【完結】呪われ令嬢、猫になる

やまぐちこはる

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呪われたエザリア

願いはひとつ

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セインの膝の上、白猫が丸くなり微睡んでいる。

「うちの団長から連絡が来たよ」

ジョルがノックと同時に部屋に現れ書状を手渡してくる。

「僕に?」
「ああ。正確にはエザリア嬢とセインにだ」

封を切って書状を引き出すとニ通入っている。

「イグルス様からのと、これは?」

チューグ・ジュラール?

「えっ!チューグ・ジュラールって魔導師隊長かな」

びっくりして目を大きく開いたジョルは世俗に疎いが、それでも魔術に携わる者なら必ずその名を知る魔導師隊長からの手紙に感慨深い表情を浮かべている。

「これがチューグ・ジュラールの書いた字かぁ!へえええええ」

いつまでも中を読もうとしないで喜んでいるセインの膝に、目を覚ましていたエザリアが爪を立てた。

「あっっつぅ」
「にゃにゃっ!」

早く読め!と言う目だ。

「はい」

ションとしたセインは、急いでニ通の手紙を開いてテーブルに乗せた。

「にゃっ!」
「わかったよ、読むから」

一枚、まずはチューグの手紙を取り上げてよみ始めた。



『エザリア・サリバー男爵令嬢、セイン・デール殿』

─おお。チューグ・ジュラールが僕の名前を!殿だって!─

森住まいの魔法薬師セインにとって、その名を知る数少ない有名人である。
珍しくミーハーになってしまっていた。

「にゃっ!」
「あ、読むよ読むから」

爪が出そうなエザリアの気配に、焦って先を読みだすセイン。

「此度は魔導師団より派遣したイーブィ・キズリが御迷惑をおかけ致したこと、誠に申し訳なく・・・・」

要するに、イーブィの大変失礼な言動を派遣した者として深く謝罪したいということと、イーブィにどのような処罰を与えたか。
代わりの魔導師を追加で派遣するので、是非警備の一端を担わせてもらいたいと書かれていた。

「代わりの魔導師が来るらしいよ」

パタッとエザリアの尻尾が音を立てたが、表情は変わらない。
ふうん、とでも言っているのかもしれない。

チューグの手紙を丁寧に折りたたむと、セインは次の手紙に手を伸ばした。

「こっちは騎士団長からのだ」

ジョルとミクスがこくりと頷いた。

「ええっと、まずはロリンというメイドについてだ。何かわかったのかな」


読む声に出して読んだ手紙だが、ジョルとミクス宛にも似たような文が届いている。

「エザリア、君の屋敷の使用人のメイドだったロリンが行方をくらませたそうだ。このロリンが呪いをかけた赤髪の魔女グルドラと見て、騎士団、魔導師団と陛下の調査部で追っているが、まるで煙のように消えたらしい・・・」

これはいい報せとはいえない。
呪術の解呪は神官のような聖職者か、本人にしかできない。
聖職者は万能とは言えず、高度で複雑な呪いは呪術をかけた本人しか解くことができないこともある。
仮に神殿で解呪できたとしても、エザリアだけが呪いから解放される。

しかし赤髪の魔女を捕まえてその命を絶ち切れば、いままで気づかれずに放置されていただろう、エザリアのように変身させられた行方不明者や、サリバー男爵家に仕込まれた魔女の魔力が流された魔法陣などのすべてが解放されるのだ。

赤髪の魔女を捕まえたい!

それは今や、指名手配をしているムユーク王国のみならず、その悪行を知った周辺国共通の悲願となりつつあった。
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