不死の魔法使いは鍵をにぎる

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ヘフテの持つ魔具は淡く小さく、発光している。
魔具が行使されていることは間違いなく、ヘフテは私に対して何かを伝えようとしているはず。





しかし私は何も感じられなかった。











「どう?ゲルハルト。伝わった?何か感じた?」



少ししてマーツェがせっついてくるが、何もない。
何も起こらない。



「何も感じないぞ」

「え?なんで?」



困惑した顔で、半ば責めるようなヘフテの口調。
なんでと言われても知るか。



「ふうん。面白いね。ヘフテが言ってた結果とは逆だ。私には使えた。ゲルハルトにはできなかった。ヘフテはどうしてそう思ったんだ?何を基準に判断した?」

「だってゲルハルト、お面…」



混乱しすぎてヘフテは最早泣きそうだった。








使えないと思っていた者に使えて、使えると思っていた者に使えない。
ヘフテの考えとは逆の結果。


ヘフテは面の有無により魔具を使えるか判断していた。
それは、異形には魔具を使えるということなのか。





当然マーツェも同じように考える。



「面が関係あるの?ならダモンは?ダモンには魔具使えるのか?」

「使える。たまにダモンに、使ってた」






思い当たる節がある。
言葉を交わしていないのに示し合わせたように2人で笑いだすことがあった。


あれは魔具を使用していたのか。








「魔物に使える。ダモンに使えて、私にも使えた。でもゲルハルトにはできない。共通点は…」






共通点は、魔物の魔力が流れていること。






「ねえ。ヘフテとダモン。ちょっと確かめたいことがあるんだ。魔力を見たい。見させてもらえるか?2人ともいいかな」

「魔力?うん。いいよ」

「うん」






ヘフテはいくらか落ち着きを取り戻したようだ。

マーツェの発言の意味が理解できず、不可解な顔にはなっているが。
ダモンはヘフテが頷いているから真似して頷いた様子だった。

順に、ヘフテとダモンの手首を握って魔力の質を確かめていくマーツェ。


魔力を見られるのは初めてだったのだろう、
ヘフテとダモンは他人の魔力が体内に入ってくる感覚に、小さく声を上げたり軽く身をよじったりしている。






「うん。予想通りだ。思った通りの魔力だよ。混ざってるね」



ヘフテとダモン、マーツェには魔物と同じ魔力が混じっており、私には混じっていない。



「ならヘフテに対してもその魔具が使えるわけだな?」

「うん。使える」






魔物に対して、魔物の魔力に対して使うことができる魔具。

それは、何を目的として作られたのか。
広く有用に使えるはずのそれが、ひっそりと秘されているのはなぜか。



いや、後者は推測できる。

ヘフテが村から持ってきたということは、地図には載っていない、人間から隠れて暮らす村が保持していた魔具ということになる。

人間から隠れて暮らす者たちの文化が人間に伝わるはずがない。



では、あの魔具を作り出したのはベスツァフ達と似た一族だということなのだろうか。
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