをして涙が零れ落ちると、堰を切ったようにヘフテは泣き出した。


ヘフテの姿にダモンは狼狽え、涙目で「泣かさないで!」と怒る。








「ヘフテ。大丈夫。一緒に探そう?私も仲良くできる場所を探すよ。絶対に見つかる。どこかに存在するよ。

だから事情を話してほしい。なんでダモンの村は敵なのか。どうしてヘフテは村を出てきたのか。詳しく教えてくれないか?」



マーツェはヘフテの背中をゆっくりとさする。
大きくしゃくり上げていたのが少し納まったようだ。

ヘフテは涙をこぼしながらマーツェを見る。





「ほんと?探してくれる?」

「うん。探す。一緒に探すよ」

「わかった。話す…」



泣いた後の鼻声で、子供なりに情報を整理しながら、ヘフテは説明を始めた。
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