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探りあい
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「ダモン。もう面付けていいよ。じゃ、まずは食事と風呂かな。果物だけじゃ偏るし。肉も野菜も、お腹いっぱい食べてもらおう。体も身綺麗にしたいね。ゲルハルトいい?とりあえず拠点に戻るってことで」
「ああ。構わない」
4人から7人へ。
人数が増えたが距離はここからそう遠くない。
転移での移動もそう大したことないだろう。
拠点の町近くまで転移する。
孤児3人は初めての転移だったようで、驚きで目を回していた。
宿まで戻り、まずは湯を浴びさせる。
3人は服も靴もぼろぼろだ。
新しい物に替えたい。
下2人の衣服は、ヘフテダモンにどうだと修理の代価で受け取った物があった。
兄の分は合う背丈のものがない。
「衣服調達してくるね。すぐ戻るよ」
物々交換してもらう気なのだろう。
マーツェは代価で受け取った幾つかを持って出ていった。
水場からはしゃぐ声が聞こえてくる。
これは水遊びに発展してるな。
少しして、体が温まったからか興奮からか、頬を紅潮させて出てきた。
下2人は使い古しだが先ほどよりはずっと状態の良い衣服に着替えている。
ぼろ服は処分したため、兄はとりあえず上掛けを羽織っている状態だ。
修理品や代価が詰め込まれ、狭くなっている部屋。
そこにさらに増えた人数。
この部屋のままでは手狭だな。
寝る場にあぶれる。
マーツェが戻り、兄に衣服を手渡した。
少し大きめのようで裾が余っている。
「ちょっと大きかったか。まあすぐ大きくなるでしょ。平気平気」
土埃などで黒ずんでいた状態がある程度綺麗になった。
食堂に移動し、食事を取らせながら話をする。
適当に8品ほど頼んだ料理に目を輝かせて食いついている。
「まずは名前だな。君たちの名前は?」
「俺はワイセ。弟がアンテルで妹がシュグリだ」
「ワイセ、アンテル、シュグリね。いつから3人で?あの村産まれでいいのか?」
「そうだよ。あの村から出たことはねえ。…親が消えたのは2,3ヶ月前だ」
もともと父親のいない片親家庭だったという。
傭兵として日雇いの護衛をして勇ましく働いていた母親。
ある日急に帰らなくなった。
2,3日の不在なら今までもあったが、5日を過ぎても帰らない。
さすがにおかしい。
知り合いに聞いて回って、どうやら護衛任務の途中で魔物に殺されたらしいことがわかった。
稼ぎ柱が、養い手が、保護者が消えた。
弟妹はまだ何もできない子供だというのに。
始めは真っ当に仕事に付けないかを探した。
雇ってほしいと頭を下げては断られる。
そのうちに家に残されていた金はなくなり、家も追い出された。
生きていくためには盗むしかなくて。
満足に食べられる日などなく、痩せていく体。
盗った食べ物を弟妹に譲り、空腹で眠れない日もあった。
「こんないろいろ食べれるなんて、久しぶりだ」
睨むか怒るか、険しい顔ばかりだったワイセの顔が緩む。
頼る大人がいない中、1人で幼い兄弟を食わせていた少年。
過酷な毎日だっただろう。
「ワイセ。頑張ったね。よくやったよ」
マーツェの言葉に一瞬喉を詰まらせ、ワイセはうつむいて食事をかきこむ。
「私たちは調べたいことがある。調べたいことがあってここに居るんだ。だから日中動き回ってる。ヘフテとダモンもそうだ。その間ワイセたちはどうする?今までどうしてた?」
「今までは、俺が盗みに出て、アンテルとシュグリには待機してもらってた。動き回る元気もなかったしな」
「そう。これからは暇になっちゃうね。どうしようか。ゲルハルトはどう思う?」
ワイセたちに期待することは、ヘフテ・ダモンと仲を深め“普通”の認識を広げてもらうことだ。
ヘフテ・ダモンと行動を共にしてもらった方がいいのだろうか。
しかし今の歴史認識をひっくり返したいこと、王に声明を出させたいことは説明できない。
そのため調べものの協力は頼めない。
情報共有の障害になる可能性さえある。
「数日はここで大人しくしてたらいいだろう。玩具も書物もそれなりにある。暇つぶしはできる。栄養が足りてなかった体だ。どうせ動き回る程の活力はないだろう」
その数日の間に、何か策を考えたいものだ。
「そうしようか。ワイセはそれでいい?不満はある?」
「とりあえずそれでいい」
ワイセたちが食べている間に店主と交渉し、大部屋へと変えた。
部屋に詰め込んでいた物を大部屋に移動し終えた頃には治癒の時間だ。
治癒と修理の交渉のため、食堂に戻る。
私とマーツェが対応している間、ヘフテら4人はじゃれ合っていた。
もう打ち解け始めたようだ。
ワイセははしゃぐ弟妹を見守りつつ、こちらの様子を窺ってもいた。
完全に私とマーツェを信用したわけではない。
しばらくはお互い探り合う形になるだろう。
ワイセたちと生活を共にするようになって3日が過ぎた。
まだ体は細いが、動き回る活力は戻ったようである。
日中暇だと不満を言い出した。
毎日食堂にいるため、治癒や修理を頼みに来る大人連中とは顔なじみになりつつある。
アンテル・シュグリはすっかりヘフテ・ダモンと仲良くなった。
ワイセも一先ずは私たちを害のない存在だと判断したようである。
日中、町を遊びまわっていていいことにした。
空腹に苦しむことなく安眠できる日々には執着するはず。
私たちに不都合な行動はとるまい。
ただし、ワイセに1つだけ約束させた。
弟妹がダモンの顔について言及しないよう注意すること。
大概の者が子供の戯言だと気にしないだろうが、万が一がある。
余計な火種は起こしたくない。
ダモンを“普通”だと認識する者は増やしたいが、誰にでも伝えていいわけではないのだ。
ワイセたちは早速外に飛び出していった。
アンテルとシュグリはダモンと遊ぶ気満々のようで、後を追いかける。
ずっと2人で仲良く戯れていたヘフテは少し不満げである。
友達が増えるのは嬉しい。
ダモンが楽しそうなのも嬉しい。
でもヘフテとの時間が減ったのは悲しい。
こっそりと、マーツェにだけそう漏らしていたそうだ。
まあそのうち何とかなるだろう。
「ああ。構わない」
4人から7人へ。
人数が増えたが距離はここからそう遠くない。
転移での移動もそう大したことないだろう。
拠点の町近くまで転移する。
孤児3人は初めての転移だったようで、驚きで目を回していた。
宿まで戻り、まずは湯を浴びさせる。
3人は服も靴もぼろぼろだ。
新しい物に替えたい。
下2人の衣服は、ヘフテダモンにどうだと修理の代価で受け取った物があった。
兄の分は合う背丈のものがない。
「衣服調達してくるね。すぐ戻るよ」
物々交換してもらう気なのだろう。
マーツェは代価で受け取った幾つかを持って出ていった。
水場からはしゃぐ声が聞こえてくる。
これは水遊びに発展してるな。
少しして、体が温まったからか興奮からか、頬を紅潮させて出てきた。
下2人は使い古しだが先ほどよりはずっと状態の良い衣服に着替えている。
ぼろ服は処分したため、兄はとりあえず上掛けを羽織っている状態だ。
修理品や代価が詰め込まれ、狭くなっている部屋。
そこにさらに増えた人数。
この部屋のままでは手狭だな。
寝る場にあぶれる。
マーツェが戻り、兄に衣服を手渡した。
少し大きめのようで裾が余っている。
「ちょっと大きかったか。まあすぐ大きくなるでしょ。平気平気」
土埃などで黒ずんでいた状態がある程度綺麗になった。
食堂に移動し、食事を取らせながら話をする。
適当に8品ほど頼んだ料理に目を輝かせて食いついている。
「まずは名前だな。君たちの名前は?」
「俺はワイセ。弟がアンテルで妹がシュグリだ」
「ワイセ、アンテル、シュグリね。いつから3人で?あの村産まれでいいのか?」
「そうだよ。あの村から出たことはねえ。…親が消えたのは2,3ヶ月前だ」
もともと父親のいない片親家庭だったという。
傭兵として日雇いの護衛をして勇ましく働いていた母親。
