不死の魔法使いは鍵をにぎる

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ジーグの意見

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周りの人間とは異なる見た目を持った者。


それが1人だけでは説得力が落ちる。
ダモンだけが異質だと思われてしまう。

しかしもう1人加わるだけで、大きく意味は異なってくる。


数が少ないことに変わりはない。
けれど2人になれば、他の存在の可能性に繋がるのだ。

1人では存在を無視される。
取るに足らない存在だ。

2人になると途端に無視できなくなる。

全くの他人に、違う地で生まれ育った2人に、異なる見た目の部位という共通点。
他にも同じような存在が居るのではないか。


そう思い至る者は格段に増える。

1人と2人では信憑性が違うのだ。









ジーグからしたら思いもよらない話だっただろう。
しばし沈黙があった。



「…2人はどうして魔王の誘いにのったの?ヘフテとダモンのため?人助けなの?」



呪いについてはまだ伏せている。
そのため私とマーツェの目的が理解できないのだろう。



魔王の誘いに乗れば、人間側は利よりも害の方が大きくなる。
王の権威が失墜し、情勢が混乱するかもしれない。

混乱で留まればまだいい。


市民対市民、もしくは市民対王の争いが始まるかもしれない。
全ての悪は魔王だと長い間生きてきた者たちは、何を信じればいいのかわからなくなるかもしれない。




どう転ぶかわからない不安要素がありすぎるのだ。
大量の死者が出ようと、人間側で団結している現状を維持したいと考える者は多いだろう。




「利己的な行動だよ。欲しいものがある。魔王にしか叶えられないものだ。だから魔王の話にのった」






何百年と前の魔王にかけられた呪い。
魔王にしか解けない呪い。






「だからといって混乱を招きたいわけじゃない。できるだけ平和的に解決したい。そのための今だ。策を練って行動してる。

魔王側も争いを収束させたいって考えだしね。魔物と、人間と、両方の血が混ざってる人。それぞれが存在を認め合って過ごせるようになれたらいい。

ヘフテとダモンのためにもね」





黙って話を聞いていたヘフテとダモンも、目で訴える。



人間とは異なった部位を持つ者。
こればかりはその目で存在を確かめないと信じてもらえまい。

情報をばらまくだけでは不十分なのだ。
0よりも1、1よりも2が重要になる。










「そうだねえ。面を付けなくても不自由なく暮らせるようになるってことだよねえ。それなら、協力しようかな」



しばし考えこんだ後、ジーグはそう言った。



「私の村の人たちはみんな受け入れてくれてたけど、やっぱり外に出たらそうはいかなかったからねえ。今のままの方がいいのか、正しい認識に改めた方がいいのかはわからないけど、皆が仲良く暮らせるようになるのは良いことだと思うの」

「ありがとう。協力嬉しいよ。よろしくね」



そして、今考えている策も話していった。


詩人などを利用して、情報をばらまいていきたいこと。
孤児にはダモンを“普通”だと認識してもらい、その数を増やしていきたいこと。
魔法用訓練施設の失敗原因を解き、王との交渉に用いたいこと。



「なるほどねえ。…魔物に協力は頼めないの?私やダモンの存在もそうだけど、魔物と仲良くなれたら大きいと思うの。人間を襲わないって誓いがあるならできるんじゃないかな」



確かにそうだ。

魔物は人間との共存を望んでいる、だから自ら襲うことを止めているのだと噂を流そうと考えていた。
なら魔物と交流できた方が一層効果があるに決まっている。

思いもよらないジーグの提案。





「その発想は無かったな。そうだよね。その方が格段にいい。効果的だ。魔王に話を持ち掛けてみようか」



大人は無理だろうが、子供なら可能だろう。
魔物を可愛いと思えるのだ。
犬猫と同じように触れ合えるに違いない。


唐突に、ヘフテが呟いた。





「ワイセだ」








ヘフテの視線の先には突っ立っているワイセの姿。

今までの話を聞いていたのだろう。
何とも言えない表情をしている。


私たちは家の外で話し合っていたし、湯浴み後すぐに寝付くだろうと考えていた。
音を遮断する結界は張っていない。




盗み聞きは可能だ。
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