不死の魔法使いは鍵をにぎる

:-)

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それぞれの人生

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少しずつ顔に皺が刻まれていく。
少しずつ筋力が衰えていく。

老いを実感することが、こんなにも喜ばしい。





呪いが解けてから何十年と経った。


あれから、幾度か共存否定派が問題を起こしつつも、魔物と人間の関係は深まっていった。
いまや民のほとんどの者が魔物と関わりを持つ。

隣人。
仕事仲間。
友人。
家族。

生活習慣や考え方の違いにより起こる摩擦はあるが、それは人間同士でも同じこと。
大きな争いのない、平和な生活を維持している。





魔王は宣言通り魔王城に留まっている。

平等を保つために魔物と人間は連合となり、1つの国として収まった。
国の未来を左右する決断には、必ず魔王と王が顔を突き合わせて行末を決めている。


王は数年前に退き、次の代に変わった。

産まれたときにはすでに魔物との社会が築かれていた世代である。
魔王との友好関係をすんなり引き継ぎ、共存社会を持続させるため国の舵を取っている。


現在は舞台や音楽などの娯楽文化を盛り上げようと力を入れているようだ。
魔物との争いによって分断されがちだった文化。
現在の技術を発展させることはもちろん、書物を漁り古典の復活も模索している。

魔物も演者となり演目を行なう劇団も現れた。





ジーグの指導と魔物の協力により、国の孤児支援は軌道に乗った。

頼る者がいなくなったら図書館に行けばいい。
大人から子供まで、広くそう認識されている。

飢えに苦しむ孤児の姿はほぼ見なくなった。
それに伴い、治安もよくなったように思う。

飢えによる盗みは起こらない。
生きるのに精いっぱいな殺伐とした考えにならない。

もちろん犯罪が一切起こらないわけではないが、町の空気は明るい。








ジーグやワイセ、ヘフテダモンたちはそれぞれ婚姻をした。


ジーグは年を取ってからの婚姻だった。
孤児支援の活動を長年共にしていた魔物と一緒になり、仲睦まじく過ごしているようだ。
2人の子はいないが、代わりに支援してきた孤児たちが大勢訪ねてくる。



ワイセは魔法指導の際に話していた官吏との婚姻だ。
弟妹のアンテルとシュグリが独り立ちするのを見届けてから式を挙げていた。
半年後には孫が生まれる予定もある。



ヘフテとダモンは新居に越して数か月での婚姻。
小さい頃から変わらず、今も行動を共にしている。





他にも関わってきた者たちは様々な生き方をしている。

婚姻した者。
独りを謳歌している者。
家を手放し放浪を楽しんでいる者。
同性で家族となった者。





マーツェは王都に自分の家を持った。
こじんまりとした1人住まい。

しかし家に留まっている日は無いに等しく、趣味の調べもので忙しなく過ごしている。


足としてよく駆り出されるのが私だ。
3日に1回は顔を合わせる日々。

調査内容は私も気になるため、足の代価として内容を聞き出している。





私は変わらず森の根城で過ごしている。
しかし、もう引きこもってはいない。

あらゆる場所に赴き魔法指導を行い、休日には誰かしらが訪ねてくる。
不便な地にあるというのに酔狂なことだ。
それを煩わしく感じない自分が心地よい。




この感覚は師匠と過ごしたあの日々に少し似ていた。

魔法技術が向上していく高揚感はないが、心が温かで充実した時間。
眩しく鮮やかに輝いていたあの時間の欠片。



師匠は、リグンドじいちゃんは、どう思うだろうか。
泉下というものが本当にあるなら、そこにリグンドじいちゃんがいるとしたなら、私をどう思うだろうか。

褒めてくれたなら嬉しい。
絶望を、どん底を味わったが乗り越えてよく頑張ったものだと、褒めてほしい。



リグンドじいちゃん、話したいことがたくさんあるんだ。
リグンドじいちゃんに会いたい。

絶望ではなく、希望を抱えてそう思える。





さあ、今日は何をしよう。
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