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第1章
第7話 信じる兄
また布団を被ると、いつの間にかうとうとしていたらしい。
扉が開く気配に、ハッと目が覚めた。
しかし今度は小さな灯りを手に、すたすたとベッドサイドまでやって来て、額に散らばった髪をそっと除けてくれる。
目を開けると兄サルジャンであった。
「すまん、起こしたか」
首を横に振ると、ユートリーは半身を起こした。
「お兄様」
とても小さな声で兄をさらに近くに呼び寄せると、不安そうな妹にサルジャンは顔を近づけた。
「大丈夫かユートリー?殿下のことは捜索隊が編成され、探している」
「はい、お父様からもうかがいました」
ナイジェルスを思うと胸が潰れそうになるが、自分が生きていなければ真実を明かすことも、復讐もできないのだと心を奮い立たせて。
「お兄様に内密でご相談があるのです」
兄の腕にしがみついて、耳元に顔を寄せるとついさっき起きたばかりの不審な出来事を囁いた。
「っ!なんだと?それは本当か?」
部屋の中をキョロキョロと見回し、ユートリーに倣って小さな声で訊ねるサルジャンは、自ら持ち込んだキャンドルの灯りでもわかるほど青褪め、怒りに打ち震えている。
「私、その水を隠しておいたのです」
「よし私が調べさせよう。いいか、私が持ってくるもの以外は口にしてはダメだぞ」
「はい」
「私が必ずトリーを守るから。必ず犯人を見つけてやるからな」
今のサルジャン付きの使用人はすべて男性なので、屋敷内で女性の使用人と近い距離でいればすぐに目につく。
犯人が女で間違いなければ、サルジャンとその周囲は白だろう。それに死の間際、サルジャンがユートリーに見せていた労りは本心からのものだ。そう信じられたから、ユートリーはサルジャンに打ち明けた。
「護衛を手厚くしよう」
「いいえお兄様、それではあちらが次の手を打てなくなりますわ」
「え?いやそれではトリーが危険だ」
「あちらのやり口は少しわかりましたもの、私も十分に慎重に行動します。約束しますわ」
「・・・では、暗部の者をつけてくださるよう父上に相談してくる」
「暗部?」
「トリーは知らなかったか?王室の影のようなものだよ」
「そんな者がここにいるのですか?」
「ああ。トリーと殿下が婚約してからだが、父上が王家とは別に組織したんだ」
サルジャンはあたりまえのように言うが、と言うことはユートリーを守るための組織。
「今までは屋敷の外でだけ守らせていたんだが、敵は内にいたということだな・・・」
眉を寄せて顔を顰めているサルジャンは、笑いこそしなかったがユートリーを安心させるように口角を上げてみせると
「大丈夫だ。私と父上が守ってやる。だが暗部のことは母上も知らないことだから、父上と私と三人だけの秘密にしなければいけないよ」
ユートリーが異もなく頷いたのを見て、サルジャンは小さな頃のように頭を撫でてやった。
「水は水差しを使わず、毎回蛇口から汲む。蛇口に毒を塗られるかもしれないから、しばらく水を流して蛇口を洗ってからだ。誰かが入れた水差しの水は、毎回調べさせるから入れ替えて隠しておいて。
食事は食堂より部屋のほうがいい。厨房の者の調査が終わるまで・・・いや、私か暗部の者が外で調達してくる物を食べるんだ。屋敷の者が運んできた物も、水と同じように食べずに隠しておくこと。いいね。
タラに怪しまれて騒がれると困るな。タラはまああれだ、ユートリー命みたいな侍女だし口が堅いから話しておいたほうがいいだろう。まずタラとジュランを呼ぼう」
扉が開く気配に、ハッと目が覚めた。
しかし今度は小さな灯りを手に、すたすたとベッドサイドまでやって来て、額に散らばった髪をそっと除けてくれる。
目を開けると兄サルジャンであった。
「すまん、起こしたか」
首を横に振ると、ユートリーは半身を起こした。
「お兄様」
とても小さな声で兄をさらに近くに呼び寄せると、不安そうな妹にサルジャンは顔を近づけた。
「大丈夫かユートリー?殿下のことは捜索隊が編成され、探している」
「はい、お父様からもうかがいました」
ナイジェルスを思うと胸が潰れそうになるが、自分が生きていなければ真実を明かすことも、復讐もできないのだと心を奮い立たせて。
「お兄様に内密でご相談があるのです」
兄の腕にしがみついて、耳元に顔を寄せるとついさっき起きたばかりの不審な出来事を囁いた。
「っ!なんだと?それは本当か?」
部屋の中をキョロキョロと見回し、ユートリーに倣って小さな声で訊ねるサルジャンは、自ら持ち込んだキャンドルの灯りでもわかるほど青褪め、怒りに打ち震えている。
「私、その水を隠しておいたのです」
「よし私が調べさせよう。いいか、私が持ってくるもの以外は口にしてはダメだぞ」
「はい」
「私が必ずトリーを守るから。必ず犯人を見つけてやるからな」
今のサルジャン付きの使用人はすべて男性なので、屋敷内で女性の使用人と近い距離でいればすぐに目につく。
犯人が女で間違いなければ、サルジャンとその周囲は白だろう。それに死の間際、サルジャンがユートリーに見せていた労りは本心からのものだ。そう信じられたから、ユートリーはサルジャンに打ち明けた。
「護衛を手厚くしよう」
「いいえお兄様、それではあちらが次の手を打てなくなりますわ」
「え?いやそれではトリーが危険だ」
「あちらのやり口は少しわかりましたもの、私も十分に慎重に行動します。約束しますわ」
「・・・では、暗部の者をつけてくださるよう父上に相談してくる」
「暗部?」
「トリーは知らなかったか?王室の影のようなものだよ」
「そんな者がここにいるのですか?」
「ああ。トリーと殿下が婚約してからだが、父上が王家とは別に組織したんだ」
サルジャンはあたりまえのように言うが、と言うことはユートリーを守るための組織。
「今までは屋敷の外でだけ守らせていたんだが、敵は内にいたということだな・・・」
眉を寄せて顔を顰めているサルジャンは、笑いこそしなかったがユートリーを安心させるように口角を上げてみせると
「大丈夫だ。私と父上が守ってやる。だが暗部のことは母上も知らないことだから、父上と私と三人だけの秘密にしなければいけないよ」
ユートリーが異もなく頷いたのを見て、サルジャンは小さな頃のように頭を撫でてやった。
「水は水差しを使わず、毎回蛇口から汲む。蛇口に毒を塗られるかもしれないから、しばらく水を流して蛇口を洗ってからだ。誰かが入れた水差しの水は、毎回調べさせるから入れ替えて隠しておいて。
食事は食堂より部屋のほうがいい。厨房の者の調査が終わるまで・・・いや、私か暗部の者が外で調達してくる物を食べるんだ。屋敷の者が運んできた物も、水と同じように食べずに隠しておくこと。いいね。
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