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外伝 リリアンジェラ
可愛いらしい王女はニヤリと笑う9 ─リリアンジェラ─
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カテナは、従兄弟のテューダーの元に向かい、王女の依頼を伝えることにした。
「リリ様の茶会に誰を呼ぶか決めるのに、お手伝いを頼まれたの。テュー兄様、調べてくださらない?」
お人好しの従兄弟はすぐに調べ上げ、カテナにリストを渡してくれた。
それを元にリリアンジェラ一派は、リストにある令嬢たちを女子の目で徹底的に調べ始める。
学院での成績や評判だけではなく、それまでに関わりを持った家庭教師や屋敷で働いていた使用人まで、表の顔だけでなく、下の者に対しての言動まで、男目線では見えないところを重箱の隅をつつくように。
その中から兄嫁になっても良さそうだと思える令嬢を厳選し、茶会に招く。何度も何度も。
あるときは令嬢たちだけで、またあるときは兄王子たちも交えて。
メルケルトとカルロイドは、その中の幾人かと継続して交流を始めたようだ。
しかし選りすぐりの令嬢たちにも関わらず、エルロールだけはまったく興味を示さない。
「どうしてなのかしら?人となり、能力や家格、財力とも素晴らしい令嬢たちばかりなのに!」
思いつく限りの条件を揃えたリリアンジェラだったが、エルロールにとっての「唯一の女性」は条件では探せないことに、気がついていなかった。
次の年の夏にエルロールが学院を卒業すると、王太子となるにはあと三年で結婚しなければならなくなった。最低半年の婚約期間を設けるため、二年半で相手を決め、婚約しなくてはならない。
さすがに双子王子たちの立太子はちょっとという空気が蔓延し、野心のある貴族たちからの縁組申込みも増えていく中、リリアンジェラはさらに範囲を広げ、他国の王族や貴族令嬢にも調査の手をのばしていった。
夏や冬の長い休みを利用し、様々な国から令嬢たちを呼び寄せたが、それでもエルロールだけは誰にも期待を抱かせることのない愛想笑いと社交辞令をくり返すだけ。
兄たちの乳兄弟で、エルロールの側近でもあるテューダー・ソグも困り果てていた。
「テュー!」
「これはリリアンジェラ殿下」
ちょいちょいと手招きをする。
「エル兄様は相変わらずなの?今度の茶会もすごく素敵なご令嬢をお招きしているのよ!」
「はあ。そう言ってみますが」
「あのねえ!貴方がそんなやる気なさそうなことを言っていたらいつまでたってもエル兄様は結婚できなくてよ!まったく」
八つ当たりのようにテューダーに文句をつけるが、テューダーはそれどころではなかった。
エルロールが二年スキップして卒業しても、テューダーはそうも行かずまだ学生だ。執務にすべての時間を使えるエルロールとは違い、放課後に城にやってくるので、とにかく時間が足りない。
王女の言うことは勿論わかっているが、何も今年じゃなくてもいいじゃないかと、テューダーは思っていた。
リリアンジェラには余計なお節介をしている自覚はない。ただ兄のため、ひいては国のためにと、自分にはこれっぽっちも理解できない運命の人を探す手伝いをしてやっているのだ。
そして、こんなにしてやっているのに、兄はちっとも感謝していない、探してやった条件のいい令嬢の中から選ぼうともしていないと不満を貯めていた。
「リリ様の茶会に誰を呼ぶか決めるのに、お手伝いを頼まれたの。テュー兄様、調べてくださらない?」
お人好しの従兄弟はすぐに調べ上げ、カテナにリストを渡してくれた。
それを元にリリアンジェラ一派は、リストにある令嬢たちを女子の目で徹底的に調べ始める。
学院での成績や評判だけではなく、それまでに関わりを持った家庭教師や屋敷で働いていた使用人まで、表の顔だけでなく、下の者に対しての言動まで、男目線では見えないところを重箱の隅をつつくように。
その中から兄嫁になっても良さそうだと思える令嬢を厳選し、茶会に招く。何度も何度も。
あるときは令嬢たちだけで、またあるときは兄王子たちも交えて。
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しかし選りすぐりの令嬢たちにも関わらず、エルロールだけはまったく興味を示さない。
「どうしてなのかしら?人となり、能力や家格、財力とも素晴らしい令嬢たちばかりなのに!」
思いつく限りの条件を揃えたリリアンジェラだったが、エルロールにとっての「唯一の女性」は条件では探せないことに、気がついていなかった。
次の年の夏にエルロールが学院を卒業すると、王太子となるにはあと三年で結婚しなければならなくなった。最低半年の婚約期間を設けるため、二年半で相手を決め、婚約しなくてはならない。
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兄たちの乳兄弟で、エルロールの側近でもあるテューダー・ソグも困り果てていた。
「テュー!」
「これはリリアンジェラ殿下」
ちょいちょいと手招きをする。
「エル兄様は相変わらずなの?今度の茶会もすごく素敵なご令嬢をお招きしているのよ!」
「はあ。そう言ってみますが」
「あのねえ!貴方がそんなやる気なさそうなことを言っていたらいつまでたってもエル兄様は結婚できなくてよ!まったく」
八つ当たりのようにテューダーに文句をつけるが、テューダーはそれどころではなかった。
エルロールが二年スキップして卒業しても、テューダーはそうも行かずまだ学生だ。執務にすべての時間を使えるエルロールとは違い、放課後に城にやってくるので、とにかく時間が足りない。
王女の言うことは勿論わかっているが、何も今年じゃなくてもいいじゃないかと、テューダーは思っていた。
リリアンジェラには余計なお節介をしている自覚はない。ただ兄のため、ひいては国のためにと、自分にはこれっぽっちも理解できない運命の人を探す手伝いをしてやっているのだ。
そして、こんなにしてやっているのに、兄はちっとも感謝していない、探してやった条件のいい令嬢の中から選ぼうともしていないと不満を貯めていた。
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