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施設の調査
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しばらくして、いかにも兵士を束ねているといった風貌のいかつい兵士を連れて、相方兵士が戻ってきた。
「中を調べたいというのは君たちか?」
「うん」
軽く姿を確かめ、マーツェの持っている冊子を見て、いかつい兵士は頷く。
「この2人なら許そう。父からその冊子を渡した話は聞いている」
いかつい兵士は、フォルグネの孫の子、つまりフォルグネのひ孫だという。
「王が管理している訓練施設で不具合が生じているなど、外部に漏らすことはできないからな。父にも祖父母にも話せなかったが、冊子の内容を私は理解していた。生前施設の仕組みについて調べていた人の弟子なら、そのうち調べに来るだろうと思っていた」
私たちを連れ立ちながらいかつい兵士が述べた。
中では剣を交えて兵士たちが訓練をしている。
ぶつかり合う金属音。
雄叫び。
純粋に武術・剣術の訓練しかしていないように見える。
「魔法は使っていないのか?」
「魔法の使用は治癒師も派遣できるときのみに限られている。怪我する奴も出るからな。近頃は剣術中心だ」
魔物との闘いで日々怪我人が出ている状況だ。
治癒師が訓練に付き合っている暇は無いだろう。
「官吏の研究は?結界避けの研究する専門部署できたんでしょ?そこの研究は進んでないのか?」
前魔王の被害から復旧が完了した時期に作られた部署だ。
次に魔法用訓練施設を新設する必要が出た場合に、使える資料を残すために作られたと風の噂で聞いた。
その専門部署が作られてから、十数年経っているのだろうか。
「ああ、研究はしていたがな。新しく魔王が立ったから中断している。そこに人員を割いている場合ではないからな」
「そっか。それもそうだね。ならまだ解明されてないんだね。結界避けは未解明のままか。何も進展は無し?専門部署は何か発見してないのか?」
「すまない。詳しくは知らないんだ。今度官吏の友人に聞いてみるよ」
「それは助かる。よろしくね。期待してるよ」
私とマーツェを中に案内し、知っている情報を話すと、いかつい兵士は訓練に戻っていった。
主に新米兵士を一定の基準まで鍛えることを目的に、この施設を使用していると言っていた。
生半可な技術しかない兵士をいきなり魔物との戦闘に送り出しても、無駄に怪我人が増えるだけである。
それでは足手まといだ。
ある程度戦えるようになるまで、新米兵士たちはここで鍛えられる。
訓練監督に使えると判断されれば訓練は卒業。
戦闘へと赴くことになる。
現在は18人の兵士が訓練を行っていた。
魔法制御がうまくいかないとフォルグネが記していた一角を、まずは調べてみる。
間隔をあけて地面に見られる埋めた跡。
魔石が埋まっているはずのその跡は、以前ブルデに見せてもらった資料通りの位置だ。
「ズレはないよね。魔石の位置は変わってない。…ん?」
一つ一つ埋められた跡を見ていたマーツェが何かに気づいた。
「どうした」
「ここ。へこんでるよ。他と違って窪んでる。他は小さく山になってるのにさ」
「ならそこに魔石はないってことか?」
「んー。どうだろ」
窪みをじっと睨み、しばらく悩んでからマーツェは窪みに手を突っ込んだ。
軽く掘り返して、何も埋まっていないのを確認する。
「ないね。魔石が無くなってる。でも取り出されたわけじゃなさそう。小さい欠片が残ってる。たぶん壊れたんだ。砕けたんだね。耐えられなくなったのかな。魔法陣に見合った魔石じゃなかったのかも」
複雑な魔法陣を魔石で発動させるには、質の高いものが必要になる。
見合った魔石を使用しなければ魔法陣は発動しない。
もしくは、このように魔石が砕けてしまう。
魔石が全て揃っていて魔法陣は発動する。
1つでも魔石が砕けてしまえば、魔法は崩れる。
魔石が埋まっていないこの窪みは、間違いなく不具合の原因だ。
フォルグネの冊子を元に魔法制御に支障が出ていた区画を見ると、同じように窪みが見られた。
魔石が3つ壊れている。
こんなわかりやすい原因に長年気づかないはずはない。
訓練施設が建造された直後は魔石は無事だったと考えていい。
制限がかかっていても失敗なく魔法が使えていた時期には、魔石は壊れていないだろう。
恐らく、不発や暴発が起こるようになった頃。
フォルグネが記録を残すようになった時期に、魔石が壊れたのだ。
このことは結界避け研究の専門部署も気づいているに違いない。
施設をざっと調べてわかったのは、魔石が3つ破損しているという、それだけだった。
魔法陣自体は壊れていなさそうだ。
壊れていない魔石によって、ぎりぎりの効力を持続している。
持続しているせいで逆に、魔法制御に支障が出ているのだ。
無策に調べ続けても時間を浪費するだけである。
