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42話
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チルディはすぐ、近くの馬房で待機していたメーリア家の御者エイジャのところに走り、イーデス子爵家に使いに行くよう頼んだ。
最低限のことのみ聞いたエイジャが馬を駆る。
「メーリア伯爵家御者頭エイジャ・ロリンドルと申します」
その一言でイーデス子爵家の皆は、青天の霹靂とも言える出来事が起きたことを知る。
「なんだと?フェルナンドがサラ様に!?も、申し訳ない、あの野郎!」
ブルワリー・イーデス子爵は口汚く勘当した息子を罵った。
嫡男バローも怒りで真っ赤な顔をして怒鳴る。
「なんでいまさらあいつが戻ってくるんだ!」
「知らん!役所の仕事を辞めさせてからはずっと姿を消していたんだ」
興奮した親子にエイジャが割って入り、話を引き戻す。
「今、メーメの店で捉えておりますので、取り急ぎイーデス子爵家で引き取って頂けないでしょうか?サラ様に危害を与えられることがあれば大変な事態になりますぞ」
エイジャの言葉にブルワリーとバローは震え上がり、速攻で箱馬車を用意して飛び乗った。
メーメの店の裏口に転がされた男が一人、うるさいので猿轡をされ、モガモガ言っている。
「だからとっとと帰ればよかったのに」
モニカに鼻をつままれて苦しさにじたばたと暴れるフェルナンドだった。
「馬鹿な男だわ、サラ様には相応しくない」
凍りつくような視線をフェルナンドに向けたモニカは立ち上がると、靴の爪先でぎゅうっとフェルナンドを踏みつけながら続けた。
「ねえ、婚約解消されたサラ様がどうやってここまでになったか知ってるかしら」
傷つけられた伯爵令嬢に向けられる視線、相応しくないとしか言いようのないほど歳の離れた者や訳あり貴族からの婚姻申込みが続き、結婚を諦めてこの店と出会ったこと。
伯爵令嬢でありながら手をあかぎれだらけにして日々修業に励み、ようやく人気パティシエールとして認められたサラと、奇しくもサラが初めて商品として作った菓子を購入して以来、ずっとサラを見守ってきたザイアとの婚約が決まったこと。
「お優しく頼りがいのある方と婚約を決められたときのサラ様の、本当に幸せそうなお顔が忘れられませんわ。
いいですか?いまさらイーデス様の出番など、ほんのこれっぽっちもございませんのよ。サラ様を裏切って傷つけたくせに厚かましいにもほどがあるわ」
二本の指先で隙間を作って見せると、フェルナンドの目の前で隙間をギュッと潰して見せた。
「おい、モニカ。イーデス子爵家から馬車が着いたぞ」
チルディが知らせると。
「そう!早かったわね。ではこれを運びましょう!」
靴の爪先でもう一度ぎゅうっと踏みつけたモニカのことは見て見ぬふりをし、チルディがフェルナンドを拘束している縄を掴んでぐいっと引き上げ立たせてやる。
「これで自分で歩けるだろう?」
巻きつけられた縄に余裕がないため、よちよちと小股で歩くしかないフェルナンドを、モニカとチルディは忌々しげに見ながら外へと連れ出した。
「フェルナンド、おまえはよくも」
いきなりブルワリーの拳がフェルナンドの顔面を張り飛ばした。
「ぐっふ」
まだ猿轡をしており、痛いとも何とも言うことができないため、くぐもった声だけが漏れる。
「この恥晒しが!どれほどの迷惑をかけたら気が済むんだ!」
バローが綱を掴み、フェルナンドを馬車へと引きずるとその速さについていけずに転んでしまったが、面倒くさくなったらしいバローに肩に担がれ、ドスンと音を立てて馬車に放り込まれた。
「ぐぅ」
痛みにもがいているフェルナンドが外から見えないよう、素早く馬車の扉を閉めると、イーデス子爵父子は腰を折るように深々と頭を下げた。
「重ね重ね大変なご迷惑をおかけし、申し訳ございませんでした。サラ様とメーリア伯爵家、こちらの店にはまた日を改めて謝罪にお伺いいたしますので」
馬車に乗り込んだイーデス子爵ブルワリーと息子バローは、かつて子爵家嫡男だったフェルナンドを足蹴にしていた。
「おまえというやつは、どれほど家族やメーリア伯爵家に迷惑をかけたら気が済むのだ!」
フェルナンドは何か言いたそうな目を向けたが、ブルワリーもバローも猿轡を外そうとはしない。
「こいつをどうしてやろうか」
「鉱山に閉じ込めましょう」
バローの言葉に、カッと目を見開いたフェルナンドがモガモガと暴れるが、
「やはりそれしかないな。または隣国あたりの未亡人に売るか。またメーリア伯爵家に慰謝料を払うことになるかもしれんぞ」
絶望的な目に変わるフェルナンドに、ブルワリーはさらに冷酷な言葉を投げる。
「どちらが金になるだろうな?」
「一時金なら未亡人かと・・・」
ブルワリーは、髪と髭を伸び放題にした汚らしいかつての息子をじっと眺めると
「愛人より鉱山のほうが大変だな。うん、鉱山にしよう!」
「体が保たなかったらそれほど稼げないかもしれないですよ」
「それでもよい。楽に女に囲われるこいつを想像したら胸糞悪くなった」
そうしてイーデス子爵は一言の弁明も聞かずに、過重就労を課されると有名な鉱山にフェルナンドを向かわせた。給料はすべてイーデス子爵家が差し押さえるというフェルナンドには逃げることも、またせめてもの気晴らしさえも許されない厳しい条件で。
フェルナンドはブルワリーから何度もかけられた温情をことごとく裏切り、最後にはその父に厳しい処断をされたのであった。
最低限のことのみ聞いたエイジャが馬を駆る。
「メーリア伯爵家御者頭エイジャ・ロリンドルと申します」
その一言でイーデス子爵家の皆は、青天の霹靂とも言える出来事が起きたことを知る。
「なんだと?フェルナンドがサラ様に!?も、申し訳ない、あの野郎!」
ブルワリー・イーデス子爵は口汚く勘当した息子を罵った。
嫡男バローも怒りで真っ赤な顔をして怒鳴る。
「なんでいまさらあいつが戻ってくるんだ!」
「知らん!役所の仕事を辞めさせてからはずっと姿を消していたんだ」
興奮した親子にエイジャが割って入り、話を引き戻す。
「今、メーメの店で捉えておりますので、取り急ぎイーデス子爵家で引き取って頂けないでしょうか?サラ様に危害を与えられることがあれば大変な事態になりますぞ」
エイジャの言葉にブルワリーとバローは震え上がり、速攻で箱馬車を用意して飛び乗った。
メーメの店の裏口に転がされた男が一人、うるさいので猿轡をされ、モガモガ言っている。
「だからとっとと帰ればよかったのに」
モニカに鼻をつままれて苦しさにじたばたと暴れるフェルナンドだった。
「馬鹿な男だわ、サラ様には相応しくない」
凍りつくような視線をフェルナンドに向けたモニカは立ち上がると、靴の爪先でぎゅうっとフェルナンドを踏みつけながら続けた。
「ねえ、婚約解消されたサラ様がどうやってここまでになったか知ってるかしら」
傷つけられた伯爵令嬢に向けられる視線、相応しくないとしか言いようのないほど歳の離れた者や訳あり貴族からの婚姻申込みが続き、結婚を諦めてこの店と出会ったこと。
伯爵令嬢でありながら手をあかぎれだらけにして日々修業に励み、ようやく人気パティシエールとして認められたサラと、奇しくもサラが初めて商品として作った菓子を購入して以来、ずっとサラを見守ってきたザイアとの婚約が決まったこと。
「お優しく頼りがいのある方と婚約を決められたときのサラ様の、本当に幸せそうなお顔が忘れられませんわ。
いいですか?いまさらイーデス様の出番など、ほんのこれっぽっちもございませんのよ。サラ様を裏切って傷つけたくせに厚かましいにもほどがあるわ」
二本の指先で隙間を作って見せると、フェルナンドの目の前で隙間をギュッと潰して見せた。
「おい、モニカ。イーデス子爵家から馬車が着いたぞ」
チルディが知らせると。
「そう!早かったわね。ではこれを運びましょう!」
靴の爪先でもう一度ぎゅうっと踏みつけたモニカのことは見て見ぬふりをし、チルディがフェルナンドを拘束している縄を掴んでぐいっと引き上げ立たせてやる。
「これで自分で歩けるだろう?」
巻きつけられた縄に余裕がないため、よちよちと小股で歩くしかないフェルナンドを、モニカとチルディは忌々しげに見ながら外へと連れ出した。
「フェルナンド、おまえはよくも」
いきなりブルワリーの拳がフェルナンドの顔面を張り飛ばした。
「ぐっふ」
まだ猿轡をしており、痛いとも何とも言うことができないため、くぐもった声だけが漏れる。
「この恥晒しが!どれほどの迷惑をかけたら気が済むんだ!」
バローが綱を掴み、フェルナンドを馬車へと引きずるとその速さについていけずに転んでしまったが、面倒くさくなったらしいバローに肩に担がれ、ドスンと音を立てて馬車に放り込まれた。
「ぐぅ」
痛みにもがいているフェルナンドが外から見えないよう、素早く馬車の扉を閉めると、イーデス子爵父子は腰を折るように深々と頭を下げた。
「重ね重ね大変なご迷惑をおかけし、申し訳ございませんでした。サラ様とメーリア伯爵家、こちらの店にはまた日を改めて謝罪にお伺いいたしますので」
馬車に乗り込んだイーデス子爵ブルワリーと息子バローは、かつて子爵家嫡男だったフェルナンドを足蹴にしていた。
「おまえというやつは、どれほど家族やメーリア伯爵家に迷惑をかけたら気が済むのだ!」
フェルナンドは何か言いたそうな目を向けたが、ブルワリーもバローも猿轡を外そうとはしない。
「こいつをどうしてやろうか」
「鉱山に閉じ込めましょう」
バローの言葉に、カッと目を見開いたフェルナンドがモガモガと暴れるが、
「やはりそれしかないな。または隣国あたりの未亡人に売るか。またメーリア伯爵家に慰謝料を払うことになるかもしれんぞ」
絶望的な目に変わるフェルナンドに、ブルワリーはさらに冷酷な言葉を投げる。
「どちらが金になるだろうな?」
「一時金なら未亡人かと・・・」
ブルワリーは、髪と髭を伸び放題にした汚らしいかつての息子をじっと眺めると
「愛人より鉱山のほうが大変だな。うん、鉱山にしよう!」
「体が保たなかったらそれほど稼げないかもしれないですよ」
「それでもよい。楽に女に囲われるこいつを想像したら胸糞悪くなった」
そうしてイーデス子爵は一言の弁明も聞かずに、過重就労を課されると有名な鉱山にフェルナンドを向かわせた。給料はすべてイーデス子爵家が差し押さえるというフェルナンドには逃げることも、またせめてもの気晴らしさえも許されない厳しい条件で。
フェルナンドはブルワリーから何度もかけられた温情をことごとく裏切り、最後にはその父に厳しい処断をされたのであった。
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