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呪われたエザリア
イーブィその後
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組織の枠を超えて協働しようと、シュメーンとイーブィをエザリアのもとに送ったはずが、初日の夕方にはイーブィが魔導師団に戻って来た。
「団長!キズリが戻って来たんですが」
驚いた顔で受付当番のミラーが執務室に駆け込んできた。
「何故だ?デール家に泊まり込みと命じただろう。シュメーン・イゾルは一緒か?」
「いえ、キズリのみ単身で」
チューグの眉間に皺が寄る。
「何があったか確認せねば。今すぐここに呼べ」
執務が溜まっているのだが。
火急の問題が起きていたら事だと、机に広げた書類を一気に脇にどけた。
コンコンとノックの音とともに、イーヴィが入ってきて頭を下げた。
「ただいま戻りました」
「・・・それだけか?なにか問題があって戻ったなら早く報告せよ!」
チューグ・ジュラールは報告らしいことをまったくしないイーヴィに苛つきを見せる。
「はぁ。その、呪いとかおかしなことを言って人を小馬鹿にするもので、戻って来たんです」
「小馬鹿にだと?おまえを任務につかせる前に説明したはずだが」
「ですが、護衛すべき令嬢なんかどこにもいなくてですね。店にいた騎士が猫が令嬢だなんて言うんですよ」
ピクピクっとチューグのこめかみが痙攣したと思うと。
「馬鹿はおまえだーっ!」
雷が落ちた。
「へ?」
「呪いを受けた令嬢を護衛すると言ってあっただろうがっ」
「それは聞きましたが」
「呪われて猫に姿を変えられたんだ」
「団長までそんなことおっしゃって!あれはただの猫でしたよ。あんなに完璧に動物に変えられる呪いなんてありません。魔導師団長ともあろう方が騙されたとは」
鼻の穴を膨らませて嘲笑うのを我慢したイーブィは、チューグの顔色の変化に気づかなかった。
「ば、ば、ばっかもーーーーん!」
凄まじい圧がチューグから放たれ、思わずイーブィはよろけてしまう。
「貴様!命令不服従のみならず・・・私だけでなく騎士団長まで、不敬である!」
わなわなと握った拳が震える上司を見て、イーヴィはまずいことをやってしまったようだと今頃気がついた。
「誰もが一度は笑う話だが、騎士団長イグルス・ベイトリールが自らサリバー男爵令嬢のもとに赴き、本人と確認してきたのだから間違いない。
完璧な猫にしか見えぬほどの呪術は、ムユークの赤髪の魔女が施したと考えられ、今魔女と思われる者をムユークの協力を得て、我が魔導師隊と騎士団、そして陛下直属の調査機関で協働し捜索している。
猫となりながら、ある手段で会話ができるサリバー男爵令嬢は生きた証拠。もし魔女たちに存在を知られたら、その身が危ない。だからこそ、騎士団と魔導師隊から追加の護衛を送ろうと三責任者にて決めたのだ。
令嬢のために女性がいたほうがよかろうとキズリ、おまえを選んだだけのことだというのに、何様のつもりだ?
私は未熟なおまえなどに騙されたなどと嘲笑われる覚えはないぞ!」
チューグ・ジュラールが魔導師団長に抜擢されたのは、圧倒的な魔力量と唯一無二と言われる絶対零度広域魔術の使い手だから。
感情の抑制はあまり得意ではなく、気の赴くままに冷気を放出する。
イーブィは体の芯から凍りつきそうなチューグの冷気に晒され、カタカタと歯を鳴らして震え始めていた。
「イーブィ・キズリ。おまえのような不心得者は団の規律を乱すだけだ。魔導師としても、いなくとも痛くも痒くもない程度の存在に過ぎぬ。よって本隊から外し、テミラス辺境魔導部隊に転属の上三ヶ月の謹慎とする」
辺境魔導部隊は左遷というだけではない。
テミラス辺境は国境を接する国と常に小競り合いをしており、他の辺境領とは危険度が桁違いなのだ。
「え、うそ!や、団長、うそで」
「嘘ではない。なぜ私がおまえに嘘を付く必要がある?」
「そんな、そんなの重すぎじゃ」
「重いかどうかは私が決めること。魔導師団すべての人事権を持つ私が相当と判断したのだ、諦めて辺境に行くがいい」
イーブィの言うように、命令不服従や規律違反があったとしても一度のことなら、普通ならここまで厳しい処罰はしないだろう。
イーブィはわかっていなかった。
騎士団や暗部と協働しているのに、自分が選んだ魔導師だけが命令不服従で職務を放棄したとなれば、チューグの立場は悪くなる。
それだけではない。
常からイーブィは人のせいにする傾向が強い。今回のことを根に持ち、魔女側に寝返られたり、そこまでではないにしても情報を漏らされたりしたら大変なことになる。
情報遮断ためにまず辺境に飛ばして、その地で謹慎させるのだ。
顔に泥を塗られたチューグがイーブィを許すことはなかった。
「キズリ!私がこの座にいる限り、本隊に戻れるとは思うなよ。連れて行け」
キズリについてきていたミラーが腕を取って執務室から連れ出すと、チューグは大きくため息をついた。
「騎士たちから報告があがるのだろうな、くそっ!」
イゾルが残っているのは良かったが、キズリの失態を挽回できる魔導師を出さねばならない。
