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第36話
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ジュールとアニエラを見ていたジャブリックが、唐突に口を開く。
テューリンは気配に気づき、ジャブリックを止めようとしたのだが。
「ヨヌク子爵家で聞いたのだが、アニエラは昔ジュールに憧れていたというのは本当かね」
予想外のネタ振りに、アニエラと何故かジュールがボォッと発火した。
「ひっ、お、お義父様ってば、なな、何を仰るんですかっ」
慌てまくりのアニエラがなんとも可愛らしく、テューリンは父が言ったことも満更ではないかもしれないと、ふと思った。
「な、何言ってるんですよ父上!こんなうら若きアニエラが私など、憧れるわけがありませんよ」
ジュールがアニエラに同調したのだが、するとアニエラは面白くない顔をする。
「なぜそんな卑下なさるようなことを?ジュール様はいつでもお優しくて気遣いも素晴らしくて、皆のあこがれですわっ!」
頬を染めたまま、臆面もなくさらりと言ったアニエラに、ジュールの方が恥ずかしそうに俯くと。
トリアはにやりとアニエラを見つめ、テューリンを肘でごりごり突いた。
『行くわよ!』と声にならない言葉を、口だけ動かしたトリアに袖を引かれてテューリンもそっと席を離れる。その時トリアはジャブリックを回収することも忘れなかった。
トリアに連れられた父子は、そのまま執務室に行くとハーッと我慢した息を吐く。
「お義父さま!ご存知でしたの?」
「いやあ、先日ヨヌク子爵家で夫人から聞くまではまったく知らんかった」
「アニエラ様はジュール様が?」
「待てよトリア!アニエラがジュールを好きだったのはこどもの頃のことと聞いたぞ」
すると怪訝気なテューリンとは違い、トリアはもじもじっと身を捩り、パァっと笑った。
「まあステキーっ!それって初恋でしょう?ねえお義父様、ジュール様も婚約者の方が亡くなられてあと少しで喪が明けますし、アニエラ様は結婚自体がないものとなりましたから、これってすごく良いご縁じゃありませんこと?」
テューリンはトリアがこんなに盛り上がるとは思わなかったので、ひどく驚いていたが。
「おお、トリアもそう思うか!私もそうなったらいいなあと思うておってな」
父と嫁が顔を寄せて、アニエラとジュールをどうくっつけたものかニヤつきながら相談し始めたのを、複雑な気持ちで見つめる次期ロイリー伯爵であった。
テューリンは気配に気づき、ジャブリックを止めようとしたのだが。
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トリアに連れられた父子は、そのまま執務室に行くとハーッと我慢した息を吐く。
「お義父さま!ご存知でしたの?」
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「アニエラ様はジュール様が?」
「待てよトリア!アニエラがジュールを好きだったのはこどもの頃のことと聞いたぞ」
すると怪訝気なテューリンとは違い、トリアはもじもじっと身を捩り、パァっと笑った。
「まあステキーっ!それって初恋でしょう?ねえお義父様、ジュール様も婚約者の方が亡くなられてあと少しで喪が明けますし、アニエラ様は結婚自体がないものとなりましたから、これってすごく良いご縁じゃありませんこと?」
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