63 / 126
呪われたエザリア
願いはひとつ
しおりを挟む
セインの膝の上、白猫が丸くなり微睡んでいる。
「うちの団長から連絡が来たよ」
ジョルがノックと同時に部屋に現れ書状を手渡してくる。
「僕に?」
「ああ。正確にはエザリア嬢とセインにだ」
封を切って書状を引き出すとニ通入っている。
「イグルス様からのと、これは?」
チューグ・ジュラール?
「えっ!チューグ・ジュラールって魔導師隊長かな」
びっくりして目を大きく開いたジョルは世俗に疎いが、それでも魔術に携わる者なら必ずその名を知る魔導師隊長からの手紙に感慨深い表情を浮かべている。
「これがチューグ・ジュラールの書いた字かぁ!へえええええ」
いつまでも中を読もうとしないで喜んでいるセインの膝に、目を覚ましていたエザリアが爪を立てた。
「あっっつぅ」
「にゃにゃっ!」
早く読め!と言う目だ。
「はい」
ションとしたセインは、急いでニ通の手紙を開いてテーブルに乗せた。
「にゃっ!」
「わかったよ、読むから」
一枚、まずはチューグの手紙を取り上げてよみ始めた。
『エザリア・サリバー男爵令嬢、セイン・デール殿』
─おお。チューグ・ジュラールが僕の名前を!殿だって!─
森住まいの魔法薬師セインにとって、その名を知る数少ない有名人である。
珍しくミーハーになってしまっていた。
「にゃっ!」
「あ、読むよ読むから」
爪が出そうなエザリアの気配に、焦って先を読みだすセイン。
「此度は魔導師団より派遣したイーブィ・キズリが御迷惑をおかけ致したこと、誠に申し訳なく・・・・」
要するに、イーブィの大変失礼な言動を派遣した者として深く謝罪したいということと、イーブィにどのような処罰を与えたか。
代わりの魔導師を追加で派遣するので、是非警備の一端を担わせてもらいたいと書かれていた。
「代わりの魔導師が来るらしいよ」
パタッとエザリアの尻尾が音を立てたが、表情は変わらない。
ふうん、とでも言っているのかもしれない。
チューグの手紙を丁寧に折りたたむと、セインは次の手紙に手を伸ばした。
「こっちは騎士団長からのだ」
ジョルとミクスがこくりと頷いた。
「ええっと、まずはロリンというメイドについてだ。何かわかったのかな」
読む声に出して読んだ手紙だが、ジョルとミクス宛にも似たような文が届いている。
「エザリア、君の屋敷の使用人のメイドだったロリンが行方をくらませたそうだ。このロリンが呪いをかけた赤髪の魔女グルドラと見て、騎士団、魔導師団と陛下の調査部で追っているが、まるで煙のように消えたらしい・・・」
これはいい報せとはいえない。
呪術の解呪は神官のような聖職者か、本人にしかできない。
聖職者は万能とは言えず、高度で複雑な呪いは呪術をかけた本人しか解くことができないこともある。
仮に神殿で解呪できたとしても、エザリアだけが呪いから解放される。
しかし赤髪の魔女を捕まえてその命を絶ち切れば、いままで気づかれずに放置されていただろう、エザリアのように変身させられた行方不明者や、サリバー男爵家に仕込まれた魔女の魔力が流された魔法陣などのすべてが解放されるのだ。
赤髪の魔女を捕まえたい!
それは今や、指名手配をしているムユーク王国のみならず、その悪行を知った周辺国共通の悲願となりつつあった。
「うちの団長から連絡が来たよ」
ジョルがノックと同時に部屋に現れ書状を手渡してくる。
「僕に?」
「ああ。正確にはエザリア嬢とセインにだ」
封を切って書状を引き出すとニ通入っている。
「イグルス様からのと、これは?」
チューグ・ジュラール?
