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外伝 ちいさなこどもたち
ちいさなロリー1 ─こどもたち─
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その少女たちは王都外れの20人ほどが集まる小さな孤児院で暮らしていた。
「マーサ待って!」
「ロリーってば支度が遅いのよ!」
孤児院を出て、一軒先に出来た読み書き教室の時間なのだ。
教室に通うようになってから、ロリーは自分で絵本が読めるようになった。難しくて読めない字があっても、先生に訊ねればすぐに教えてもらえるのが楽しくて。
それなのに今日は遅刻しそうなのだ。
「早く、先生来てるよ」
一足先についたマーサが呼んでいた。
「昨日言ったとおり、今日はテストをしますから鉛筆以外は机に出さないでくださいね」
紙の束を机にザッと下ろし、一列分づつ取り分けていくと、席についたばかりだというのに、あっという間にテストが配られ「はい、始め!」と声がかかった。
ロリーも名前を書き、解答を書き込み始める。
昨夜しっかり復習し、今朝もぎりぎりまで教科書を読んで準備してきたのだ。
絶対に上手くできるとロリーは自信を持って解答を書き始めた。
五年後。
メリンダ・イブールのワンピースの裾を掴み、絵本を読んでとおねだりしていた小さかったロリーは、読み書き教室で特別良い成績を上げ続け、優秀さと勤勉さを認められて、エルロール王太子夫妻が設立した奨学金を受けられることになった。
エルロールは読み書き教室を作り始めて暫くしてから国語検定を、その後計算検定というものを制定した。
どれ程の文字や言葉、その意味や使い方を知っているか、どれほどの計算能力があるか等をそれぞれの試験で数値化、一定以上の成績を取る者を王城や貴族家、大きな商会でも競って雇い入れる。
元は平民から優秀な者を登用するための制度だったが、いつしか貴族の子弟たちも挙って受け出した。
エルロールの作り上げた検定試験は、買収などの不正は一切きかない公正なものだ。
ただ文官になるのではなく、その中でも希望の職につく近道と言われ、もちろんロリーも目指す職があった。
奨学金を受けたこどもは、平民向けとしては最上位のメレイラ学院に入学でき、国語だけではなく外国語や計算、国の歴史や貴族と接した際のマナーなど様々を学ぶ。
学院の生徒は殆どが大きな商会のこどもたちだったが、孤児のロリーを見下すことはなく、それどころか優秀なロリーをどの商会が引き込むかで奪い合いになったほど。
「ロリー!ちょっと待ってよ」
クラスメイトのエリージャが追いかけてくる。
「ねえ、休みの間寮に残るってほんと?それなら一緒にうちに行きましょうよ、うちの両親もすごーくロリーに会いたがってるのよ」
エリージャの声に他の生徒も反応し、被せてきた。
「ちょっとエリージャ、ロリーを誘うのは私よ!ねっロリー、うちに来るでしょ?」
「待った!ロリーうちの別荘に一緒に行かない?」
もてもてロリーなのである。
実際ロリーは小柄で明るい栗毛の長い髪を垂らした可愛らしい少女で、守ってあげたくなる様な容姿にも関わらず、抜群に優秀なのだ。
孤児なんて気にしていたら、この人材を他に奪われてしまう。
商会長を親に持つこどもたちのロリー争奪戦は、あからさまなものになりつつあったが。
「ええっと、ごめんなさい皆さん。私、長期休みは孤児院に帰って手伝いをしなくてはなりませんの。読み書き教室の手伝いもありますし、結構忙しくしておりますから、また休み明けに仲良くしてくださいね。ごきげんよう」
「「「「「え?」」」」」
同級生たちをあっさりと振り切り、貴族のように優雅に礼をして教室を出ていくロリー。
「孤児院と読み書き教室の手伝い?休みの間そんなことやっていたの?」
─ロリーってえらい!─
家の手伝いなどすることのない生徒たちは、自分は恵まれているのだと感じ、なんとなく恥ずかしくなったが、誰も、では自分も手伝いに行くとは言わなかった。
∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
新作「時戻り令嬢は復讐する」本日から開始します。作者にしては珍しくシリアス度高め、サスペンス要素ありの作品です。
10万字ちょっと超えますが、最終話まで書き終えている作品ですので、最初にポチッとお気に入りにして頂き、完結表示が出てからの一気読みなどもお勧めです(*´艸`*)ウフウフ
こちらもぜひよろしくお願い致します。
「マーサ待って!」
「ロリーってば支度が遅いのよ!」
孤児院を出て、一軒先に出来た読み書き教室の時間なのだ。
教室に通うようになってから、ロリーは自分で絵本が読めるようになった。難しくて読めない字があっても、先生に訊ねればすぐに教えてもらえるのが楽しくて。
それなのに今日は遅刻しそうなのだ。
「早く、先生来てるよ」
一足先についたマーサが呼んでいた。
「昨日言ったとおり、今日はテストをしますから鉛筆以外は机に出さないでくださいね」
紙の束を机にザッと下ろし、一列分づつ取り分けていくと、席についたばかりだというのに、あっという間にテストが配られ「はい、始め!」と声がかかった。
ロリーも名前を書き、解答を書き込み始める。
昨夜しっかり復習し、今朝もぎりぎりまで教科書を読んで準備してきたのだ。
絶対に上手くできるとロリーは自信を持って解答を書き始めた。
五年後。
メリンダ・イブールのワンピースの裾を掴み、絵本を読んでとおねだりしていた小さかったロリーは、読み書き教室で特別良い成績を上げ続け、優秀さと勤勉さを認められて、エルロール王太子夫妻が設立した奨学金を受けられることになった。
エルロールは読み書き教室を作り始めて暫くしてから国語検定を、その後計算検定というものを制定した。
どれ程の文字や言葉、その意味や使い方を知っているか、どれほどの計算能力があるか等をそれぞれの試験で数値化、一定以上の成績を取る者を王城や貴族家、大きな商会でも競って雇い入れる。
元は平民から優秀な者を登用するための制度だったが、いつしか貴族の子弟たちも挙って受け出した。
エルロールの作り上げた検定試験は、買収などの不正は一切きかない公正なものだ。
ただ文官になるのではなく、その中でも希望の職につく近道と言われ、もちろんロリーも目指す職があった。
奨学金を受けたこどもは、平民向けとしては最上位のメレイラ学院に入学でき、国語だけではなく外国語や計算、国の歴史や貴族と接した際のマナーなど様々を学ぶ。
学院の生徒は殆どが大きな商会のこどもたちだったが、孤児のロリーを見下すことはなく、それどころか優秀なロリーをどの商会が引き込むかで奪い合いになったほど。
「ロリー!ちょっと待ってよ」
クラスメイトのエリージャが追いかけてくる。
「ねえ、休みの間寮に残るってほんと?それなら一緒にうちに行きましょうよ、うちの両親もすごーくロリーに会いたがってるのよ」
エリージャの声に他の生徒も反応し、被せてきた。
「ちょっとエリージャ、ロリーを誘うのは私よ!ねっロリー、うちに来るでしょ?」
「待った!ロリーうちの別荘に一緒に行かない?」
もてもてロリーなのである。
実際ロリーは小柄で明るい栗毛の長い髪を垂らした可愛らしい少女で、守ってあげたくなる様な容姿にも関わらず、抜群に優秀なのだ。
孤児なんて気にしていたら、この人材を他に奪われてしまう。
商会長を親に持つこどもたちのロリー争奪戦は、あからさまなものになりつつあったが。
「ええっと、ごめんなさい皆さん。私、長期休みは孤児院に帰って手伝いをしなくてはなりませんの。読み書き教室の手伝いもありますし、結構忙しくしておりますから、また休み明けに仲良くしてくださいね。ごきげんよう」
「「「「「え?」」」」」
同級生たちをあっさりと振り切り、貴族のように優雅に礼をして教室を出ていくロリー。
「孤児院と読み書き教室の手伝い?休みの間そんなことやっていたの?」
─ロリーってえらい!─
家の手伝いなどすることのない生徒たちは、自分は恵まれているのだと感じ、なんとなく恥ずかしくなったが、誰も、では自分も手伝いに行くとは言わなかった。
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いつもお読みいただき、ありがとうございます。
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