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7話
モニカの案内で裏通りの小さな店に辿り着いたサラが、窓から覗くと店内は薄っすら暗い。
「本当にここ?」
「本当にここですよ、穴場なんです」
ニッと笑うモニカを信用して、スイーツショップとしてはいかにも陰気臭い扉を開けた。
「いらっしゃいませ」
清潔に身なりを整えた・・・おじいちゃんがショーケースの奥に立ち、にこりともせずに言う。
サラはモニカに何か言いたそうな顔をしたが、モニカはにこにこして頷くだけ。
「サラ様、私のおすすめを頼んでもよろしいでしょうか」
「あ、ええ、もちろん。そうして」
モニカが何か頼んでいたが、店内の暗さとは対照的なショーケースの中や、奥に垣間見える掃き清められた厨房に気づいたサラはそちらに気を取られていた。
ふと見るとモニカが支払いをしようとしている。
「私が支払うわ」
ささっとコインを出す。
「おいくら?」
「3000シルでございます」
味はわからないが、トレーに載せられたケーキは常識的な大きさで二人分のティーセットだから破格の安さだ。
前の二口で食べ終わるケーキと、一息で飲み終えるエスプレッソカップのように小さなティーカップのセットで二人で8000シルもした前の店とは比べようもない。
ちなみに一番最初のパイの店は、二人分で4000シルだったので、ここがいかに安いかがわかる。
「サラ様、奥のテーブルでお待ちください。お持ちしますから」
モニカが勧めてくれたので着席して待っていると、店のトレーにカップと白いクリームでデコレートされたフルーツケーキが運ばれてきた。
「美味しそう!」
「ええ、とっても美味しいんです。ささ、どうぞ」
渡されたフォークとナイフでケーキを一口分取り分け、口に入れる。
「んんっ!ほんとにおいっしい!」
「ですよねっ!?ああよかった!サラ様のお口にあって」
「とっても美味しいわ!クリームが全然違う」
そう言いながら、あっという間に食べ終わってしまう。
「お茶も3杯目になると、お腹もいっぱいになってしまうわね」
このケーキをもっと食べたかった。
しかしもう入りそうにないと、未練を浮かべるサラに
「お土産に買って行かれたらどうでしょう?奥様もお喜びになられますよ」
モニカが勧めるのだが、焼き菓子ならともかく、こんなに柔らかいクリームのケーキを持ち帰れるだろうか?
サラは店主に聞いてみることにした。
「あの、とっても美味しかったのでできれば家族に土産として持ち帰りたいのですが、クリームのケーキも大丈夫でしょうか?母にどうしても食べさせたくて」
「持ち帰りたいのかね、これを?・・・時間はどれくらい?」
「時間?」
「帰るまでどれくらいかかるんだね?」
「馬車で一時間ほど」
「ぎりぎりというところだな」
「ぎりぎりですか?」
「まっすぐ帰るかね?」
サラとモニカは一度顔を見合わせて頷く。
考え込んでいた店の主が焼き菓子用の深箱をサイズを変えて二重にし、ケーキを入れると、小さなグラスに氷をいれて箱と箱の隙間に詰め込み、手渡してくれた。
「気休めだが、多少はもちが良くなるだろう。それではよそ見をせず傾けずに急いで帰りなさい」
モニカが箱を受け取り、サラが扉を開けてやる。店の主に軽く会釈し、待たせている馬車へと二人で戻る。
「ケーキ、持ち帰りできたんですね!」
うれしそうなモニカに対し、
「でも想定外のことだったと思うわ。このケーキは冷やしていないとダメな理由があるみたい」
そういえば、店は北を向いて一見陰気臭いが、そのおかげで室内はひんやりと涼しく、そして塵ひとつないほど清潔に掃き清めている。わざとそうしていたのかもしれないと思い当たると、俄然ケーキとあの主に興味が湧いた。
「お母さま、お茶にしませんこと?ケーキを買いましたの」
メーリア伯爵家ではパティシエがいない。
昔はいたが、いろいろ経費を削減した際に砂糖が好きなように使えないのではと自ら辞めていったのだ。
それ以来、サラが料理長と一緒に、屋敷の庭師が採ってきた蜂蜜を使って焼き菓子を作るか、フェルナンドの屋敷に行った際にイーデス子爵夫人が土産に持たせてくれた菓子くらいしか口に入れる機会はなくなってっていたので、ネル夫人にはかなりひさしぶりの本格的な甘味になる。
愛娘からの誘いにうれしそうにぱあっと笑った。
白いクリームがたっぷりと、美しくデコレーションされたフルーツケーキ。
テーブルについたネルは、こどものような目でケーキを見つめている。
「あまり見たことのないケーキね!」
パウンドケーキやバタークリームが塗られたスポンジケーキはあるのだが、主にクリームをサンドする部分に塗って二枚のスポンジを接着させるために使う。
クリームの間に挟むものもフルーツジャムだ。傷みやすい生の果実を使うのは珍しい。
期待に満ちた目がじっくりとケーキの断面を観察し終えると一口。