いかつい兵士に声をかけて、魔法用訓練施設を後にした。
次訪れたときに、研究部署の調査内容を得られることを期待する。
「中を調べたいというのは君たちか?」
「うん」
軽く姿を確かめ、マーツェの持っている冊子を見て、いかつい兵士は頷く。
「この2人なら許そう。父からその冊子を渡した話は聞いている」
いかつい兵士は、フォルグネの孫の子、つまりフォルグネのひ孫だという。
「王が管理している訓練施設で不具合が生じているなど、外部に漏らすことはできないからな。父にも祖父母にも話せなかったが、冊子の内容を私は理解していた。生前施設の仕組みについて調べていた人の弟子なら、そのうち調べに来るだろうと思っていた」
私たちを連れ立ちながらいかつい兵士が述べた。
中では剣を交えて兵士たちが訓練をしている。
ぶつかり合う金属音。
雄叫び。
純粋に武術・剣術の訓練しかしていないように見える。
「魔法は使っていないのか?」
「魔法の使用は治癒師も派遣できるときのみに限られている。怪我する奴も出るからな。近頃は剣術中心だ」
魔物との闘いで日々怪我人が出ている状況だ。
治癒師が訓練に付き合っている暇は無いだろう。
「官吏の研究は?結界避けの研究する専門部署できたんでしょ?そこの研究は進んでないのか?」
前魔王の被害から復旧が完了した時期に作られた部署だ。
次に魔法用訓練施設を新設する必要が出た場合に、使える資料を残すために作られたと風の噂で聞いた。
その専門部署が作られてから、十数年経っているのだろうか。
「ああ、研究はしていたがな。新しく魔王が立ったから中断している。そこに人員を割いている場合ではないからな」
「そっか。それもそうだね。ならまだ解明されてないんだね。結界避けは未解明のままか。何も進展は無し?専門部署は何か発見してないのか?」
「すまない。詳しくは知らないんだ。今度官吏の友人に聞いてみるよ」
「それは助かる。よろしくね。期待してるよ」
私とマーツェを中に案内し、知っている情報を話すと、いかつい兵士は訓練に戻っていった。
主に新米兵士を一定の基準まで鍛えることを目的に、この施設を使用していると言っていた。
生半可な技術しかない兵士をいきなり魔物との戦闘に送り出しても、無駄に怪我人が増えるだけである。
それでは足手まといだ。
ある程度戦えるようになるまで、新米兵士たちはここで鍛えられる。
訓練監督に使えると判断されれば訓練は卒業。
戦闘へと赴くことになる。
現在は18人の兵士が訓練を行っていた。
魔法制御がうまくいかないとフォルグネが記していた一角を、まずは調べてみる。
間隔をあけて地面に見られる埋めた跡。
魔石が埋まっているはずのその跡は、以前ブルデに見せてもらった資料通りの位置だ。
「ズレはないよね。魔石の位置は変わってない。…ん?」
一つ一つ埋められた跡を見ていたマーツェが何かに気づいた。
「どうした」
「ここ。へこんでるよ。他と違って窪んでる。他は小さく山になってるのにさ」
「ならそこに魔石はないってことか?」
「んー。どうだろ」
窪みをじっと睨み、しばらく悩んでからマーツェは窪みに手を突っ込んだ。
軽く掘り返して、何も埋まっていないのを確認する。
「ないね。魔石が無くなってる。でも取り出されたわけじゃなさそう。小さい欠片が残ってる。たぶん壊れたんだ。砕けたんだね。耐えられなくなったのかな。魔法陣に見合った魔石じゃなかったのかも」
複雑な魔法陣を魔石で発動させるには、質の高いものが必要になる。
見合った魔石を使用しなければ魔法陣は発動しない。
もしくは、このように魔石が砕けてしまう。
魔石が全て揃っていて魔法陣は発動する。
1つでも魔石が砕けてしまえば、魔法は崩れる。
魔石が埋まっていないこの窪みは、間違いなく不具合の原因だ。
フォルグネの冊子を元に魔法制御に支障が出ていた区画を見ると、同じように窪みが見られた。
魔石が3つ壊れている。
こんなわかりやすい原因に長年気づかないはずはない。
訓練施設が建造された直後は魔石は無事だったと考えていい。
制限がかかっていても失敗なく魔法が使えていた時期には、魔石は壊れていないだろう。
恐らく、不発や暴発が起こるようになった頃。
フォルグネが記録を残すようになった時期に、魔石が壊れたのだ。
このことは結界避け研究の専門部署も気づいているに違いない。
施設をざっと調べてわかったのは、魔石が3つ破損しているという、それだけだった。
魔法陣自体は壊れていなさそうだ。
壊れていない魔石によって、ぎりぎりの効力を持続している。
持続しているせいで逆に、魔法制御に支障が出ているのだ。
無策に調べ続けても時間を浪費するだけである。
いかつい兵士に声をかけて、魔法用訓練施設を後にした。
次訪れたときに、研究部署の調査内容を得られることを期待する。
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