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第37話 小さいけど大きな成果
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うっきうきで帰城の馬車に乗り込んだエルロールは、今にも歌い出しそうなほど。
「とうとうデートに誘うことができた?」
「違う」
スパッと切れ味のよい答えにテューダーはカクッと力が抜けた。
「でもな、ふふふっ。メリンダ嬢はいつもの焼き菓子をものすごく気に入っていて、だからイブール男爵家に贈る約束をした!」
─なんて・・・なんてささやかな成果なんだ!それをこれほど喜ぶとはなぁ・・・─
憐れむテューダーの視線に気づくこともなく、ご機嫌を振りまいている。
「今まで焼いてもらったあらゆる菓子を、全部焼いてもらおう」
にっかり笑いながらそう呟いたのを聞いて、テューダーは我に返った。
「ちょ、ちょっと待てエル!そんなに大量に菓子が届いたら茶会でもなければ普通は困る!城とは違うんだぞ」
「ん?そうか?別に腐るものでもなかろう?」
「はーっ?腐らなくとも湿気て不味くなる!不味くなったとしても、あのメリンダ嬢のことだ。捨てたりせずに最後の一欠片まで食べるに違いない。そんなかわいそうなことをするつもりか?」
テューダーはかなり大袈裟に言ったが、おかげで効果は抜群だった。
「い、いやそんなことはさせたくない。では一回に届ける量は少しにして、何度も届けるようにしよう」
「そうだよ、そのほうがいい!受け取る度にメリンダ嬢がエルを思い出すんだからな」
一瞬しょんぼりしかかったエルロールは顔を上げた、まさに満面の笑みで。
「そうか!では・・・毎日少しづつ届けさせるようにしてくれ」
完全に加減のバロメーターが壊れたらしいエルロールに呆れたテューダーだが、今までの奥手ぶりに比べたらかなりの前進だ。
しかし菓子とはいえ、いきなり毎日贈り物が届いたら引かれてしまうだろうから、教会には行かない日に週に二度くらい贈っておこうと、できる側近は手配を決めていた。
「菓子を贈ると話をしたときのメリンダ嬢がな、実は一度遠慮して断ってきたのだが、私が押したら至極うれしそうに頬を染めたんだ。あまりの尊さに目が潰れるかと思うほどだった」
はああ・・・と長いため息をつくエルロールに、ため息をつくと幸せが逃げると言ってやりたくなったが、頭から幻の幸せの花が生えているのが見えた気がして馬鹿らしくなったテューダーは、その言葉を飲み込んだ。
「よかったなー、エルロールでんかっ!」
「ああっ!テューのおかげだよぉ」
城につくと、エルロールはくるくると回ってから羽でも生えたような足取りで歩き出した。
─菓子を贈れることになっただけでステップを踏むエル・・・。恋が成就したら一体どうなってしまうのだろう?
あまりのことに心臓が止まるようなことがあったら大変だから、やっぱり時間がかかっても少しづつ段階を踏んでいった方がいいかもな─
麗しの第一王子は側近の苦笑にも気づかずに鼻歌を歌いだしていた。
─王妃様に報告したらさぞや笑われることだろうな─
パリスのからからとした笑い声が、テューダーの耳の中で鳴り響いた。
「とうとうデートに誘うことができた?」
「違う」
スパッと切れ味のよい答えにテューダーはカクッと力が抜けた。
「でもな、ふふふっ。メリンダ嬢はいつもの焼き菓子をものすごく気に入っていて、だからイブール男爵家に贈る約束をした!」
─なんて・・・なんてささやかな成果なんだ!それをこれほど喜ぶとはなぁ・・・─
憐れむテューダーの視線に気づくこともなく、ご機嫌を振りまいている。
「今まで焼いてもらったあらゆる菓子を、全部焼いてもらおう」
にっかり笑いながらそう呟いたのを聞いて、テューダーは我に返った。
「ちょ、ちょっと待てエル!そんなに大量に菓子が届いたら茶会でもなければ普通は困る!城とは違うんだぞ」
「ん?そうか?別に腐るものでもなかろう?」
「はーっ?腐らなくとも湿気て不味くなる!不味くなったとしても、あのメリンダ嬢のことだ。捨てたりせずに最後の一欠片まで食べるに違いない。そんなかわいそうなことをするつもりか?」
テューダーはかなり大袈裟に言ったが、おかげで効果は抜群だった。
「い、いやそんなことはさせたくない。では一回に届ける量は少しにして、何度も届けるようにしよう」
「そうだよ、そのほうがいい!受け取る度にメリンダ嬢がエルを思い出すんだからな」
一瞬しょんぼりしかかったエルロールは顔を上げた、まさに満面の笑みで。
「そうか!では・・・毎日少しづつ届けさせるようにしてくれ」
完全に加減のバロメーターが壊れたらしいエルロールに呆れたテューダーだが、今までの奥手ぶりに比べたらかなりの前進だ。
しかし菓子とはいえ、いきなり毎日贈り物が届いたら引かれてしまうだろうから、教会には行かない日に週に二度くらい贈っておこうと、できる側近は手配を決めていた。
「菓子を贈ると話をしたときのメリンダ嬢がな、実は一度遠慮して断ってきたのだが、私が押したら至極うれしそうに頬を染めたんだ。あまりの尊さに目が潰れるかと思うほどだった」
はああ・・・と長いため息をつくエルロールに、ため息をつくと幸せが逃げると言ってやりたくなったが、頭から幻の幸せの花が生えているのが見えた気がして馬鹿らしくなったテューダーは、その言葉を飲み込んだ。
「よかったなー、エルロールでんかっ!」
「ああっ!テューのおかげだよぉ」
城につくと、エルロールはくるくると回ってから羽でも生えたような足取りで歩き出した。
─菓子を贈れることになっただけでステップを踏むエル・・・。恋が成就したら一体どうなってしまうのだろう?
あまりのことに心臓が止まるようなことがあったら大変だから、やっぱり時間がかかっても少しづつ段階を踏んでいった方がいいかもな─
麗しの第一王子は側近の苦笑にも気づかずに鼻歌を歌いだしていた。
─王妃様に報告したらさぞや笑われることだろうな─
パリスのからからとした笑い声が、テューダーの耳の中で鳴り響いた。
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