15 / 80
第1章
第15話 鑑定結果
しおりを挟む
「待たせたな」
「いや、そうでもないぞ。ん?大丈夫か?顔色がすぐれないようだが」
「ああ、いろいろとありすぎたよ。カール、これから父上のところに一緒に行ってくれ。その前に白か黒かだけは聞いておきたい」
薬物鑑定をしてくれたのは、アカデミーの学友カール・ロイナンである。スキップして卒業したあと、薬物や毒物を専門とした学者になってアカデミーで研究を続けている。
「うん、これは真っ黒だ。通称「残酷な毒」と言う奴でな」
「残酷?命を奪う以上に残酷なことなどなかろう?」
「ん。遅効性の神経毒でな」
「ちこうせい?ああ、トリーも犯人がゆっくり効くと言ったのを聞いたそうだが、そういうことか?」
「ああ。飲んですぐではなく、遅れて症状が出る」
「ということは、犯人がいつ飲ませたかわかりにくくなる?」
「ああ、そういうことだな」
「それで何が残酷なんだ?」
カールは嫌な顔をした。
「これは、生きたまま体の機能をどんどんと奪うんだ。声は出なくなり、指をほんの少し動かすことも瞬きもできなくなる。傍から見ると、まるで高みに昇ったように見えるが、かろうじて呼吸をしているから生きているとわかる。しかし、食事も取れずにその状態が続くので、数日で脈も呼吸も弱まり、この毒に害されたと誰かが気づいて解毒ができなければそのまま死んでしまうんだ」
サルジャンも不快な顔を浮かべた。
「残酷な毒と言われているのは、体がなんの反応もしなくても、意識は最後までしっかりとしていて、耳も聞こえているらしいから。死に近づいているのに、家族の嘆きも聞こえているのに、助けを呼ぶこともできないんだよ」
カールはぶるっと身を震わせた。
「そんな症状で死に至ると、なぜわかったんだ?」
「助かった者がごく僅かだがいるんだよ
。学者の身内でな、倒れたときに、当てずっぽうに片っ端から薬を飲ませて、偶然助かった者たちからこの毒の恐ろしさ、残酷さが知れた。毒に害された時、たまたま毒を専門にしている医師が診察すれば間に合うこともあるが、治療が遅ければ助からない」
そんな毒をユートリーに飲ませようとした者がこの屋敷にいると思うと、サルジャンは怒りで今すぐ斬りつけてしまいたくなったが。ナイジェルスを襲った犯人とぐるだとしたら、すべて一網打尽にするまでは堪えねばならない。
「カール、今の話を我が父にも頼みたい。そしてこの件が片付くまでは他言無用にしてほしい」
「もちろん。私とサルジャンの仲と言いたいが、今実験費用が足りなくて困っているところなんだ」
「もちろん、報酬は弾むぞ」
疑心暗鬼のサルジャンには、親しい仲だから信じろと言われるより、金を貰ったから口を閉じてやると言われる方がずっと信用できる気がした。
「じゃあ、ともに父の執務室に行ってくれ。途中で誰かに声をかけられても何も答えずに。私が対応するから」
「いや、そうでもないぞ。ん?大丈夫か?顔色がすぐれないようだが」
「ああ、いろいろとありすぎたよ。カール、これから父上のところに一緒に行ってくれ。その前に白か黒かだけは聞いておきたい」
薬物鑑定をしてくれたのは、アカデミーの学友カール・ロイナンである。スキップして卒業したあと、薬物や毒物を専門とした学者になってアカデミーで研究を続けている。
「うん、これは真っ黒だ。通称「残酷な毒」と言う奴でな」
「残酷?命を奪う以上に残酷なことなどなかろう?」
「ん。遅効性の神経毒でな」
「ちこうせい?ああ、トリーも犯人がゆっくり効くと言ったのを聞いたそうだが、そういうことか?」
「ああ。飲んですぐではなく、遅れて症状が出る」
「ということは、犯人がいつ飲ませたかわかりにくくなる?」
「ああ、そういうことだな」
「それで何が残酷なんだ?」
カールは嫌な顔をした。
「これは、生きたまま体の機能をどんどんと奪うんだ。声は出なくなり、指をほんの少し動かすことも瞬きもできなくなる。傍から見ると、まるで高みに昇ったように見えるが、かろうじて呼吸をしているから生きているとわかる。しかし、食事も取れずにその状態が続くので、数日で脈も呼吸も弱まり、この毒に害されたと誰かが気づいて解毒ができなければそのまま死んでしまうんだ」
サルジャンも不快な顔を浮かべた。
「残酷な毒と言われているのは、体がなんの反応もしなくても、意識は最後までしっかりとしていて、耳も聞こえているらしいから。死に近づいているのに、家族の嘆きも聞こえているのに、助けを呼ぶこともできないんだよ」
カールはぶるっと身を震わせた。
「そんな症状で死に至ると、なぜわかったんだ?」
「助かった者がごく僅かだがいるんだよ
。学者の身内でな、倒れたときに、当てずっぽうに片っ端から薬を飲ませて、偶然助かった者たちからこの毒の恐ろしさ、残酷さが知れた。毒に害された時、たまたま毒を専門にしている医師が診察すれば間に合うこともあるが、治療が遅ければ助からない」
そんな毒をユートリーに飲ませようとした者がこの屋敷にいると思うと、サルジャンは怒りで今すぐ斬りつけてしまいたくなったが。ナイジェルスを襲った犯人とぐるだとしたら、すべて一網打尽にするまでは堪えねばならない。
「カール、今の話を我が父にも頼みたい。そしてこの件が片付くまでは他言無用にしてほしい」
