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呪われたエザリア
スミル、森に戻る
へろへろのよれよれでスミルがセインの店に戻ってくると、セインは馬房の閂を掛けに行った。
「あの馬には鍵なんかいらないんじゃないか?自分で扉を蹴り開けて入ってたぞ!」
「ああ、そんなこと覚えちゃったんだ」
「覚えちゃったじゃねえ!なんだあの恐ろしい馬は」
セインはぺろりと舌を出す。
「チュランは暗い森が怖いんですよ、帰りが遅くなったから怖くて急いで帰ってきたんだと思います。おりこうさんでしょ?」
スミルはこの森の中の家にある、あらゆるものが恐ろしいとぷるりと震えた。
『それで』
焦れたように白猫が文字盤を指す。
「ああ、エザリア様の言うとおり、屋敷の使用人でエザリア様についてた者は全員辞めさせられてました!でもみんな近くの新興商会の屋敷に雇われてたので、そこは心配ないです」
『わたし にげた しかたない』
「わかりましたよ、いくらエザリア様がしっかりしてても、ああやってまわりを固められてはね」
エザリアはその答えに満足したように、尻尾をふわりと動かした。
「それじゃあ、スミルにエザリアのお父さんとの連絡を頼んでいいのかな?」
「あぁ、ただひとつ気になることがあってな」
「ニャ?」
頭の中の考えをまとめようと、視線を上に考え込むスミルに、待ちきれなくなったエザリアが近づいて前足をあげた。
これはヤバいやつだと、セインが気づく。
「ゴホっ。スミル、早めに頼むよ」
いつの間にか白猫が足元に。
妙な圧をまとっている。
「は、はい。ええ、あの旦那様が何故シュマーなんかと?と思って。今回のエザリア様の件だってちょっと調べれば真偽は簡単にわかるのに、シュマーは許されると思ってるからやったんだろう?その自信はどこから?それにもしシュマーが思う通りに旦那様を操れる?だとしたら、下手に旦那様に連絡するのってヤバいんじゃないかと思って」
「にゃぁあん!」
爪を出そうとしていたはずの白猫は、やさしくスミルの足に体を擦り付けて、文字盤に戻った。
『すみる さえてる』
「エザリア様ありがとうございます!」
ぎゅぅっとお腹がなったスミルのために、セインが遅めの夕食を作ってやる。
エザリアがそばでセインの手捌きをじっと見つめているのが、どうにもやりにくいのだが、最近は毎食の料理のたびに強い視線で見守られるのが習慣のようになっている。
「ニャッ」
声がかかって猫を見ると首を振っている。
さみしいのかと頭をひと撫でしたあと、調味料をいれようと鍋を持つと、またも鳴く。
白猫は調味料が置かれた棚に飛び乗り、チョイと小さな瓶を転がした。
「ニャ」
顎で持っていけとスミルに指示している。
「これ、使えって?」
スミルから瓶を受け取ると、セインが使おうとしたものよりやさしい香りのハーブである。
─刺激が強いのは好みじゃないんだな─
それにしても、自分といるときは可愛い白猫にしか見えないのに、スミルといるとなかなかに高圧的なお嬢様に見えてくるエザリアに、人間の姿が気になったセインだった。
■□■
お読み頂きありがとうございます。
今日は6時、12時、18時、21時で4話更新しますのでよろしくお願いします。
※【最新話を読む】機能を使うと読み飛ばす可能性がありますので、【しおりから読む】をお勧めします。
【お気に入り】にも是非ポチっとお願いいたします(_ _)
「あの馬には鍵なんかいらないんじゃないか?自分で扉を蹴り開けて入ってたぞ!」
「ああ、そんなこと覚えちゃったんだ」
「覚えちゃったじゃねえ!なんだあの恐ろしい馬は」
セインはぺろりと舌を出す。
「チュランは暗い森が怖いんですよ、帰りが遅くなったから怖くて急いで帰ってきたんだと思います。おりこうさんでしょ?」
スミルはこの森の中の家にある、あらゆるものが恐ろしいとぷるりと震えた。
『それで』
焦れたように白猫が文字盤を指す。
「ああ、エザリア様の言うとおり、屋敷の使用人でエザリア様についてた者は全員辞めさせられてました!でもみんな近くの新興商会の屋敷に雇われてたので、そこは心配ないです」
『わたし にげた しかたない』
「わかりましたよ、いくらエザリア様がしっかりしてても、ああやってまわりを固められてはね」
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「それじゃあ、スミルにエザリアのお父さんとの連絡を頼んでいいのかな?」
「あぁ、ただひとつ気になることがあってな」
「ニャ?」
頭の中の考えをまとめようと、視線を上に考え込むスミルに、待ちきれなくなったエザリアが近づいて前足をあげた。
これはヤバいやつだと、セインが気づく。
「ゴホっ。スミル、早めに頼むよ」
いつの間にか白猫が足元に。
妙な圧をまとっている。
「は、はい。ええ、あの旦那様が何故シュマーなんかと?と思って。今回のエザリア様の件だってちょっと調べれば真偽は簡単にわかるのに、シュマーは許されると思ってるからやったんだろう?その自信はどこから?それにもしシュマーが思う通りに旦那様を操れる?だとしたら、下手に旦那様に連絡するのってヤバいんじゃないかと思って」
「にゃぁあん!」
爪を出そうとしていたはずの白猫は、やさしくスミルの足に体を擦り付けて、文字盤に戻った。
『すみる さえてる』
「エザリア様ありがとうございます!」
ぎゅぅっとお腹がなったスミルのために、セインが遅めの夕食を作ってやる。
エザリアがそばでセインの手捌きをじっと見つめているのが、どうにもやりにくいのだが、最近は毎食の料理のたびに強い視線で見守られるのが習慣のようになっている。
「ニャッ」
声がかかって猫を見ると首を振っている。
さみしいのかと頭をひと撫でしたあと、調味料をいれようと鍋を持つと、またも鳴く。
白猫は調味料が置かれた棚に飛び乗り、チョイと小さな瓶を転がした。
「ニャ」
顎で持っていけとスミルに指示している。
「これ、使えって?」
スミルから瓶を受け取ると、セインが使おうとしたものよりやさしい香りのハーブである。
─刺激が強いのは好みじゃないんだな─
それにしても、自分といるときは可愛い白猫にしか見えないのに、スミルといるとなかなかに高圧的なお嬢様に見えてくるエザリアに、人間の姿が気になったセインだった。
■□■
お読み頂きありがとうございます。
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