不死の魔法使いは鍵をにぎる

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数年に渡る噂流し

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ヘフテとダモンも10の年を迎えた。
魔法を覚え、剣術を学び、そこらの傭兵に並ぶ腕前だ。

2人は相変わらず行動を共にし、“仲良くできる場所”のため一途に行動していた。

保護した孤児とも積極的に関わり、仲良くなろうと努めていた。


しかし、保護した直後の孤児は警戒心が強い。
初めて見る人間と異なった部位を持つダモンやジーグに対して、反発する者もいた。

この5年で、そんな孤児らと言い争う場面もあった。





主に暴れるのはヘフテ。
ダモンはヘフテを宥めつつ、静かな口調で孤児を刺す。

そんな喧嘩を経て、ある程度共同生活できる仲を築いていくのだ。



それ以外にも人数が増えたことで喧嘩は多々あった。
が、それを納める者も現れる。

衝突が起こりつつもうまくまとまっているようだった。







孤児の中でずっと最年長だったワイセは苦労したようである。

ワイセは15になっている。
働き手として十分な年齢だ。


始めはヘフテやダモンと共に情報収集に動き回ることが多かったワイセ。
兵士の職を用意できるとなったときには一番に手を上げた。

傭兵をしていた母親への憧れ。
独り立ちに必要な資金を溜めやすい収入。
剣術の才もそれなりにある。

ワイセは意気込んで志願した。



しかし店の手伝いなどには妥当でも、兵士になるにはまだ幼い年齢。

前途ある少年を危険にさらすのは悔やまれる。

そう入隊を渋る兵士もいたが、断れるほど潤沢に人手があるわけではない。


魔物との攻防で死人が出ることはほぼ無かったが、代わりに出る大量の怪我人。
治癒師の手で間に合う数は超えており、怪我で動けなくなる者もいた。


兵士は町を守る砦である。
人を減らすわけにはいかなかった。




実際には、魔物は人間に攻撃を仕掛けないと誓いを立てている。
兵士の数を減らしても問題ないのだが、それを知る由もない。








かくして兵士に入隊したワイセ。
器用に立ち回り、末端の兵士だったのが、徐々に役割を与えられていった。
王城内の人脈も築いていき、内部の情報が手に入るようになる。


どうやら巷に流した噂が、王の耳にも届いたらしい。
側近の兵士や官吏が王に報告をしたのだ。

噂の出所はどこなのか。
人為的な噂ならその目的は何か。

調査させたいがしかし、そこに手を回す余裕はない。
最優先すべきはいかに民への被害を抑えるかである。




通常、魔王との争いは100年ほどは続く。
今すぐ倒したいのはもちろんだが、それが出来れば苦労はしない。
なら国の未来を考えた施策をとるべきだ。


王城が無事であろうと、民がいなくば国は成り立たない。
よって民を守る兵士を他のことには回せない。




そんな悩ましい状況を聞きつけ、ワイセは話を取り付けた。

そういった噂に鼻が利く知り合いがいる。
状況を調べて報告する、と。



調べるまでもなく、噂の出所は自分たちである。

どこまでの情報を開示するのか。
どう流れを持っていくか。

都合よく話を運ぶために情報を取捨選択した。



噂は意図的に流したものではなく、何気ない呟きが広まっただけという体に。

近頃の魔物と人間の攻防は過去と異なった様相をしている。
もしこの変化が、魔物が共存を望んでいるからなのだとしたら。

平和的解決も望めるのではないか。
短期間で争いを納めるられるのではないか。

また、魔法陣の利便性は広まり、魔具も浸透しつつある。
こんな便利なものを禁止していた時代があるのは不思議だ。


そう、純粋に疑問を口にしただけなのだと。



王への造反を企んでいると思われてはたまらない。

噂の出所であること。
しかし国を荒らす意思はないこと。

両方を示すための策だ。



それに加えて、魔法陣と魔石の研究をしている人物だという情報も混ぜる。


魔法用訓練施設の結界避けは、機密情報である。
その仕組みも、不具合が生じていることも、外部の者は知れない。

好意で協力してくれたフォルグネのひ孫に迷惑はかけたくない。


核心は突かずに、餌を撒く。
半端な結界避けを治せるぞ、と。





ワイセの伝え方もよかったのだろう。
かくして、王に呼び出されるに至った。
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