クビになった暗黒騎士は田舎でスローライフを送りたい~死の大地と呼ばれる場所は酷暑の日本と同じような場所でした。チートスキルで快適生活します~

taqno2nd

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第一章

第8話 元暗黒騎士は死の大地に踏み入れる

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「さて、この扉の向こう……死の大地に踏み入れるかどうかだが」

「よかった……気分が戻るまで三時間もかかったじゃない。心配したのよ、もう」

「すまなかったな。ああなるから大変なんだよな、このスキル」

「まぁ、その……大変だったわね。組織に所属してる人だと特に……」

 アリアスもようやく俺のスキルの凄さと、その大きすぎるデメリットについて理解してくれたようだ。

 だが本題はここからだ。
 この扉の向こうにある死の大地。
 本当にそこへ行くのか。あの熱風が逆巻くような場所に……。

「ねぇ、一つ聞きたいことがあるんだけどいいかしら」

「どうした。死の大地対策でも思いついたのか?」

「いえ、そうじゃないわ。ただ……」

 アリアスは言いにくそうな表情をした。

「どこへでも行ける魔法の扉なら、わざわざ死の大地へ行く必要ってあるのかしら」

「あっ……」

「私達はお尋ね者よ。あの様子だともうすぐ追手も来るでしょうね。周辺国にも逃げ場はないかも知れないわ」

「実際、俺は周りの国でも賞金首になってるらしい」

「じゃあこの扉でもっと遠く、ユグドラ王国の影響がないような国まで行けばいいんじゃないかしら」

 そ、それは思いつかなかった。
 俺は暗殺者の言葉を真に受けて、逃げるなら死の大地しかないと思い込んでいた。

 なるほど、どこへでも行ける魔法の扉ならば、ユグドラ王国とは全く関係のない国にも行けたはずだ。
 どうして思いつかなかったのだろう……。

「すまないアリアス」

「ど、どうしたの。いきなり謝るなんて。まだスキルの後遺症が残ってるのかしら」

「いや、これは完全に俺のミスだ。スキルを使用する時にミスを犯した」

「ミス? これはどこへでも行ける魔法の扉なんでしょう? 今からでも別の場所に転移すればいいじゃない」

「確かにどこへでも行ける魔法の扉を生成したつもりだ。だが俺は転移するなら死の大地しかないと思い込んだ状態で、【ダークマター】を使用した」

「それの何が問題なの……?」

 アリアスは要領がつかめていない様子だった。
 こんなスキルなど初めて見るのだから、分からないのも当然だ。

「俺はどこへでも行ける魔法の扉を生成した……つもりだった。だけど実際は、死の大地へ転移するだけの扉を生成してしまったってことだ」

「そ、それじゃあ……この扉は……」

「ああ……死の大地にしか繋がってない」

 完全に俺のミスだ。
 このスキルは俺の想像次第、どうせ死の大地にしかいかないだろうと思った状態でスキルを使用すれば、その思考が反映されてしまう。

 つまり、この扉はどこへでも行ける魔法の扉ではなく。
 死の大地にしか行けない、無意味な扉ということだ。

「じゃ、じゃあもう一度スキルで生成すればいいじゃない! 今度はきっと成功するわ!」

「そうしたいところだけど、一度生成したものは二個目は作れないんだ」

「一見便利そうに見えて、かなり不便なスキルね」

「スキルは凄いんだよ。俺の想像力が足りないんだ」

 しかし参ったな。
 せっかく作った魔法の扉が早くもガラクタになってしまった。

「じゃ、じゃあこれならどう? ユグドラ王国の影響を受けない転移の扉を生成するのよ。これならさっきの扉とは別物ってことで、生成出来るんじゃないかしら」

「たぶん、無理だろうな。『転移する扉』を俺が生成してしまった。つまりもう、転移する扉はこの世界に存在するモノになった。だから【ダークマター】で生成出来ないと思う」

「てことは、わ、私達本当に……死の大地に行くしかないの……?」

 そういうことになるよな。
 最初は覚悟していたつもりなんだけど、アリアスの妙案を聞くと、急に死の大地に行く気が薄れてしまう。
 わざわざ環境が厳しいところに行く必要があるのか……?