「えっ!チューグ・ジュラールって魔導師隊長かな」
びっくりして目を大きく開いたジョルは世俗に疎いが、それでも魔術に携わる者なら必ずその名を知る魔導師隊長からの手紙に感慨深い表情を浮かべている。
「これがチューグ・ジュラールの書いた字かぁ!へえええええ」
いつまでも中を読もうとしないで喜んでいるセインの膝に、目を覚ましていたエザリアが爪を立てた。
「あっっつぅ」
「にゃにゃっ!」
早く読め!と言う目だ。
「はい」
ションとしたセインは、急いでニ通の手紙を開いてテーブルに乗せた。
「にゃっ!」
「わかったよ、読むから」
一枚、まずはチューグの手紙を取り上げてよみ始めた。
『エザリア・サリバー男爵令嬢、セイン・デール殿』
─おお。チューグ・ジュラールが僕の名前を!殿だって!─
森住まいの魔法薬師セインにとって、その名を知る数少ない有名人である。
珍しくミーハーになってしまっていた。
「にゃっ!」
「あ、読むよ読むから」
爪が出そうなエザリアの気配に、焦って先を読みだすセイン。
「此度は魔導師団より派遣したイーブィ・キズリが御迷惑をおかけ致したこと、誠に申し訳なく・・・・」
要するに、イーブィの大変失礼な言動を派遣した者として深く謝罪したいということと、イーブィにどのような処罰を与えたか。
代わりの魔導師を追加で派遣するので、是非警備の一端を担わせてもらいたいと書かれていた。
「代わりの魔導師が来るらしいよ」
パタッとエザリアの尻尾が音を立てたが、表情は変わらない。
ふうん、とでも言っているのかもしれない。
チューグの手紙を丁寧に折りたたむと、セインは次の手紙に手を伸ばした。
「こっちは騎士団長からのだ」
ジョルとミクスがこくりと頷いた。
「ええっと、まずはロリンというメイドについてだ。何かわかったのかな」
読む声に出して読んだ手紙だが、ジョルとミクス宛にも似たような文が届いている。
「エザリア、君の屋敷の使用人のメイドだったロリンが行方をくらませたそうだ。このロリンが呪いをかけた赤髪の魔女グルドラと見て、騎士団、魔導師団と陛下の調査部で追っているが、まるで煙のように消えたらしい・・・」
これはいい報せとはいえない。
呪術の解呪は神官のような聖職者か、本人にしかできない。
聖職者は万能とは言えず、高度で複雑な呪いは呪術をかけた本人しか解くことができないこともある。
仮に神殿で解呪できたとしても、エザリアだけが呪いから解放される。
しかし赤髪の魔女を捕まえてその命を絶ち切れば、いままで気づかれずに放置されていただろう、エザリアのように変身させられた行方不明者や、サリバー男爵家に仕込まれた魔女の魔力が流された魔法陣などのすべてが解放されるのだ。
赤髪の魔女を捕まえたい!
それは今や、指名手配をしているムユーク王国のみならず、その悪行を知った周辺国共通の悲願となりつつあった。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?
灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。
しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?
【完結】パパ、私は犯人じゃないよ ~処刑予定の私、冷徹公爵(パパ)に溺愛されるまで~
チャビューヘ
ファンタジー
※タイトル変更しました。
「掃除(処分)しろ」と私を捨てた冷徹な父。生き残るために「心を無」にして媚びを売ったら。
「……お前の声だけが、うるさくない」
心の声が聞こえるパパと、それを知らずに生存戦略を練る娘の物語。
-----
感想送っていただいている皆様へ
たくさんの嬉しい言葉や厳しい意見も届いており一つ一つがすごく嬉しいのと頑張ろうと感じています。ご意見を元に修正必要な部分は随時更新していきます。
成長のため感想欄を閉じませんが公開はする予定ありません。ですが必ず全て目を通しています。拙作にお時間を頂きありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~
魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。
ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!
そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!?
「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」
初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。
でもなんだか様子がおかしくて……?
不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。
※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます
※他サイトでも公開しています。
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる