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18話
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「あ、いけない!父に会えますかしら?」
「もちろんですわ、モニカ!師匠のお部屋にご案内を」
メーメの娘ローサをモニカに託し、サラは地下の室の扉を開けに行く。
残された御者が手慣れたふうに氷を下ろしながらエイジャに訊ねた。
「エンデラ様はどうしてお怪我をなさったのですか?」
「氷を地下の室に運ぶときに階段を踏み外したそうですよ」
「なんと!私の気遣いが足りませんで、申し訳ないことをいたしました。あとで私もお詫びに伺わせてください」
十数年に渡り氷を届けていたが、いつも一人で楽々と氷を運ぶため手伝いが必要とは思っていなかった。メーメがそれだけ元気な老人だったとも言えるのだが。
すまなそうに目を伏せた御者に、エイジャは
「いやいや、謝られたりしたらご本人がむしろ気にされるでしょう。気楽なお見舞いにされたほうがよろしいと思いますよ」
やさしく慰めて、また氷を運ぶ手を動かした。
「お父さま!」
「ローサ!来てくれたか、すまなかったな」
「他人様に世話を任せるわけにもいきませんもの」
「侍女はどうした?」
「置いてきましたわよ。子爵家の侍女に頼むわけにも参りませんから。まったく年甲斐もなく何をされていらっしゃるのやら。そろそろ引退なさいとあれほど言っておりましたのに」
「えっ!引退?それは困りますわ」
そこだけを聞いたサラがびっくりして部屋に飛び込んで来る。
「いや、しないからな私は」
メーメはすぐ否定したが。
「療養の間だけでも屋敷にいらして下さらないと、こちらのお嬢様たちにご迷惑をおかけしますわよ」
ローサも引かずにサラたちを引き合いにするので
「いえ、大丈夫ですわ。男手もございますし、ご安心なさって私どもに師匠をお預け下さいというかですね、お預け頂かねば店が立行きません」
「あら、この足では仕事はできませんわよ?」
不審そうにローサが訊ねると
「ええ、もちろん師匠の仕事はおやすみです。ただ私が困ったときに指導してくださらないと困りますもの」
「ケーキはサラも作れるのだよ」
サラの言葉に被せるようにメーメが話すと、ローサのほうが驚いたようだ。
「師匠って、本当に教えているの?お父さまが?」
「はいっ!師匠がいなければ、何も作れるようにはなりませんでしたわ」
ローサはサラをじっと見つめて、くすっと声を漏らし
「ではせめて杖ついてでも歩けるようになるまで、私がここに泊まりますわ」
異を唱える者は・・・ローサの父エンデラ・メーメただ一人。
「おまえ、ジャリス様はどうするんだ」
「旦那様は侍女侍従がおりますもの。頑固者を連れてこられないときはしばらく滞在してもよいと言われましたし、大丈夫ですわ」
すでにメレンデラ子爵のお墨付きをもらっていると言われて、断りきれなくなったメーメは仕方なくサラに頼む。
「客間を開けてやってくれるかな」
掃除は自分でやるようにとローサに告げ、エイジャに夕食の買い出しを頼んだ。
店でベルが鳴っている。
モニカが向かうと、ザイアがショーケースを覗いていた。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ」
「おや?いつもの方はいらっしゃらないのですね」
てっきりサラが現れると思っていたザイアが、見知らぬモニカに訊ねてしまう。
「サラ様にご用でしょうか?お待ちください」
お客様の申し出と、モニカも対して気にせず一礼して奥に下がり、
「サラ様をお呼びのお客様がいらしております」
それだけ告げた。
店内に戻ったサラは、常連の青年と目が合うと笑顔で挨拶を交わす。
「私にご用と伺いましたが」
サラの言葉にバツの悪そうな顔をした青年が
「申し訳ありません、来てみたら違う方がいらしたので聞いてみただけなのです」
そうペコリと頭を下げた。
モニカの早合点だったようだが、せっかくなのでサラが注文を訊く。
「実は今日のスイーツはすべて私が作りましたの、お気に召していただけるとよろしいのですが」
頬を染めながらそう告げたサラがとても可愛らしく見え、ザイアは思わず上ずった声で
「気に入ります、絶対に!貴女が作ったものを気に入らないわけがない!」
そう、まるで決意表明のように言い切った。
「・・・・・」
サラが目を丸くしたのを見て、今度はザイアが顔を赤らめた。
「す、すみません、ちょっとアレでしたね、どうか、どうか気にせずに。あの、ではいつものジュレとレモンのメレンゲクッキーとチーズケーキとフルーツケーキも入れて」
自分の発言に動転したザイアは並んでいるケーキを片っ端から買い占めて、ふらつきながら店を出て行った。
サラはまだ少しぼんやりしている。
「あの方ずーいぶんたくさん買われましたね」
いつの間にか背後にモニカが佇んでおり、楽しそうに微笑みながらサラの耳元で囁いた。
「あの方、サラ様に想いを寄せられているのではないでしょうか。ふふ」
「もちろんですわ、モニカ!師匠のお部屋にご案内を」
メーメの娘ローサをモニカに託し、サラは地下の室の扉を開けに行く。
残された御者が手慣れたふうに氷を下ろしながらエイジャに訊ねた。
「エンデラ様はどうしてお怪我をなさったのですか?」
「氷を地下の室に運ぶときに階段を踏み外したそうですよ」
「なんと!私の気遣いが足りませんで、申し訳ないことをいたしました。あとで私もお詫びに伺わせてください」
十数年に渡り氷を届けていたが、いつも一人で楽々と氷を運ぶため手伝いが必要とは思っていなかった。メーメがそれだけ元気な老人だったとも言えるのだが。
すまなそうに目を伏せた御者に、エイジャは
「いやいや、謝られたりしたらご本人がむしろ気にされるでしょう。気楽なお見舞いにされたほうがよろしいと思いますよ」
やさしく慰めて、また氷を運ぶ手を動かした。
「お父さま!」
「ローサ!来てくれたか、すまなかったな」
「他人様に世話を任せるわけにもいきませんもの」
「侍女はどうした?」
「置いてきましたわよ。子爵家の侍女に頼むわけにも参りませんから。まったく年甲斐もなく何をされていらっしゃるのやら。そろそろ引退なさいとあれほど言っておりましたのに」
「えっ!引退?それは困りますわ」
そこだけを聞いたサラがびっくりして部屋に飛び込んで来る。
「いや、しないからな私は」
メーメはすぐ否定したが。
「療養の間だけでも屋敷にいらして下さらないと、こちらのお嬢様たちにご迷惑をおかけしますわよ」
ローサも引かずにサラたちを引き合いにするので
「いえ、大丈夫ですわ。男手もございますし、ご安心なさって私どもに師匠をお預け下さいというかですね、お預け頂かねば店が立行きません」
「あら、この足では仕事はできませんわよ?」
不審そうにローサが訊ねると
「ええ、もちろん師匠の仕事はおやすみです。ただ私が困ったときに指導してくださらないと困りますもの」
「ケーキはサラも作れるのだよ」
サラの言葉に被せるようにメーメが話すと、ローサのほうが驚いたようだ。
「師匠って、本当に教えているの?お父さまが?」
「はいっ!師匠がいなければ、何も作れるようにはなりませんでしたわ」
ローサはサラをじっと見つめて、くすっと声を漏らし
「ではせめて杖ついてでも歩けるようになるまで、私がここに泊まりますわ」
異を唱える者は・・・ローサの父エンデラ・メーメただ一人。
「おまえ、ジャリス様はどうするんだ」
「旦那様は侍女侍従がおりますもの。頑固者を連れてこられないときはしばらく滞在してもよいと言われましたし、大丈夫ですわ」
すでにメレンデラ子爵のお墨付きをもらっていると言われて、断りきれなくなったメーメは仕方なくサラに頼む。
「客間を開けてやってくれるかな」
掃除は自分でやるようにとローサに告げ、エイジャに夕食の買い出しを頼んだ。
店でベルが鳴っている。
モニカが向かうと、ザイアがショーケースを覗いていた。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ」
「おや?いつもの方はいらっしゃらないのですね」
てっきりサラが現れると思っていたザイアが、見知らぬモニカに訊ねてしまう。
「サラ様にご用でしょうか?お待ちください」
お客様の申し出と、モニカも対して気にせず一礼して奥に下がり、
「サラ様をお呼びのお客様がいらしております」
それだけ告げた。
店内に戻ったサラは、常連の青年と目が合うと笑顔で挨拶を交わす。
「私にご用と伺いましたが」
サラの言葉にバツの悪そうな顔をした青年が
「申し訳ありません、来てみたら違う方がいらしたので聞いてみただけなのです」
そうペコリと頭を下げた。
モニカの早合点だったようだが、せっかくなのでサラが注文を訊く。
「実は今日のスイーツはすべて私が作りましたの、お気に召していただけるとよろしいのですが」
頬を染めながらそう告げたサラがとても可愛らしく見え、ザイアは思わず上ずった声で
「気に入ります、絶対に!貴女が作ったものを気に入らないわけがない!」
そう、まるで決意表明のように言い切った。
「・・・・・」
サラが目を丸くしたのを見て、今度はザイアが顔を赤らめた。
「す、すみません、ちょっとアレでしたね、どうか、どうか気にせずに。あの、ではいつものジュレとレモンのメレンゲクッキーとチーズケーキとフルーツケーキも入れて」
自分の発言に動転したザイアは並んでいるケーキを片っ端から買い占めて、ふらつきながら店を出て行った。
サラはまだ少しぼんやりしている。
「あの方ずーいぶんたくさん買われましたね」
いつの間にか背後にモニカが佇んでおり、楽しそうに微笑みながらサラの耳元で囁いた。
「あの方、サラ様に想いを寄せられているのではないでしょうか。ふふ」
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