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第1章
第9話 影の男
ユートリーを安心させるように頷いて見せると、サルジャンは父の元に向かった。
「コンコンコンコンッ!」
苛立ちが短い時間に何度も叩かれるノックの音に現れているようだ。
中から執事のスチューが扉を開けた。
「急ぎ父上に報告がある」
すっと身を引いたスチューがマーカスに確認を取り、サルジャンを通すと、迷わずマーカスのそばに向かう。
「父上、人払いをお願いします」
「スチューもか?」
「あ、スチューには居てもらうほうが」
「では」
執務室にいた文官たちに休憩を促して部屋から出すと、スチューが執務室の中の声が外にもれないよう控えの間に鍵をかけて、振り向いた。
「大変なことが起こりました」
サルジャンはユートリーから聞いたことを説明し、毒と思われる物の分析はまだできていないが、女の言葉からほぼ間違いないと思われると告げた。
「な・・んだと?トリーを害そうと?一体誰がそんなことを」
「それがトリーも知らない者だと」
「女の使用人でトリーが知らない?身上調査はきちんとしているはずだが・・・鼠が入り込んでいたとは」
「もちろんそれはわかっていますが。それを確認するよりまず先にトリーを守らねば!しかし表立った護衛では逃げられてしまうかもしれせん。敢えて隙を見せるために暗部の者をつけてもらいたいのです」
「そうだな。暗部にはトリーの護衛の他、使用人の身許調査をやり直させることと、スチューも、使用人たちの部屋を密かに調べてくれ。すぐニイズを呼べ」
「畏まりました」
ニイズ・バルクこそソイスト侯爵家の暗部を司る者で、普段は庭師として草むしりや植木の剪定などをして見せている。
もちろんそれも本職顔負けの腕前だ。庭師や料理人なら比較的容易く貴族の家に潜入できるので、暗部に就くような者の隠れ蓑にちょうど良く、ちゃんと庭師に弟子入りし修業も済ませていた。
「旦那様、御用でごぜえますか?」
ろくに挨拶もせずに一際大きく、また少し不躾な様にも聞こえるようニイズが声を響かせる。
本当は男爵家の次男だが、わざと大袈裟に訛った話し方で愚鈍な庭師を演じているのだ。
「気分を変えたいから、庭の作り変えでもしようかと思うんだが」
マーカスも廊下まで聞こえるような、不自然なほど大きな声で似非の用件を伝えると、
「へえ、かしこまりました。どんな風にお変えになりたいんで?」
ぺこぺこしながら、執務室に入って行く。
執務室の前を通り過ぎた者もいたが、ふたりの声がやたらと大きいくらいで、いろいろと物憂いこの頃だから侯爵様が庭に花でも植えたくなったのかくらいにしか印象は残さなかった。
「コンコンコンコンッ!」
苛立ちが短い時間に何度も叩かれるノックの音に現れているようだ。
中から執事のスチューが扉を開けた。
「急ぎ父上に報告がある」
すっと身を引いたスチューがマーカスに確認を取り、サルジャンを通すと、迷わずマーカスのそばに向かう。
「父上、人払いをお願いします」
「スチューもか?」
「あ、スチューには居てもらうほうが」
「では」
執務室にいた文官たちに休憩を促して部屋から出すと、スチューが執務室の中の声が外にもれないよう控えの間に鍵をかけて、振り向いた。
「大変なことが起こりました」
サルジャンはユートリーから聞いたことを説明し、毒と思われる物の分析はまだできていないが、女の言葉からほぼ間違いないと思われると告げた。
「な・・んだと?トリーを害そうと?一体誰がそんなことを」
「それがトリーも知らない者だと」
「女の使用人でトリーが知らない?身上調査はきちんとしているはずだが・・・鼠が入り込んでいたとは」
「もちろんそれはわかっていますが。それを確認するよりまず先にトリーを守らねば!しかし表立った護衛では逃げられてしまうかもしれせん。敢えて隙を見せるために暗部の者をつけてもらいたいのです」
「そうだな。暗部にはトリーの護衛の他、使用人の身許調査をやり直させることと、スチューも、使用人たちの部屋を密かに調べてくれ。すぐニイズを呼べ」
「畏まりました」
ニイズ・バルクこそソイスト侯爵家の暗部を司る者で、普段は庭師として草むしりや植木の剪定などをして見せている。
もちろんそれも本職顔負けの腕前だ。庭師や料理人なら比較的容易く貴族の家に潜入できるので、暗部に就くような者の隠れ蓑にちょうど良く、ちゃんと庭師に弟子入りし修業も済ませていた。
「旦那様、御用でごぜえますか?」
ろくに挨拶もせずに一際大きく、また少し不躾な様にも聞こえるようニイズが声を響かせる。
本当は男爵家の次男だが、わざと大袈裟に訛った話し方で愚鈍な庭師を演じているのだ。
「気分を変えたいから、庭の作り変えでもしようかと思うんだが」
マーカスも廊下まで聞こえるような、不自然なほど大きな声で似非の用件を伝えると、
「へえ、かしこまりました。どんな風にお変えになりたいんで?」
ぺこぺこしながら、執務室に入って行く。
執務室の前を通り過ぎた者もいたが、ふたりの声がやたらと大きいくらいで、いろいろと物憂いこの頃だから侯爵様が庭に花でも植えたくなったのかくらいにしか印象は残さなかった。
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