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呪われたエザリア
ナレスと三人の若者
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「ナレスさん!」
先程ナレスが視線で散らした使用人たちが、ナレスを取り囲む。
「一体ブラス様はどうしたんです?おかしいですよ、ダメと言っていたのに急にいいと言い出したりして」
「ん。おまえたちが言いたいことはわかるが大丈夫だ、ブラス様はじき落ち着かれる」
「落ち着かれる?やっぱり何かあるんですね?急に変な女と再婚したり、みんなブラス様がおかしいと思ってるんです!俺たちに出来ることがあるなら教えて下さい、ブラス様のために何かしたいです」
「そうですよ!」
口々にブラスを心配し、力になりたいと言うみんなに心を打たれる。
勿論ナレスも味方がいたほうがいいのだが、シュマーに懐柔されている者がいないとも限らないとも思う。
ナレスは自分を囲む三人を順に見つめた。
茶髪の若者、ワリューンは特にシュマーを嫌い、彼女が現れたときから近づかないようにしているのをナレスも知っていた。
その毛嫌いぶりを大人気ないと、しかしまだ年若いから感情の制御が難しいのかと思っていたが、第六感的な何かを感じていたのかもしれないと今なら思う。
ワリューンの隣りに立つ同じく茶髪の青年はコルクス。いつも控えめで、若いのに俯瞰的視点を持つ利発な男だ。
そういえばコルクスは、シュマーが店に来るとぴったりとシュマーに付いて歩いているが、持ち上げるというより見張るような冷たい視線を投げていたことを思い出す。
三人目は美しい銀髪の持ち主、ツィカだ。
ツィカはエザリアと同じ年で、ブラスが共に学園に通わせていたので、屋敷にも出入りしている。
シュマーが屋敷に使用人として来た頃から、立場を弁えないおかしな女だと言っていたことを思い出す。
ナレスは心を決めた。
「三人は私の部屋へ」
宿のナレスの部屋は、ブラスほどではないが、三人部屋のワリューンたちに比べたらかなり広い。
「ソファに座ってくれ。今から話すことは当面絶対秘密としなければならない。顔に毛ほども出すのもダメだ、約束できるか?」
「「「勿論です!」」」
食いつかんばかりの勢いでシンクロした三人の返事に、ナレスは頷いた。
「シュマーが来てからブラス様の急な再婚に疑問を感じた者はいるか?」
「「「はいっ!」」」
三人ともすぐに声を揃えて答える。
「今、私の友人の騎士がシュマーの行いを調べ始めたところなんだ。どうやら他国で犯罪を犯した魔導師と繋がりがあるらしくてな」
「犯罪者の魔導師?こわっ」
さっきの勢いはどこへやら、ワリューンが震えだすと呆れたようにツィカとコルクスが笑った。
「こちらの話を進めてもいいだろうか?」
ワリューンの一言から脱線したままの三人を強引にナレスが引き戻し、まずはエザリアが失踪したこと、それに絡みシュマーに疑惑が生まれたことを説明すると。
「エザリア様は無事なんですかっ!」
悲鳴をあげたのはツィカだ。
「大丈夫だ。エザリア様は保護され、騎士団が護衛についている」
「ああよかった!」
「しかしエザリア様の無事をシュマーたちに知られてはまずいんだ。また狙われるだろうからな」
こくこくと三人とも無言で頷く。
「ブラス様も、何らかの呪術の影響を受けているようだ」
ナレスが重々しい声で告げると、三人は納得の顔で同意した。
「やっぱり」
「どおりでおかしいと」
「ではブラス様が急に違うことをいったりするのは?」
「それもどうもシュマーとの距離が関係しているようなんだ」
「「「距離?」」」
「魔法陣は効果が及ぶ距離があるそうでな、シュマーに近づくと、ブラス様はシュマーの意向に左右されてしまうのかもしれん」
ツィカがハッとした。
「もしかして急に戻ったのは」
