不死の魔法使いは鍵をにぎる

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魔具の効力

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さばいた肉を焼き、道中採取した葉物を添えて昼食とした。
腹ごしらえを終え、ヘフテに魔具の効力を見せてもらう。
西方向へと歩みを進めながら、マーツェがヘフテに言う。





「じゃあ、ヘフテ。いいかな。魔具を使って見せてくれるか?」

「うん」





懐から取り出した魔具に、ヘフテが魔力を流していく。


昨晩は子供の壁が出来ていたのもあって、魔具をよく観察できなかった。
魔力に反応して、小さく淡く発光する魔具。

一見すると、装飾の施された板部分は持ち手の役割で付いているように見える。
恐らくは中央の魔石部分に魔法陣が組み込まれているのだろう。

流す魔力は微量でいいらしく、魔石の反応は薄い。
これなら隠し持った状態で魔具を使っていても他者にばれることはあるまい。





4人横に広がって森を歩く。
ざわざわと周囲を生き物が動く気配はあるが、目の前に現れることはない。


マーツェもまじまじと魔具を見つめ、周囲を見渡していたが、しばらくして首を傾げた。





「うん。難しいね。目に見えてわかる効力じゃない。ヘフテが言ってたことは確かみたいだけど。

魔物に襲われはしないね。周りにいる気配はあるけど。現れはしない。でも魔具に魔力を流してることしかわからないな」


「魔力を流してるだけなのか?」

「友達だよ。仲間だよ。だから襲わないでねって、伝えてる」

「伝える?伝えることが大事なの?内容は変えられるのか?」

「うん。いろいろ、伝えられる」






魔物に意思を伝えられるというのか。
それは、この世界に生きる者ならばすべからく欲しがるものではないか。


魔物に襲われずに出歩ける。


使いようによっては町を襲われることも防げるかもしれない。
町を守れるならば、王都も、城も、危険を避けられるようになるだろう。




なぜそのような魔具をヘフテが持っているのか。









「ふうん。…じゃあ、こういうのは?人間を守って魔物を倒して、とか。一緒に魔王を倒そう、とか。できるの?伝えられる?」

「できるけど、ダメ。怒っちゃう。怒ったら、友達だよって言っても、食べられちゃう」

「そうなんだ。そっか。従わせられるわけじゃないんだね。残念」




残念と言いつつ、特に沈んだ様子のない声色だ。
触らないと約束してしまったため、少しでも情報を引き出そうとしているのだろう。




「魔物の方は?魔物の意思は伝わるのか?」

「ううん。わかんない」

「伝えるだけなんだね。そう。…私たちには?私たちに何か伝えることはできるのか?」

「マーツェにはダメ。できない。ゲルハルトにはできる。たぶん」

「そう。試してみたいな。ちょっとやってみてくれるか?私にも一応。確認でやってみて」

「わかった」





見た目上の変化は何もない。
ヘフテは魔具に魔力を流しているだけだ。

少しして、マーツェが何かに反応した。




「あれ?いま私?私に向かってやってる?ぼんやりと感じるね。何かが伝わってくる」

「う、うん」




ヘフテはできないと言っていたが、マーツェは受け取ったようだ。

大きく見開いた目を瞬きさせてマーツェを見るヘフテ。
目を閉じ、マーツェは受け取った“何か”に集中する。




「うーん。…あっ。わかった。“喉乾いた”だな?」

「…うん。飲み物、欲しかった」

「ダモンも。のど乾いた」




ヘフテの伝えた内容が分かったことに喜ぶマーツェ。
魔具は使えないと思っていたのにマーツェに伝わって困惑するヘフテ。
単純に喉が渇いたと小さく跳ねて騒ぐダモン。


とりあえずダモンに飲み物を飲ませて落ち着かせる。





「私に使えたね。伝わったよ。分かりづらかったけど。ぼんやりしてたな。こんな感覚か。ふうん。次はゲルハルトだね。ヘフテ。頼むよ」

「うん」




ヘフテは困惑した表情のまま、言われるがままに魔具を使う。



マーツェには不可能で、私には可能。
そう言っていたが、マーツェに使うことができた。


ヘフテは何を元にそう判断していたのか。
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