各隊が抱える仕事の一覧を眺めていた、チューグの視線が一人の名に留まる。
「誰か、第二小隊のジーリーを呼んでくれ」
「団長!キズリが戻って来たんですが」
驚いた顔で受付当番のミラーが執務室に駆け込んできた。
「何故だ?デール家に泊まり込みと命じただろう。シュメーン・イゾルは一緒か?」
「いえ、キズリのみ単身で」
チューグの眉間に皺が寄る。
「何があったか確認せねば。今すぐここに呼べ」
執務が溜まっているのだが。
火急の問題が起きていたら事だと、机に広げた書類を一気に脇にどけた。
コンコンとノックの音とともに、イーヴィが入ってきて頭を下げた。
「ただいま戻りました」
「・・・それだけか?なにか問題があって戻ったなら早く報告せよ!」
チューグ・ジュラールは報告らしいことをまったくしないイーヴィに苛つきを見せる。
「はぁ。その、呪いとかおかしなことを言って人を小馬鹿にするもので、戻って来たんです」
「小馬鹿にだと?おまえを任務につかせる前に説明したはずだが」
「ですが、護衛すべき令嬢なんかどこにもいなくてですね。店にいた騎士が猫が令嬢だなんて言うんですよ」
ピクピクっとチューグのこめかみが痙攣したと思うと。
「馬鹿はおまえだーっ!」
雷が落ちた。
「へ?」
「呪いを受けた令嬢を護衛すると言ってあっただろうがっ」
「それは聞きましたが」
「呪われて猫に姿を変えられたんだ」
「団長までそんなことおっしゃって!あれはただの猫でしたよ。あんなに完璧に動物に変えられる呪いなんてありません。魔導師団長ともあろう方が騙されたとは」
鼻の穴を膨らませて嘲笑うのを我慢したイーブィは、チューグの顔色の変化に気づかなかった。
「ば、ば、ばっかもーーーーん!」
凄まじい圧がチューグから放たれ、思わずイーブィはよろけてしまう。
「貴様!命令不服従のみならず・・・私だけでなく騎士団長まで、不敬である!」
わなわなと握った拳が震える上司を見て、イーヴィはまずいことをやってしまったようだと今頃気がついた。
「誰もが一度は笑う話だが、騎士団長イグルス・ベイトリールが自らサリバー男爵令嬢のもとに赴き、本人と確認してきたのだから間違いない。
完璧な猫にしか見えぬほどの呪術は、ムユークの赤髪の魔女が施したと考えられ、今魔女と思われる者をムユークの協力を得て、我が魔導師隊と騎士団、そして陛下直属の調査機関で協働し捜索している。
猫となりながら、ある手段で会話ができるサリバー男爵令嬢は生きた証拠。もし魔女たちに存在を知られたら、その身が危ない。だからこそ、騎士団と魔導師隊から追加の護衛を送ろうと三責任者にて決めたのだ。
令嬢のために女性がいたほうがよかろうとキズリ、おまえを選んだだけのことだというのに、何様のつもりだ?
私は未熟なおまえなどに騙されたなどと嘲笑われる覚えはないぞ!」
チューグ・ジュラールが魔導師団長に抜擢されたのは、圧倒的な魔力量と唯一無二と言われる絶対零度広域魔術の使い手だから。
感情の抑制はあまり得意ではなく、気の赴くままに冷気を放出する。
イーブィは体の芯から凍りつきそうなチューグの冷気に晒され、カタカタと歯を鳴らして震え始めていた。
「イーブィ・キズリ。おまえのような不心得者は団の規律を乱すだけだ。魔導師としても、いなくとも痛くも痒くもない程度の存在に過ぎぬ。よって本隊から外し、テミラス辺境魔導部隊に転属の上三ヶ月の謹慎とする」
辺境魔導部隊は左遷というだけではない。
テミラス辺境は国境を接する国と常に小競り合いをしており、他の辺境領とは危険度が桁違いなのだ。
「え、うそ!や、団長、うそで」
「嘘ではない。なぜ私がおまえに嘘を付く必要がある?」
「そんな、そんなの重すぎじゃ」
「重いかどうかは私が決めること。魔導師団すべての人事権を持つ私が相当と判断したのだ、諦めて辺境に行くがいい」
イーブィの言うように、命令不服従や規律違反があったとしても一度のことなら、普通ならここまで厳しい処罰はしないだろう。
イーブィはわかっていなかった。
騎士団や暗部と協働しているのに、自分が選んだ魔導師だけが命令不服従で職務を放棄したとなれば、チューグの立場は悪くなる。
それだけではない。
常からイーブィは人のせいにする傾向が強い。今回のことを根に持ち、魔女側に寝返られたり、そこまでではないにしても情報を漏らされたりしたら大変なことになる。
情報遮断ためにまず辺境に飛ばして、その地で謹慎させるのだ。
顔に泥を塗られたチューグがイーブィを許すことはなかった。
「キズリ!私がこの座にいる限り、本隊に戻れるとは思うなよ。連れて行け」
キズリについてきていたミラーが腕を取って執務室から連れ出すと、チューグは大きくため息をついた。
「騎士たちから報告があがるのだろうな、くそっ!」
イゾルが残っているのは良かったが、キズリの失態を挽回できる魔導師を出さねばならない。
各隊が抱える仕事の一覧を眺めていた、チューグの視線が一人の名に留まる。
「誰か、第二小隊のジーリーを呼んでくれ」
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