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第6話
「此度は急な願いを聞いてくださり、誠に有り難く存じます」
「ああ、よい。堅苦しいことは言わずにな」
「私の愚息・・・」
「うむ、トーソルド・ロイリーのことかね」
「はい。既に家を独立した者ではございますが、お恥ずかしながらあまりに娶った妻を蔑ろにするため、俸給を本人ではなく屋敷宛にお支払い頂けないかとご相談に上がりました」
ダリルはもっとどろどろした話を待ち受けていたので、カクっと力が抜けたが、赤い顔で所在なさげに胸中を吐露するジャブリックはさぞ恥ずかしい思いを堪えていることだろうと気の毒になり、力を貸してやりたくなった。
「今はどうなっているんだね?」
「トーソルドに支払われ、それをトーソルド自身が屋敷に入れておりましたが、結婚式の前から使用人の俸給や食費など、かかった分しか金を入れなくなったそうで。執事によると嫁に使わせたくないとすべて自分で管理しているようなのでございます」
─なんとっ!なんと小さな男なのだ─
茶を口にしていたダリルは吹き出しそうになったが、あまりにジャブリックが小さく肩を窄めていたため、なんとか堪えてみせた。
「は、はあ。誠にお恥ずかしいことで」
「いや、お父上はそれを恥と弁えられておるし、そのように教えもされたことだろう?」
「はい、勿論でございます」
「では本人の問題であろう。・・・ということはしかし、今までと同じように奴に渡していたら、奥方の分は出さない可能性があるということだな」
ダリルは騎士道もへったくれもない呆れた考えを貫くトーソルドには俸給を渡さないことを即座に決定し、何かを書付ける。
それを見たジャブリックは深く頭を下げて、迎えた恩人の孫娘の生活を経済的に守ることができたと礼を告げた。
「此度は格別のご配慮を賜り、感謝申し上げます」
もっと笑える話かと浮かれて招いたロイリー伯爵の打ち明け話を、重い気分で聞かされたダリルはひとりになると呟いた。
「ったく、ろくなもんじゃないな。いくらいやいや結婚したと言えど妻の生活費すら出したくないなど騎士の風上にも置けん!」
トーソルドの上司である分隊長トイムに事情を話し、これ以上トーソルドが風紀を乱すことがあれば何らかの処分を行うように指示書を出す。
「こういう輩は問題を起こしても口頭処分くらいでは反省しないだろう。まあ今でも既に問題が多いからな」
こうして本人は知らないうち、騎士団では急にトーソルドへの訓練や視線が厳しくなったのだった。
「ああ、よい。堅苦しいことは言わずにな」
「私の愚息・・・」
「うむ、トーソルド・ロイリーのことかね」
「はい。既に家を独立した者ではございますが、お恥ずかしながらあまりに娶った妻を蔑ろにするため、俸給を本人ではなく屋敷宛にお支払い頂けないかとご相談に上がりました」
ダリルはもっとどろどろした話を待ち受けていたので、カクっと力が抜けたが、赤い顔で所在なさげに胸中を吐露するジャブリックはさぞ恥ずかしい思いを堪えていることだろうと気の毒になり、力を貸してやりたくなった。
「今はどうなっているんだね?」
「トーソルドに支払われ、それをトーソルド自身が屋敷に入れておりましたが、結婚式の前から使用人の俸給や食費など、かかった分しか金を入れなくなったそうで。執事によると嫁に使わせたくないとすべて自分で管理しているようなのでございます」
─なんとっ!なんと小さな男なのだ─
茶を口にしていたダリルは吹き出しそうになったが、あまりにジャブリックが小さく肩を窄めていたため、なんとか堪えてみせた。
「は、はあ。誠にお恥ずかしいことで」
「いや、お父上はそれを恥と弁えられておるし、そのように教えもされたことだろう?」
「はい、勿論でございます」
「では本人の問題であろう。・・・ということはしかし、今までと同じように奴に渡していたら、奥方の分は出さない可能性があるということだな」
ダリルは騎士道もへったくれもない呆れた考えを貫くトーソルドには俸給を渡さないことを即座に決定し、何かを書付ける。
それを見たジャブリックは深く頭を下げて、迎えた恩人の孫娘の生活を経済的に守ることができたと礼を告げた。
「此度は格別のご配慮を賜り、感謝申し上げます」
もっと笑える話かと浮かれて招いたロイリー伯爵の打ち明け話を、重い気分で聞かされたダリルはひとりになると呟いた。
「ったく、ろくなもんじゃないな。いくらいやいや結婚したと言えど妻の生活費すら出したくないなど騎士の風上にも置けん!」
トーソルドの上司である分隊長トイムに事情を話し、これ以上トーソルドが風紀を乱すことがあれば何らかの処分を行うように指示書を出す。
「こういう輩は問題を起こしても口頭処分くらいでは反省しないだろう。まあ今でも既に問題が多いからな」
こうして本人は知らないうち、騎士団では急にトーソルドへの訓練や視線が厳しくなったのだった。
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