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恋は迷路の中

スミルとエザリア

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「え、パーティー?」
「ああ。今回力になってくれた皆さんを招くそうだ。セインは主賓だぞ」

 サリバー商会に荷物を届けに行っていたスミルが、招待状を手に戻って来た。

「いや、僕はパーティーなんてきらびやかなのはちょっと」
「大丈夫だよ。呼んでるのはセインと騎士団と魔術師団って言ってたから、全然きらびやかじゃないと思う。むしろ樽酒と肉山盛りとかじゃないか?」
「ぷっ」

 笑わせようとしたわけではなく、本当のことを言ったスミルだったが、それでもセインが「それなら考えてみるよ」と言ってくれたので、まずは良しとした。

「エザリア様、もう元の姿に戻られたそうだから会いに行ってくれば?人の姿、見たことないだろ?」
「う、うん。スミルもまだだろ?お前が先に行ってくればいいよ。ぼくはいい・・」
「何で?エザリア様待ってると思うぞ」
「いや、貴族のご令嬢だしさ」
「そんなこと気にするような人じゃないよ、セインは大恩人なんだから胸張って行って来いって。ブラス様にも来いって言われてるだろ?」

 スミルがどれほど勧めても、セインは首を縦には振らなかった。
 

 本当を言うと、人の姿に戻ったエザリアに一度くらいは会ってみたいと思う。
 しかし、令嬢然としたエザリアに会ったら全てが終わってしまう気がした。

(終わる?終わるって何がだ・・・?)

 ふと自分の思考に引っかかるものを覚えて考え込んでいると。

「なあ。難しく考えるなよセイン。なっ?」
「じゃあパーティ・・行ってみるよ」
「よっし!ブラス様とエザリアお嬢様にそう返事しておく!」


 浮かれるスミルとは反対に、浮かぬ顔をするセインだった。




 その翌日。

「エザリア様!本当に人間に戻ったんですね!」

 スミルが目を瞬いて立ち尽くしている。

「ふふ。久しぶりねスミル。スミルにはたくさん助けられたわ、感謝してる!ありがとう」
「いやあ、そんなこと。セインの足元にもおよびません」
「ええ勿論そうよ、当然じゃない」
「えっ?えー、そんなぁ!もうちょっと褒めてくれてもいいじゃないですか」
「だからさっきありがとうって言ったでしょ。あれじゃ不満なの?」

 エザリアの水色の瞳に威圧され、スミルはすぐに白旗を振る。

「い、いや、あの、とんでもございません。不満なんて畏れ多いです」
「そ。ならよろしい。それで今日は何しに来たの?」
「はあ、セインもパーティーに来る事を」
「えっ?セインがっっっっ?来てくれるの?ほんとにっ?」

 ガバッと近寄り、食いつかんばかりのエザリアに、スミルは呆気にとられた。

「は、はい」
「そう!来てくれるのね♪」

 うれしそうな呟きの後、くるりとターンしてびっくり眼のスミルに訊ねる。

「ねえ、じゃあセインは私がもとの姿に戻れたって知ってるのね?」
「はい」
「それなのに会いに来てくれないのはどうしてかしら」

 眉を寄せたエザリアは妙に気弱そうに見え、スミルは首を傾げつつ、セインの気持ちを代わって伝える。

「貴族のお嬢様が畏れ多いらしいですよ」
「そんな!私は私なのに・・。スミル、セインにそんなこと気にしないで是非会いに来てと伝えて。
本当は私が森に行ければいいのだけど、まだ暫くは屋敷から出られそうにないから」

 猫にされたときはあまり感じなかったが、急に大きくなったせいか?人に戻ったあと、体がぎくしゃくするようになった。
今はリハビリ中である。

「そうなんですね。それは大変だ!
セインにはちゃんと伝えますよ」
「絶対よ!よろしくね」
    
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