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第1章
第4話 あたたかな抱擁
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苛つきながらユートリーは一日を過ごしている。
夢でないなら、あの時自分に毒を盛った者がこの屋敷に間違いなくいる、またあの時の様に自分が弱った姿を見せたら、同じことが起きるのだと気を抜くことなく屋敷の中を歩き回っていた。
夢なら笑い話にすればいい。
しかし、現実ならここでぼんやり過ごしていると同じことをくり返してしまう。
それだけは絶対に避けたかった。
─聞いたことのない声と、一言も話さなかったもうひとり。
少なくともふたりはこの屋敷に私を狙う者がいる?でもなんのために?─
侯爵家は二十歳の長男サルジャンが継ぐ。十九歳のユートリーは王家を離れるナイジェルスに嫁ぎ、公爵夫人になることが決まっていた。ナイジェルスは早くから独立したら王位継承権も手放すと公言しており、王位争いからはとうに下りている。
それなのにナイジェルスが視察先で襲われたこと、そして自分が毒を盛られたことに関係はあるのだろうか。
─私を害して得をする者は誰?恨みを買うようなことは・・・ないはずと思うけど。ナイジェルス様を想われていた令嬢ならあるかしら?いえ、それはないわね。だったら私だけが狙われるはず。それともナイジェルス様と私が狙われたのは別のことなのかしら─
考えながら屋敷を歩き回る。
「ユートリー様!何をなさっているんですか?さっきからうろうろと」
「んんん、何か忘れている気がするのよ、こうして歩いていれば思い出せそうだから放っておいてちょうだい」
後ろを付いて歩くタラに有無を言わせず、あの声の持ち主を探して歩いた。
自分が知らない声ということは使用人の中でもユートリーが関わりを持つことのない者。
しかしメイドや侍女が控えている部屋に近づいて覗き込むと、休憩で寛いでいたのは皆よく知っている者たちばかりだった。
「ねえみんな、最近採用した使用人はいる?」
「うーんどうでしょう?私たちもすべての使用人を知っているわけではありませんから。侍女やメイドだとミイヤ様の専属に新しく雇われた者がいますよ。あと奥様付きのチルですね」
「そう。・・・教えてくれてありがとう」
チルならユートリーも知っている。
メイド長の娘なのだ。
─ミイヤの侍女かメイド?私を狙う意味もないわね。放っておいても私はあと数ヶ月で家を出るのだもの─
ユートリーが可愛いミイヤや、妹に付き従うものを疑うことはない。
先に進みサルジャンの部屋の近くに来ると、廊下にいたサルジャンの侍従はよくわきまえており、ユートリーに道を開けて通そうとしてくれた。
─ここもみんな知っている者ばかり、というか男性だから違うわね─
「お兄様は?お手空きなら会いたいのだけど」
長いこと会っていない兄の顔を見たいと思った。
「サルジャン様は早朝より外出されております。戻られましたらユートリー様のお言付けを伝えましょう」
いないのでは仕方ない。
小さく頷いて、屋敷の奥に進んだ。
突き当りは母リラの部屋がある。
リラ付きの使用人たちもすべてユートリーもよく知る者のみだ、それに母が娘の自分を害する理由はない。
安心して、控えの間にいた侍女に声をかけた。
「ユートリー様!リラ様にお伝えします」
扉が開けられると、奥のティーテーブルで茶を飲んでいる母が見える。
「トリー!」
「お母様」
ソイスト家では朝食はそれぞれ部屋で食べるので、母娘が会うのは、リラには昨夜ぶりだがユートリーは違う。
愛おしい母に再会できて感極まり、母に駆け寄って首に抱きついた。
「まあどうしたの?こどもみたいに」
「お母様にとっても会いたかったのですわ」
懐かしい香りを胸いっぱいに吸い込み、少しも変わらない母の温かさを体中で感じていた。
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次の更新は12時です!
夢でないなら、あの時自分に毒を盛った者がこの屋敷に間違いなくいる、またあの時の様に自分が弱った姿を見せたら、同じことが起きるのだと気を抜くことなく屋敷の中を歩き回っていた。
夢なら笑い話にすればいい。
しかし、現実ならここでぼんやり過ごしていると同じことをくり返してしまう。
それだけは絶対に避けたかった。
─聞いたことのない声と、一言も話さなかったもうひとり。
少なくともふたりはこの屋敷に私を狙う者がいる?でもなんのために?─
侯爵家は二十歳の長男サルジャンが継ぐ。十九歳のユートリーは王家を離れるナイジェルスに嫁ぎ、公爵夫人になることが決まっていた。ナイジェルスは早くから独立したら王位継承権も手放すと公言しており、王位争いからはとうに下りている。
それなのにナイジェルスが視察先で襲われたこと、そして自分が毒を盛られたことに関係はあるのだろうか。
─私を害して得をする者は誰?恨みを買うようなことは・・・ないはずと思うけど。ナイジェルス様を想われていた令嬢ならあるかしら?いえ、それはないわね。だったら私だけが狙われるはず。それともナイジェルス様と私が狙われたのは別のことなのかしら─
考えながら屋敷を歩き回る。
「ユートリー様!何をなさっているんですか?さっきからうろうろと」
「んんん、何か忘れている気がするのよ、こうして歩いていれば思い出せそうだから放っておいてちょうだい」
後ろを付いて歩くタラに有無を言わせず、あの声の持ち主を探して歩いた。
自分が知らない声ということは使用人の中でもユートリーが関わりを持つことのない者。
しかしメイドや侍女が控えている部屋に近づいて覗き込むと、休憩で寛いでいたのは皆よく知っている者たちばかりだった。
「ねえみんな、最近採用した使用人はいる?」
「うーんどうでしょう?私たちもすべての使用人を知っているわけではありませんから。侍女やメイドだとミイヤ様の専属に新しく雇われた者がいますよ。あと奥様付きのチルですね」
「そう。・・・教えてくれてありがとう」
チルならユートリーも知っている。
メイド長の娘なのだ。
─ミイヤの侍女かメイド?私を狙う意味もないわね。放っておいても私はあと数ヶ月で家を出るのだもの─
ユートリーが可愛いミイヤや、妹に付き従うものを疑うことはない。
先に進みサルジャンの部屋の近くに来ると、廊下にいたサルジャンの侍従はよくわきまえており、ユートリーに道を開けて通そうとしてくれた。
─ここもみんな知っている者ばかり、というか男性だから違うわね─
「お兄様は?お手空きなら会いたいのだけど」
長いこと会っていない兄の顔を見たいと思った。
「サルジャン様は早朝より外出されております。戻られましたらユートリー様のお言付けを伝えましょう」
いないのでは仕方ない。
小さく頷いて、屋敷の奥に進んだ。
突き当りは母リラの部屋がある。
リラ付きの使用人たちもすべてユートリーもよく知る者のみだ、それに母が娘の自分を害する理由はない。
安心して、控えの間にいた侍女に声をかけた。
「ユートリー様!リラ様にお伝えします」
扉が開けられると、奥のティーテーブルで茶を飲んでいる母が見える。
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愛おしい母に再会できて感極まり、母に駆け寄って首に抱きついた。
「まあどうしたの?こどもみたいに」
「お母様にとっても会いたかったのですわ」
懐かしい香りを胸いっぱいに吸い込み、少しも変わらない母の温かさを体中で感じていた。
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