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43話
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結局のところ、メーリア伯爵家もメーメの店も、イーデス子爵家からの謝罪は受け取ったが慰謝料については軽微な迷惑に過ぎないとして断り、サラの婚約者ザイアの実家タイリユ子爵家も含め、今後一切の付き合いをしないということで決着させた。
「ブルワリーも災難だな、フェルナンドは一体いつからああなったんだろうな?」
デード・メーリア伯爵は首を傾げ、妻ネルはほっとしたようにそれに続ける。
「うちの義息子にならなくて本当によかったと思いますわ」
「ああ。あのときは痛手だと思ったが、今となってはあのときでよかったとさえ思うよ」
「ええ。あのまま結婚していたらサラもザイア様とは出会いませんでしたものね」
扇でふわふわと自分をあおぎながらネルが満足そうに微笑む。
「サラには、苦労をかけた分も素晴らしい婚礼にしてあげたいわ」
デードと視線を交わすと、ふたりはゆっくりと頷きあった。
メーリア伯爵家は領地復興以降、いつぞやの凄まじい経済的困窮から完全に立ち直り、貴族としてまともな生活を取り戻している。
蓄えはだいぶ減ってしまったが、それでもかなり前にサラの結婚衣装のための絹の反物やドレスを装飾する宝石は買ってあったので、実質ドレスの仕立て代だけあれば、あとのアクセサリーやパーティーはタイリユ子爵家が負担する。
持参金はサラ本人が、タイリユ家やイーデス家から受け取った慰謝料を使うので心配いらないそうだ。
それを聞いたタイリユ家では、昔払った慰謝料にサラという素晴らしい利息がついて戻ってくると笑っているらしいが。
しあわせの足音が確実にメーリア伯爵家とタイリユ子爵家に近づいていた。
婚約から一年を置き、ドレスや宝飾品の準備が整ったところで今、二人で結婚式の招待状を手書きしている。
「はあ、こんなにあるとは!自分で書くなんて言わなければよかったな」
「普通は人に頼むところですけど、いろいろお世話になった方にしあわせな姿を見ていただきたいの。自らの手で心を込めて招待状を作れたら幸せが倍増するんじゃないかしらね」
にっこにこでサラに言われたら、ザイアもそれ以上の愚痴は言えない。
「そ・・・うだね。うん、そうだ!」
指にペンだこができるほどの招待状を、ふたりせっせと書き続けて。
その二月後、華燭の宴の日を無事に迎えた。
いろいろ噂の貴族同士。
手広く商売をしているタイリユ家と人気パティシエールのサラの結婚式は、招待してほしいと向こうから声がかかるほど注目を浴びていたが。
招待客は辛いときを支えてくれた人々を厳選、もちろんサラの師匠メーメとその娘ローサ、ローサの夫ジャリス・メレンデラ子爵も。
メーメは前日からタイリユ子爵家に逗留し、厨房の料理人とともにスイーツ作りに没頭していたが、その中で気に入りの者を見つけた。
その気があるならパティシエに育ててやると耳打ちしているところを料理長は目にしたが、この数年、屋敷の茶会や夜会のデザートのほとんどはメーメの店から買っていたので、他にも気にいった者がいたら仕込んでやってほしいとメーメに頭を下げた。
以前はタイリユ家にもパティシエがいたのだが、エラがメーメの店のスイーツしか食べなくなりその者は解雇されて。以来の空席を誰かが埋めてくれたらよいと思いながら。
そんな料理人たちがタイリユ子爵家一堂の喜びを詰め込み、贅を尽くした料理を並べた宴である。
選ばれた招待客はもちろんのこと、タイリユ家とメーリア家の皆を腹から幸せでいっぱいに満たした。
「素晴らしい料理だ!本当に素晴らしいとしか言葉が出ないよ」
デード・メーリア伯爵がテーブルを回ってきたザイアとサラに、料理を褒めちぎる。
「お父さま、デザートはまだこれからですわ。召し上がってから褒めてくださらないと!」
サラが拗ねたように言うと、ザイアも
「そうですよ、デザートと最後のティーまでお召し上がりいただいて、すべてのおもてなしが終わるのですからね」
そう言って、いちいちお互いの顔を見合わせる若い夫婦をデードはうれしそうに見つめた。
「うん、わかったよ。あまりの美味さに気が急いた」
デードとネル、兄ハルバリ夫妻にとっては、本当に何年も何年も待ったサラの結婚である。
サラのしあわせを願い続けて、しかしサラのしあわせは仕事にしかないのかと諦め始めたときに現れたザイア。
サラを理解し、守り、なによりサラと深く想い合っている素晴らしい相手!
