147 / 201
訓練施設と見張りの兵士
しおりを挟む
未完成に終わっている、魔法用訓練施設を調べたい。
とりあえず現地に向かってみる。
修理の代価として受け取った情報から、訓練施設は毎日使っているわけではないと聞いていた。
今日は使用する日のようだ。
訓練の声が小さく聞こえてくる。
運がいい。
訓練していない日だったなら、無人で聞きこむことすらできないからな。
出入口には見張りとして兵士が2人立っていた。
マーツェがそこに近づいていく。
「こんにちは。訓練中?あなたたちは訓練しないの?」
「あんたらみたいな不審人物が来ないよう見張ってんだよ」
警戒心丸出しで睨んでくる。
まだ新米兵士だろう。
若そうだ。
「不審じゃない。怪しくないよ。ちょっと調べたいだけ。この施設の不具合について」
「なんでそのことを知って」
「馬鹿!それじゃ白状してるもんだろ」
見張りの相方が慌てて口を塞ぐがもう遅い。
不具合は未だ解明されていない。
それさえわかれば十分だ。
「君たちフォルグネって人知ってる?聞いたことある?」
「兵士で知らねー奴はいねえよ」
口を滑らした兵士がムッとして言い返した。
「そんな有名なんだ。フォルグネさんからだよ。施設の不具合情報は。その人のお孫さんからこれを託されたんだ」
にんまりと笑いながらマーツェがあの冊子を見せつける。
「嘘言ってんじゃねーよ。なんであんたなんかに託すんだ」
「ちょっと中身見せてみろ」
幾分冷静な相方の兵士がマーツェの腕から冊子を奪う。
疑わし気に眉を寄せていたが、だんだんと見開いていく目。
「…うわ、まじか」
最後のフォルグネの言葉まで見て、そう呟いた。
口を滑らす兵士は興奮したように冊子の文字と私たちを何度も見比べる。
「フォルグネと知り合いなのか?そうなのか!?」
「この人。ゲルハルトさんの弟子だよ。直接知り合いではないけど。話はいろいろ聞いてる」
その設定はここでも使われるのか。
呆れつつ流れを静観する。
「弟子?ゲルハルトの弟子?ってことはシュワーゼの話も知ってんのか?」
「もちろん」
「うおおおおお!」
マーツェの返答に2人して興奮しだした。
足踏みをしながら小さく跳ねる。
「フォルグネは兵士の憧れであり希望なんだ!田舎出身であれだけ出世した人は他にいないからな!シュワーゼもゲルハルトも一緒に有名なんだぜ!」
「フォルグネが慕ってた一回りも年下のシュワーゼと、フォルグネが一目置いてたゲルハルト。兵士の間じゃ有名な3人だ」
「シュワーゼはこっそりとだけどな!王に処罰されちまったし」
シュワーゼはともかく私についても残っているとはどういうことだろうか。
フォルグネが好き勝手周りに言っていたに違いない。
「ゲルハルトさんは知りたがってた。どうして失敗したのか。魔法陣の何がいけなかったのか。だから弟子が調べに来たんだ。解明したいんだよ。ゲルハルトさんの意思を継いで」
兵士の間で有名である人の弟子。
態度から見るに、何やら憧れさえ持っていそうな雰囲気だ。
そんな人の意思を継いで施設を調べに来た。
見張り兵士の心が揺らいでいるのがわかった。
「どうするよ」
「どうするったって勝手に入れたら罰せられるだろ」
「でもゲルハルトの弟子だって。フォルグネの手記も持ってっし」
口を滑らす方の兵士は“施設の中に入れたい”に天秤が傾いている。
相方に目で訴えている。
「………、聞いてみるだけだからな」
諦めたように呟き、中に入っていった。
とりあえず現地に向かってみる。
修理の代価として受け取った情報から、訓練施設は毎日使っているわけではないと聞いていた。
今日は使用する日のようだ。
訓練の声が小さく聞こえてくる。
運がいい。
訓練していない日だったなら、無人で聞きこむことすらできないからな。
出入口には見張りとして兵士が2人立っていた。
マーツェがそこに近づいていく。
「こんにちは。訓練中?あなたたちは訓練しないの?」
「あんたらみたいな不審人物が来ないよう見張ってんだよ」
警戒心丸出しで睨んでくる。
まだ新米兵士だろう。
若そうだ。
「不審じゃない。怪しくないよ。ちょっと調べたいだけ。この施設の不具合について」
「なんでそのことを知って」
「馬鹿!それじゃ白状してるもんだろ」
見張りの相方が慌てて口を塞ぐがもう遅い。
不具合は未だ解明されていない。
それさえわかれば十分だ。
「君たちフォルグネって人知ってる?聞いたことある?」
「兵士で知らねー奴はいねえよ」
口を滑らした兵士がムッとして言い返した。
「そんな有名なんだ。フォルグネさんからだよ。施設の不具合情報は。その人のお孫さんからこれを託されたんだ」
にんまりと笑いながらマーツェがあの冊子を見せつける。
「嘘言ってんじゃねーよ。なんであんたなんかに託すんだ」
「ちょっと中身見せてみろ」
幾分冷静な相方の兵士がマーツェの腕から冊子を奪う。
疑わし気に眉を寄せていたが、だんだんと見開いていく目。
「…うわ、まじか」
最後のフォルグネの言葉まで見て、そう呟いた。
口を滑らす兵士は興奮したように冊子の文字と私たちを何度も見比べる。
「フォルグネと知り合いなのか?そうなのか!?」
「この人。ゲルハルトさんの弟子だよ。直接知り合いではないけど。話はいろいろ聞いてる」
その設定はここでも使われるのか。
呆れつつ流れを静観する。
「弟子?ゲルハルトの弟子?ってことはシュワーゼの話も知ってんのか?」
「もちろん」
「うおおおおお!」
マーツェの返答に2人して興奮しだした。
足踏みをしながら小さく跳ねる。
「フォルグネは兵士の憧れであり希望なんだ!田舎出身であれだけ出世した人は他にいないからな!シュワーゼもゲルハルトも一緒に有名なんだぜ!」
「フォルグネが慕ってた一回りも年下のシュワーゼと、フォルグネが一目置いてたゲルハルト。兵士の間じゃ有名な3人だ」
「シュワーゼはこっそりとだけどな!王に処罰されちまったし」
シュワーゼはともかく私についても残っているとはどういうことだろうか。
フォルグネが好き勝手周りに言っていたに違いない。
「ゲルハルトさんは知りたがってた。どうして失敗したのか。魔法陣の何がいけなかったのか。だから弟子が調べに来たんだ。解明したいんだよ。ゲルハルトさんの意思を継いで」
兵士の間で有名である人の弟子。
態度から見るに、何やら憧れさえ持っていそうな雰囲気だ。
そんな人の意思を継いで施設を調べに来た。
見張り兵士の心が揺らいでいるのがわかった。
「どうするよ」
「どうするったって勝手に入れたら罰せられるだろ」
「でもゲルハルトの弟子だって。フォルグネの手記も持ってっし」
口を滑らす方の兵士は“施設の中に入れたい”に天秤が傾いている。
相方に目で訴えている。
「………、聞いてみるだけだからな」
諦めたように呟き、中に入っていった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる