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第44話 ゴルマス侯爵家の晩餐
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ソージェはゴルマス侯爵家にオルサガ侯爵とその弟たちを晩餐に呼び集めていた。
「ソージェ、久しぶりだな」
「ああアランもな。ランス、ブラスも元気だったか?」
「お久しぶりです」
久しぶりでも幼馴染みはすぐに昔の関係に戻れる。
大切な話があるからと、晩餐のあとすぐに妻とこどもたちには席を外させて当主たちだけで酒を楽しみ、肝心な話はなかなか始まらずに時間は過ぎていった。
─そろそろいいだろうか─
「あのな。聞きづらい話なのだが」
アラン・オルサガは自分のことだとすぐに気づいた。
「ソージェ、私たちは家族みたいなものだろう。なんでも聞けよ」
ブラスとランスも長兄の言葉に頷いている。
「気を悪くしたらすまない。あのな、オルサガ家は後継者をどうするつもりなのだ?」
「・・・そちらか。てっきり出て行ったアレの話かと思ったが」
「そちらはまあ、おいおい」
「ふっ。さすがに我が子に継がせるのはもう諦めた。直系に継がせたいからな、ランスの娘のどちらかを養女にして婿を取るしかないと考えている」
「兄上・・・」
「ランスも薄々気づいていただろう?」
三兄弟はそれぞれに頷きあった。
「やはりそうか。・・・正直に話すので、ここから先は確定するまで口外しないと約束してほしい」
「うん?なんだ珍しいな、ソージェがそんな前置きをするなんて」
アランが首を傾げる。
「ランス、君の長女のメリンダ嬢はとても素晴らしい令嬢だな」
「メリンダをご存知で!」
「ああ、先日王都外れの読み書き教室でお会いしたよ」
「そうか!ソージェ様だったんだな」
ランスがポンと手を叩いて、ははっと笑った。
「私のことを?」
「ええ、聞いた名前が微妙に違ってましたよ」
「私の滑舌が悪かったのかな」
はははっとみんなで笑って、真面目な顔に戻ったソージェが切り出した。
「では読み書き教室については話を聞いている?」
「ええ。御二人の貴族が私財で建てられて、とても尊敬できる方だと申しておりました、確かエル様とテューダー様だったかな」
「うむ。ところでソグ伯爵家はご存知か?テューダーはソグ伯爵家の子息なのだが」
ランスは首を傾げたが、アランは思い出したらしい。
「ソグ伯爵夫人は王子たちの乳母ではなかったかな」
「当たりだよ、アラン。テューダーは、エルロール王子の乳兄弟で側近だ」
へえ、という空気が漂うが、まだ繋がっていないらしいので、ソージェはもう一歩踏み込んだ。
「王子の側近が常にともにいるエル・ヨルス男爵とは」
「それも王子の側近か?」
ソージェの誘導は失敗したようだ。
「いや、そうじゃない。ヨルス男爵はエルロール殿下が市井に視察に行くときの仮の名だ」
「・・・・・・・ええええっ!」
だいぶ反応が遅かったランスが絶叫した。
それもそうだ、このところヨルス男爵から何度も素晴らしく美味い焼き菓子が届いて、家族皆で食べていたのだから。
「ヨ、ヨルス男爵が、王子?」
「そうだ。もうわかったかな?」
まわりを見ると、兄二人はまだわかっていないらしい。
「視察に行った先でエルロール殿下は美しく聡明な令嬢に出会った。彼女が奉仕活動をしている孤児院のこどもたちとも親しくなり、平民の孤児の問題を知って状況改善の手立てを打ち始め、私は今それを手伝っている」
それがどうしたという顔をするアランとブラスに対し、ランスは食いつかんばかりの顔をしている。
「エルロール殿下はその令嬢を好ましく思われている」
「なっ、なんと!メリンダを?」
「な、何?令嬢はメリンダなのかっ?」
「それは大変なことだぞランス」
三兄弟は急にわちゃわちゃと騒ぎ出した。
「おい、少し落ち着け。私の話を、聞けーっ!」
「ソージェ、久しぶりだな」
「ああアランもな。ランス、ブラスも元気だったか?」
「お久しぶりです」
久しぶりでも幼馴染みはすぐに昔の関係に戻れる。
大切な話があるからと、晩餐のあとすぐに妻とこどもたちには席を外させて当主たちだけで酒を楽しみ、肝心な話はなかなか始まらずに時間は過ぎていった。
─そろそろいいだろうか─
「あのな。聞きづらい話なのだが」
アラン・オルサガは自分のことだとすぐに気づいた。
「ソージェ、私たちは家族みたいなものだろう。なんでも聞けよ」
ブラスとランスも長兄の言葉に頷いている。
「気を悪くしたらすまない。あのな、オルサガ家は後継者をどうするつもりなのだ?」
「・・・そちらか。てっきり出て行ったアレの話かと思ったが」
「そちらはまあ、おいおい」
「ふっ。さすがに我が子に継がせるのはもう諦めた。直系に継がせたいからな、ランスの娘のどちらかを養女にして婿を取るしかないと考えている」
「兄上・・・」
「ランスも薄々気づいていただろう?」
三兄弟はそれぞれに頷きあった。
「やはりそうか。・・・正直に話すので、ここから先は確定するまで口外しないと約束してほしい」
「うん?なんだ珍しいな、ソージェがそんな前置きをするなんて」
アランが首を傾げる。
「ランス、君の長女のメリンダ嬢はとても素晴らしい令嬢だな」
「メリンダをご存知で!」
「ああ、先日王都外れの読み書き教室でお会いしたよ」
「そうか!ソージェ様だったんだな」
ランスがポンと手を叩いて、ははっと笑った。
「私のことを?」
「ええ、聞いた名前が微妙に違ってましたよ」
「私の滑舌が悪かったのかな」
はははっとみんなで笑って、真面目な顔に戻ったソージェが切り出した。
「では読み書き教室については話を聞いている?」
「ええ。御二人の貴族が私財で建てられて、とても尊敬できる方だと申しておりました、確かエル様とテューダー様だったかな」
「うむ。ところでソグ伯爵家はご存知か?テューダーはソグ伯爵家の子息なのだが」
ランスは首を傾げたが、アランは思い出したらしい。
「ソグ伯爵夫人は王子たちの乳母ではなかったかな」
「当たりだよ、アラン。テューダーは、エルロール王子の乳兄弟で側近だ」
へえ、という空気が漂うが、まだ繋がっていないらしいので、ソージェはもう一歩踏み込んだ。
「王子の側近が常にともにいるエル・ヨルス男爵とは」
「それも王子の側近か?」
ソージェの誘導は失敗したようだ。
「いや、そうじゃない。ヨルス男爵はエルロール殿下が市井に視察に行くときの仮の名だ」
「・・・・・・・ええええっ!」
だいぶ反応が遅かったランスが絶叫した。
それもそうだ、このところヨルス男爵から何度も素晴らしく美味い焼き菓子が届いて、家族皆で食べていたのだから。
「ヨ、ヨルス男爵が、王子?」
「そうだ。もうわかったかな?」
まわりを見ると、兄二人はまだわかっていないらしい。
「視察に行った先でエルロール殿下は美しく聡明な令嬢に出会った。彼女が奉仕活動をしている孤児院のこどもたちとも親しくなり、平民の孤児の問題を知って状況改善の手立てを打ち始め、私は今それを手伝っている」
それがどうしたという顔をするアランとブラスに対し、ランスは食いつかんばかりの顔をしている。
「エルロール殿下はその令嬢を好ましく思われている」
「なっ、なんと!メリンダを?」
「な、何?令嬢はメリンダなのかっ?」
「それは大変なことだぞランス」
三兄弟は急にわちゃわちゃと騒ぎ出した。
「おい、少し落ち着け。私の話を、聞けーっ!」
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