ある日急に帰らなくなった。
2,3日の不在なら今までもあったが、5日を過ぎても帰らない。
さすがにおかしい。
知り合いに聞いて回って、どうやら護衛任務の途中で魔物に殺されたらしいことがわかった。
稼ぎ柱が、養い手が、保護者が消えた。
弟妹はまだ何もできない子供だというのに。
始めは真っ当に仕事に付けないかを探した。
雇ってほしいと頭を下げては断られる。
そのうちに家に残されていた金はなくなり、家も追い出された。
生きていくためには盗むしかなくて。
満足に食べられる日などなく、痩せていく体。
盗った食べ物を弟妹に譲り、空腹で眠れない日もあった。
「こんないろいろ食べれるなんて、久しぶりだ」
睨むか怒るか、険しい顔ばかりだったワイセの顔が緩む。
頼る大人がいない中、1人で幼い兄弟を食わせていた少年。
過酷な毎日だっただろう。
「ワイセ。頑張ったね。よくやったよ」
マーツェの言葉に一瞬喉を詰まらせ、ワイセはうつむいて食事をかきこむ。
「私たちは調べたいことがある。調べたいことがあってここに居るんだ。だから日中動き回ってる。ヘフテとダモンもそうだ。その間ワイセたちはどうする?今までどうしてた?」
「今までは、俺が盗みに出て、アンテルとシュグリには待機してもらってた。動き回る元気もなかったしな」
「そう。これからは暇になっちゃうね。どうしようか。ゲルハルトはどう思う?」
ワイセたちに期待することは、ヘフテ・ダモンと仲を深め“普通”の認識を広げてもらうことだ。
ヘフテ・ダモンと行動を共にしてもらった方がいいのだろうか。
しかし今の歴史認識をひっくり返したいこと、王に声明を出させたいことは説明できない。
そのため調べものの協力は頼めない。
情報共有の障害になる可能性さえある。
「数日はここで大人しくしてたらいいだろう。玩具も書物もそれなりにある。暇つぶしはできる。栄養が足りてなかった体だ。どうせ動き回る程の活力はないだろう」
その数日の間に、何か策を考えたいものだ。
「そうしようか。ワイセはそれでいい?不満はある?」
「とりあえずそれでいい」
ワイセたちが食べている間に店主と交渉し、大部屋へと変えた。
部屋に詰め込んでいた物を大部屋に移動し終えた頃には治癒の時間だ。
治癒と修理の交渉のため、食堂に戻る。
私とマーツェが対応している間、ヘフテら4人はじゃれ合っていた。
もう打ち解け始めたようだ。
ワイセははしゃぐ弟妹を見守りつつ、こちらの様子を窺ってもいた。
完全に私とマーツェを信用したわけではない。
しばらくはお互い探り合う形になるだろう。
ワイセたちと生活を共にするようになって3日が過ぎた。
まだ体は細いが、動き回る活力は戻ったようである。
日中暇だと不満を言い出した。
毎日食堂にいるため、治癒や修理を頼みに来る大人連中とは顔なじみになりつつある。
アンテル・シュグリはすっかりヘフテ・ダモンと仲良くなった。
ワイセも一先ずは私たちを害のない存在だと判断したようである。
日中、町を遊びまわっていていいことにした。
空腹に苦しむことなく安眠できる日々には執着するはず。
私たちに不都合な行動はとるまい。
ただし、ワイセに1つだけ約束させた。
弟妹がダモンの顔について言及しないよう注意すること。
大概の者が子供の戯言だと気にしないだろうが、万が一がある。
余計な火種は起こしたくない。
ダモンを“普通”だと認識する者は増やしたいが、誰にでも伝えていいわけではないのだ。
ワイセたちは早速外に飛び出していった。
アンテルとシュグリはダモンと遊ぶ気満々のようで、後を追いかける。
ずっと2人で仲良く戯れていたヘフテは少し不満げである。
友達が増えるのは嬉しい。
ダモンが楽しそうなのも嬉しい。
でもヘフテとの時間が減ったのは悲しい。
こっそりと、マーツェにだけそう漏らしていたそうだ。
まあそのうち何とかなるだろう。
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