「ちょっとまっててくれ。他にいい案が思いついたらもう一度【ダークマター】で生成を……」

「見つけたぞ! レクス・ルンハルト! そしてアリアス・シーゲルシュタイン!」

 大声で名前を呼ばれて驚いた。
 振り返ると、そこには大勢の騎士がいた。
 その先頭には、あのクソ上司である騎士団長がいる。

「まさか関所を強引に突破するとはな。やはり異端者、やり方も姑息だな!」

 姑息なのはどっちだ。

「騎士団の名にかけて、今ここで貴様らを捕らえる!」

「ちょ、ちょっと……あれ、何人くらいいるかしら」

「数百人……いや千人を超えてるか? 騎士団長め、王都の騎士たちを全員連れてきたな」

 俺達二人を捕らえるために、部下を全員呼び出したか。
 上司の無茶な誘いに付き合わされる社畜みたいだ。前世を思い出して胸が痛い。

 だが今の俺は無職。あいつ等とはなんの関係もない。
 このまま全員倒してやろうか。

「ちょ、ちょっと! あんな数とやりあうつもり!?」

「戦場ではもっと多くの敵と戦ってきた」

「そうじゃなくて武器! あなた武器がないじゃない!」

 クソ、そうだった。
 さっきの見張りを始末した時に、唯一の武器を失った。

 今俺に武器はない。
 素手となると、流石にこの人数を倒せるかは怪しい。
 少なくとも無傷じゃ済まないだろうな。

「皆のもの、構えっ!!」

 騎士団長の号令のもと、騎士たちは矢を放つ準備をした。

「私の弱点もしっかり伝わってるわ……最悪の状況ってやつね」

「こうなったら俺の【ダークマター】で武器を生成して……」

「それをしたらあなたが情緒不安定になるじゃない! それでまともに戦えるわけ!?」

「戦えるさ! 戦えるけど……!」

 横に立つアリアスを見る。
 俺一人ならなんとかなるかもしれない。
 だがアリアスを守りきれる自信はない。

「射てー!!!!」

 矢は一斉に放たれた。
 弧を描いた矢は次々と俺達へ降り注いでくる。

 こうなったら仕方ない。

「走れ!」

「は、走るってどこに!?」

「決まってるだろ、扉の向こうにだよ!」

「あなた正気なの!? あの扉の先は死の大地なのよ!」

「ここにいてもどうせ死ぬんだ。だったら賭けてみようじゃないか」

「も、もう! 仕方ないわね!」

 アリアスに当たりそうになる矢を脚ではたき落とし、俺に刺さりそうな矢は指で掴む。
 なんとか隙を見て逃げようとしたが、アリアスの脚が遅い。
 このままだと次の第二陣の矢の標的にされてしまう。

「悪い、ちょっと走るぞ」

「え、ちょっと! どこ触って……!」

「喋るな! 舌噛んじまう!」

 俺はアリアスを抱きかかえて扉まで全速力で駆け抜けた。
 扉のノブに手を触れると同時、騎士団長の怒号が響いた。

「逃げるなレクス・ルンハルトォォォォ! この裏切り者めがぁぁぁああ!」

「世話になったな騎士団長。だが次会う時は覚悟しとけよ。今回のお礼はたっぷりさせてもらうからな」

 第二陣の矢が降り注ぐ寸前、俺達は扉の向こうへと転がるように駆け込んだ。

「なんとか逃げ切れたな」

「ちょ、ちょっと……いつまで触ってるのよ!」

「ん? おわ、悪い、すまなかった」

 どうやらアリアスの体に触れてしまっていたようだ。
 やたら柔らかい感触だったが、デカパイか尻か……どっちだ。

 とか馬鹿みたいなことを考えてる余裕はなかった。

「ここが……死の大地……」

 目の前には草木が枯れてしまった土地があった。
 人はいない。生物がまともに生息しているとは思えなかった。

 地獄のような熱気と、体を這いずるような不快な湿気。
 そして頭がボゥっとしそうな日差し。

 なんだか懐かしいような……。

「あれ、ここって酷暑の日本みたいな気候だな」
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