それはタイリユ子爵家のエラにとっても同じで、サラを傷物にしたと誹謗中傷されたが、裁判により汚名を返上し、優れた菓子職人に成長したサラを迎え入れることができたのだから。
次期子爵夫人がパティシエールだなんてと眉を顰める者は、社交界にも確かにいたが、サラが結婚して仕事を辞めてしまうことを恐れる者のほうが圧倒的で、結果サラは自分の努力で仕事と結婚のふたつとも掴み取った。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
いつもご愛読ありがとうございます。
あと一話、明日で完結となります。
最後までどうぞよろしくお願いいたします。
次作の「地味な貴女より美しい私が彼に相応しくてよ!嘘つき傲慢令嬢は家族にざまあされる。」は明後日より開始です。
15話完結で毎朝7時更新の全話予約投稿済です。こちらもどうぞよろしくおねがい致します。
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デード・メーリア伯爵は首を傾げ、妻ネルはほっとしたようにそれに続ける。
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「ええ。あのまま結婚していたらサラもザイア様とは出会いませんでしたものね」
扇でふわふわと自分をあおぎながらネルが満足そうに微笑む。
「サラには、苦労をかけた分も素晴らしい婚礼にしてあげたいわ」
デードと視線を交わすと、ふたりはゆっくりと頷きあった。
メーリア伯爵家は領地復興以降、いつぞやの凄まじい経済的困窮から完全に立ち直り、貴族としてまともな生活を取り戻している。
蓄えはだいぶ減ってしまったが、それでもかなり前にサラの結婚衣装のための絹の反物やドレスを装飾する宝石は買ってあったので、実質ドレスの仕立て代だけあれば、あとのアクセサリーやパーティーはタイリユ子爵家が負担する。
持参金はサラ本人が、タイリユ家やイーデス家から受け取った慰謝料を使うので心配いらないそうだ。
それを聞いたタイリユ家では、昔払った慰謝料にサラという素晴らしい利息がついて戻ってくると笑っているらしいが。
しあわせの足音が確実にメーリア伯爵家とタイリユ子爵家に近づいていた。
婚約から一年を置き、ドレスや宝飾品の準備が整ったところで今、二人で結婚式の招待状を手書きしている。
「はあ、こんなにあるとは!自分で書くなんて言わなければよかったな」
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にっこにこでサラに言われたら、ザイアもそれ以上の愚痴は言えない。
「そ・・・うだね。うん、そうだ!」
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その二月後、華燭の宴の日を無事に迎えた。
いろいろ噂の貴族同士。
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招待客は辛いときを支えてくれた人々を厳選、もちろんサラの師匠メーメとその娘ローサ、ローサの夫ジャリス・メレンデラ子爵も。
メーメは前日からタイリユ子爵家に逗留し、厨房の料理人とともにスイーツ作りに没頭していたが、その中で気に入りの者を見つけた。
その気があるならパティシエに育ててやると耳打ちしているところを料理長は目にしたが、この数年、屋敷の茶会や夜会のデザートのほとんどはメーメの店から買っていたので、他にも気にいった者がいたら仕込んでやってほしいとメーメに頭を下げた。
以前はタイリユ家にもパティシエがいたのだが、エラがメーメの店のスイーツしか食べなくなりその者は解雇されて。以来の空席を誰かが埋めてくれたらよいと思いながら。
そんな料理人たちがタイリユ子爵家一堂の喜びを詰め込み、贅を尽くした料理を並べた宴である。
選ばれた招待客はもちろんのこと、タイリユ家とメーリア家の皆を腹から幸せでいっぱいに満たした。
「素晴らしい料理だ!本当に素晴らしいとしか言葉が出ないよ」
デード・メーリア伯爵がテーブルを回ってきたザイアとサラに、料理を褒めちぎる。
「お父さま、デザートはまだこれからですわ。召し上がってから褒めてくださらないと!」
サラが拗ねたように言うと、ザイアも
「そうですよ、デザートと最後のティーまでお召し上がりいただいて、すべてのおもてなしが終わるのですからね」
そう言って、いちいちお互いの顔を見合わせる若い夫婦をデードはうれしそうに見つめた。
「うん、わかったよ。あまりの美味さに気が急いた」
デードとネル、兄ハルバリ夫妻にとっては、本当に何年も何年も待ったサラの結婚である。
サラのしあわせを願い続けて、しかしサラのしあわせは仕事にしかないのかと諦め始めたときに現れたザイア。
サラを理解し、守り、なによりサラと深く想い合っている素晴らしい相手!
それはタイリユ子爵家のエラにとっても同じで、サラを傷物にしたと誹謗中傷されたが、裁判により汚名を返上し、優れた菓子職人に成長したサラを迎え入れることができたのだから。
次期子爵夫人がパティシエールだなんてと眉を顰める者は、社交界にも確かにいたが、サラが結婚して仕事を辞めてしまうことを恐れる者のほうが圧倒的で、結果サラは自分の努力で仕事と結婚のふたつとも掴み取った。
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