「これ美味しいわっ!すばらしくてよ」
ネルの我を忘れた声が響いた。
「本当にここ?」
「本当にここですよ、穴場なんです」
ニッと笑うモニカを信用して、スイーツショップとしてはいかにも陰気臭い扉を開けた。
「いらっしゃいませ」
清潔に身なりを整えた・・・おじいちゃんがショーケースの奥に立ち、にこりともせずに言う。
サラはモニカに何か言いたそうな顔をしたが、モニカはにこにこして頷くだけ。
「サラ様、私のおすすめを頼んでもよろしいでしょうか」
「あ、ええ、もちろん。そうして」
モニカが何か頼んでいたが、店内の暗さとは対照的なショーケースの中や、奥に垣間見える掃き清められた厨房に気づいたサラはそちらに気を取られていた。
ふと見るとモニカが支払いをしようとしている。
「私が支払うわ」
ささっとコインを出す。
「おいくら?」
「3000シルでございます」
味はわからないが、トレーに載せられたケーキは常識的な大きさで二人分のティーセットだから破格の安さだ。
前の二口で食べ終わるケーキと、一息で飲み終えるエスプレッソカップのように小さなティーカップのセットで二人で8000シルもした前の店とは比べようもない。
ちなみに一番最初のパイの店は、二人分で4000シルだったので、ここがいかに安いかがわかる。
「サラ様、奥のテーブルでお待ちください。お持ちしますから」
モニカが勧めてくれたので着席して待っていると、店のトレーにカップと白いクリームでデコレートされたフルーツケーキが運ばれてきた。
「美味しそう!」
「ええ、とっても美味しいんです。ささ、どうぞ」
渡されたフォークとナイフでケーキを一口分取り分け、口に入れる。
「んんっ!ほんとにおいっしい!」
「ですよねっ!?ああよかった!サラ様のお口にあって」
「とっても美味しいわ!クリームが全然違う」
そう言いながら、あっという間に食べ終わってしまう。
「お茶も3杯目になると、お腹もいっぱいになってしまうわね」
このケーキをもっと食べたかった。
しかしもう入りそうにないと、未練を浮かべるサラに
「お土産に買って行かれたらどうでしょう?奥様もお喜びになられますよ」
モニカが勧めるのだが、焼き菓子ならともかく、こんなに柔らかいクリームのケーキを持ち帰れるだろうか?
サラは店主に聞いてみることにした。
「あの、とっても美味しかったのでできれば家族に土産として持ち帰りたいのですが、クリームのケーキも大丈夫でしょうか?母にどうしても食べさせたくて」
「持ち帰りたいのかね、これを?・・・時間はどれくらい?」
「時間?」
「帰るまでどれくらいかかるんだね?」
「馬車で一時間ほど」
「ぎりぎりというところだな」
「ぎりぎりですか?」
「まっすぐ帰るかね?」
サラとモニカは一度顔を見合わせて頷く。
考え込んでいた店の主が焼き菓子用の深箱をサイズを変えて二重にし、ケーキを入れると、小さなグラスに氷をいれて箱と箱の隙間に詰め込み、手渡してくれた。
「気休めだが、多少はもちが良くなるだろう。それではよそ見をせず傾けずに急いで帰りなさい」
モニカが箱を受け取り、サラが扉を開けてやる。店の主に軽く会釈し、待たせている馬車へと二人で戻る。
「ケーキ、持ち帰りできたんですね!」
うれしそうなモニカに対し、
「でも想定外のことだったと思うわ。このケーキは冷やしていないとダメな理由があるみたい」
そういえば、店は北を向いて一見陰気臭いが、そのおかげで室内はひんやりと涼しく、そして塵ひとつないほど清潔に掃き清めている。わざとそうしていたのかもしれないと思い当たると、俄然ケーキとあの主に興味が湧いた。
「お母さま、お茶にしませんこと?ケーキを買いましたの」
メーリア伯爵家ではパティシエがいない。
昔はいたが、いろいろ経費を削減した際に砂糖が好きなように使えないのではと自ら辞めていったのだ。
それ以来、サラが料理長と一緒に、屋敷の庭師が採ってきた蜂蜜を使って焼き菓子を作るか、フェルナンドの屋敷に行った際にイーデス子爵夫人が土産に持たせてくれた菓子くらいしか口に入れる機会はなくなってっていたので、ネル夫人にはかなりひさしぶりの本格的な甘味になる。
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白いクリームがたっぷりと、美しくデコレーションされたフルーツケーキ。
テーブルについたネルは、こどものような目でケーキを見つめている。
「あまり見たことのないケーキね!」
パウンドケーキやバタークリームが塗られたスポンジケーキはあるのだが、主にクリームをサンドする部分に塗って二枚のスポンジを接着させるために使う。
クリームの間に挟むものもフルーツジャムだ。傷みやすい生の果実を使うのは珍しい。
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