【完結】時戻り令嬢は復讐する

やまぐちこはる

文字の大きさ
8 / 80
第1章

第8話 兄動く

 ジュラン・リーテ子爵令息はサルジャンの乳兄弟で、侍従の中でももっとも信用されている。
 よく見れば貴族らしい整った顔立ちだが、これといって印象を残さないというか特徴のない茶目茶髪で、影のようにサルジャンのそばに控えている。サルジャンは彼となら気のおけないおしゃべりを楽しむこともでき、公私に渡り次期侯爵を支えていた。

「ジュラン、ちょっと入ってくれ」

 ユートリーの部屋の前にいたジュランは、呼ばれるままに部屋へ踏み込んだ。

「ユートリー様はいかがですか?」
「今は目覚めているが問題が起きた、内密で対処が必要だ」

 サルジャンのいつにない真剣な顔と小さな声に、ジュランは気を引き締める。

「詳しいことは中で話す」

 そう言って、部屋へ入るよう目配せで促す。

「畏まりました」

 そう答えたジュランだが、屋敷の中だというのに何が起きているのかと頭をフル回転させ、考え込む。

 ユートリーの部屋の扉の内側に立たされた。

「外の気配を探っていてくれ。ユートリー、タラを呼んで」


 兄の求めに応じ、ユートリーは侍女を呼ぶベルを何度か鳴らすと、軽く小さな足音が近づいて来る。


 コンコン

「お呼びでしょうか」
「入って」

 タラが主の部屋の扉を開けるとすぐ目の前にジュランが、そしてユートリーのそばにサルジャンがいて驚いた。

「どうなさいました?」

 サルジャンがしーっと唇に人差し指を当て、ジュランに鍵をかけるようジェスチャーしてみせる。
 カチャリと鍵がかかる音を確認したサルジャンは、人差し指を唇に当てたままで侍女と侍従を手招きした。

「ふたりとも心して聞いてくれ。今から話すことは許可があるまで絶対に口外してはならない」





「トリーが誰かに薬を盛られた」
「「えっ!」」

 驚きすぎて、大きな声が漏れたタラに。

「しっ!」

 サルジャンは、顔を顰めて注意した。

「それってど、毒ですか?やだっ!」

 まだ入れられた物が毒と特定されていないため、敢えて薬と言ったが、タラは当然のように毒だと捉えてサルジャンに訊ねた。

「そんな、どうしてユートリー様が?」

 青褪めたタラの手は小さく震えている。

「理由はわからんが、ナイジェルス殿下の事故と無関係とは言えないだろう」
「犯人が・・・せめてもの情け、ふたりともあの世に送ってやると言っていたのよ」

 ユートリーが付け加えた。

「それを聞いたのですか?犯人が誰かはおわかりにならない?」

 ジュランは慎重に、誰よりも声を潜めて訊ねる。

「ええ、知らない者だったわ。あともうひとりいるのよ、どちらも女性だということしかわからないわ」
「屋敷に敵が少なくとも女二人・・・。この件を知っているのは他には?」

 ジュランの問いにサルジャンが自分たちのみであること、これから父に報告して暗部に護衛させることを説明した。


「今すぐ父上に報告してくるから、ジュランはタラとユートリーのそばについていてくれ」
感想 9

あなたにおすすめの小説

令嬢たちの華麗なる断罪 ~婚約破棄は、こちらから~

櫻井みこと
恋愛
婚約者である令嬢たちを差し置いて、ひとりの女性に夢中になっている婚約者たち。 その女性はあまりにも常識知らずだったから、少し注意をしていただけなのに、嫉妬して彼女をいじめていると言いがかりをつけられる。 どうして政略結婚の相手に、嫉妬などしなければならないのでしょう。 呆れた令嬢たちは、ひそかに婚約破棄の準備を進めていた。 ※期間限定で再公開しました。

もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない

もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。 ……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。 ※AI学習禁止・無断転載禁止・無断翻訳禁止・無断朗読禁止

病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで

あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。 怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。 ……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。 *** 『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』  

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

死に戻りの悪役令嬢は、今世は復讐を完遂する。

乞食
恋愛
メディチ家の公爵令嬢プリシラは、かつて誰からも愛される少女だった。しかし、数年前のある事件をきっかけに周囲の人間に虐げられるようになってしまった。 唯一の心の支えは、プリシラを慕う義妹であるロザリーだけ。 だがある日、プリシラは異母妹を苛めていた罪で断罪されてしまう。 プリシラは処刑の日の前日、牢屋を訪れたロザリーに無実の証言を願い出るが、彼女は高らかに笑いながらこう言った。 「ぜーんぶ私が仕組んだことよ!!」 唯一信頼していた義妹に裏切られていたことを知り、プリシラは深い悲しみのまま処刑された。 ──はずだった。 目が覚めるとプリシラは、三年前のロザリーがメディチ家に引き取られる前日に、なぜか時間が巻き戻っていて──。 逆行した世界で、プリシラは義妹と、自分を虐げていた人々に復讐することを誓う。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

【完結済み】私達はあなたを決して許しません

asami
恋愛
婚約破棄された令嬢たちがそれぞれに彼女らなりの復讐していくオムニバスストーリーです