「ああ。私の読みが当たったようだ。ブラス様をシュマーの企みから遠ざけるには物理的な距離が必要ということだな」
先程ナレスが視線で散らした使用人たちが、ナレスを取り囲む。
「一体ブラス様はどうしたんです?おかしいですよ、ダメと言っていたのに急にいいと言い出したりして」
「ん。おまえたちが言いたいことはわかるが大丈夫だ、ブラス様はじき落ち着かれる」
「落ち着かれる?やっぱり何かあるんですね?急に変な女と再婚したり、みんなブラス様がおかしいと思ってるんです!俺たちに出来ることがあるなら教えて下さい、ブラス様のために何かしたいです」
「そうですよ!」
口々にブラスを心配し、力になりたいと言うみんなに心を打たれる。
勿論ナレスも味方がいたほうがいいのだが、シュマーに懐柔されている者がいないとも限らないとも思う。
ナレスは自分を囲む三人を順に見つめた。
茶髪の若者、ワリューンは特にシュマーを嫌い、彼女が現れたときから近づかないようにしているのをナレスも知っていた。
その毛嫌いぶりを大人気ないと、しかしまだ年若いから感情の制御が難しいのかと思っていたが、第六感的な何かを感じていたのかもしれないと今なら思う。
ワリューンの隣りに立つ同じく茶髪の青年はコルクス。いつも控えめで、若いのに俯瞰的視点を持つ利発な男だ。
そういえばコルクスは、シュマーが店に来るとぴったりとシュマーに付いて歩いているが、持ち上げるというより見張るような冷たい視線を投げていたことを思い出す。
三人目は美しい銀髪の持ち主、ツィカだ。
ツィカはエザリアと同じ年で、ブラスが共に学園に通わせていたので、屋敷にも出入りしている。
シュマーが屋敷に使用人として来た頃から、立場を弁えないおかしな女だと言っていたことを思い出す。
ナレスは心を決めた。
「三人は私の部屋へ」
宿のナレスの部屋は、ブラスほどではないが、三人部屋のワリューンたちに比べたらかなり広い。
「ソファに座ってくれ。今から話すことは当面絶対秘密としなければならない。顔に毛ほども出すのもダメだ、約束できるか?」
「「「勿論です!」」」
食いつかんばかりの勢いでシンクロした三人の返事に、ナレスは頷いた。
「シュマーが来てからブラス様の急な再婚に疑問を感じた者はいるか?」
「「「はいっ!」」」
三人ともすぐに声を揃えて答える。
「今、私の友人の騎士がシュマーの行いを調べ始めたところなんだ。どうやら他国で犯罪を犯した魔導師と繋がりがあるらしくてな」
「犯罪者の魔導師?こわっ」
さっきの勢いはどこへやら、ワリューンが震えだすと呆れたようにツィカとコルクスが笑った。
「こちらの話を進めてもいいだろうか?」
ワリューンの一言から脱線したままの三人を強引にナレスが引き戻し、まずはエザリアが失踪したこと、それに絡みシュマーに疑惑が生まれたことを説明すると。
「エザリア様は無事なんですかっ!」
悲鳴をあげたのはツィカだ。
「大丈夫だ。エザリア様は保護され、騎士団が護衛についている」
「ああよかった!」
「しかしエザリア様の無事をシュマーたちに知られてはまずいんだ。また狙われるだろうからな」
こくこくと三人とも無言で頷く。
「ブラス様も、何らかの呪術の影響を受けているようだ」
ナレスが重々しい声で告げると、三人は納得の顔で同意した。
「やっぱり」
「どおりでおかしいと」
「ではブラス様が急に違うことをいったりするのは?」
「それもどうもシュマーとの距離が関係しているようなんだ」
「「「距離?」」」
「魔法陣は効果が及ぶ距離があるそうでな、シュマーに近づくと、ブラス様はシュマーの意向に左右されてしまうのかもしれん」
ツィカがハッとした。
「もしかして急に戻ったのは」
「ああ。私の読みが当たったようだ。ブラス様をシュマーの企みから遠ざけるには物理的な距離が必要ということだな」
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