「もちろん。私とサルジャンの仲と言いたいが、今実験費用が足りなくて困っているところなんだ」
「もちろん、報酬は弾むぞ」
疑心暗鬼のサルジャンには、親しい仲だから信じろと言われるより、金を貰ったから口を閉じてやると言われる方がずっと信用できる気がした。
「じゃあ、ともに父の執務室に行ってくれ。途中で誰かに声をかけられても何も答えずに。私が対応するから」
36
あなたにおすすめの小説
魔法のせいだから許して?
ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。
どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。
──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。
しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり……
魔法のせいなら許せる?
基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。
さようなら、私の愛したあなた。
希猫 ゆうみ
恋愛
オースルンド伯爵家の令嬢カタリーナは、幼馴染であるロヴネル伯爵家の令息ステファンを心から愛していた。いつか結婚するものと信じて生きてきた。
ところが、ステファンは爵位継承と同時にカールシュテイン侯爵家の令嬢ロヴィーサとの婚約を発表。
「君の恋心には気づいていた。だが、私は違うんだ。さようなら、カタリーナ」
ステファンとの未来を失い茫然自失のカタリーナに接近してきたのは、社交界で知り合ったドグラス。
ドグラスは王族に連なるノルディーン公爵の末子でありマルムフォーシュ伯爵でもある超上流貴族だったが、不埒な噂の絶えない人物だった。
「あなたと遊ぶほど落ちぶれてはいません」
凛とした態度を崩さないカタリーナに、ドグラスがある秘密を打ち明ける。
なんとドグラスは王家の密偵であり、偽装として遊び人のように振舞っているのだという。
「俺に協力してくれたら、ロヴィーサ嬢の真実を教えてあげよう」
こうして密偵助手となったカタリーナは、幾つかの真実に触れながら本当の愛に辿り着く。
真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください
LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。
伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。
真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。
(他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…)
(1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)
もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない
もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。
……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。
婚約破棄されました。
まるねこ
恋愛
私、ルナ・ブラウン。歳は本日14歳となったところですわ。家族は父ラスク・ブラウン公爵と母オリヴィエ、そして3つ上の兄、アーロの4人家族。
本日、私の14歳の誕生日のお祝いと、婚約者のお披露目会を兼ねたパーティーの場でそれは起こりました。
ド定番的な婚約破棄からの恋愛物です。
習作なので短めの話となります。
恋愛大賞に応募してみました。内容は変わっていませんが、少し文を整えています。
ふんわり設定で気軽に読んでいただければ幸いです。
Copyright©︎2020-まるねこ
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
【完結】もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
あまぞらりゅう
恋愛
キアラ・リグリーア伯爵令嬢は、同じ人生を繰り返していた。
彼女の最期はいつも処刑台の上。
それは婚約者のダミアーノ・ヴィッツィオ公爵令息の陰謀だった。
死んだら、また過去に戻ってくる。
その度に彼女は婚約者のことを激しく憎んで、もう愛さないと強く胸に誓っていた。
でも、何度回帰しても彼女は彼を愛してしまって、最後は必ず破滅を迎えてしまう。
キアラはもうダミアーノを愛したくなかったし、愛なんてものは信じていなかった。
――そして七回目の人生で、彼女は真実を知る。
★元サヤではありません!(ヒーローは別にいます!)
★不快になるような残酷な描写があります!
★他サイト様にも投稿しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる