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外伝 リリアンジェラ
可愛いらしい王女はニヤリと笑う11 ─リリアンジェラ─
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第一王子エルロールの婚約者選定が膠着したまま、時間は過ぎていく。
タイムリミットまで残すところ一年を切ると、社交界は真っ二つに割れた。
エルロールを狙う者と興味がない者。
その日、城の広報部が開催した茶会は派閥の隔てのない大規模なもので、有象無象、はっきり言ってリリアンジェラが嫌いな令嬢たちも多く招かれたものだった。
王子たちは来ていないが、こんな日は情報収集に勤しむとリリアンジェラとカテナは決めている。
「リリ様、例のメンジャー侯爵令嬢がいらっしゃいましたわ」
噂によるとメンジャー侯爵家の令嬢セラは、自身も頻繁に茶会を催しては、招いたエルロールの婚約者候補たちを貶めるような暴言を吐いたり、圧力をかけたりしていると言われている。
噂ではなく、事実を公正に見なくてはいけない。
リリアンジェラは王族として常に公平にと教えられてきたことを、とりあえず自分の好き嫌いは関係なく実践した。
したのだが。
茶会の会場でリリアンジェラの刺すような視線を辿ったラミル伯爵令嬢カテナは、メンジャー侯爵家のセラ嬢とその取り巻きたちが、美しいが大人しいシリーナ・ニュリンゲ伯爵令嬢を囲んでいることに気がついた。
「カティ、側を通り過ぎて何を話しているのか聞いてきてくれない?」
「了解ですわ!」
リリアンジェラにしかわからないニヤニヤ笑いを浮かべたカテナが、令嬢たちの間を縫うように戻ってくると、すーっと近づいて耳元で囁いた。
「聞いて参りましたわ!なんと、セラ様ってばエルロール様と婚約するのはご自分だと。シリーナ様に、伯爵家の令嬢如きが王子に選ばれるわけがないから弁えなさいって」
「まあ、やっぱり噂は本当だったのね!あの方って本当に自分がどれほどの者だと!」
リリアンジェラは前からよい噂を聞かないセラが嫌いだったが、なおさら拍車がかかる。
「それでシリーナ様は?」
「お友達のご令嬢が助けに入られて」
「ふうん、どちらの方?」
「ベリス伯爵令嬢ですわ」
「ああ、オリー様ね。それなら安心だわ」
「はい、伯爵家と言ってもベリス家はその辺の侯爵家では歯が立ちませんからね」
満足そうにリリアンジェラが頷くも。
「え、いやだ!まただわ!」
次の標的を見つけたらしいセラたちが、また別の伯爵令嬢を囲んでいる。どうやらまだ婚約者がおらず、エルロールの婚約者候補となれる伯爵家以上の令嬢がターゲットのようだ。
「わかりやすいわね。ねえカティ!助けてあげて!」
「畏まりっ!」
ニッと笑ったカテナが令嬢たちの間をすり抜け、今度は連れて戻ってきた。
リリアンジェラも親しいミサイヤ・ウィーサー伯爵令嬢である。
「あら、ミーシャ様でしたのね。メンジャー侯爵令嬢に不快なことを言われたりしなかったかしら」
リリアンジェラの口調が気安いものに変わる。
「リリ様、お気づきでしたの!ああ、それでカティ様を寄越して下さったのですね、助かりましたわ。
メンジャー令嬢が、私がエルロール殿下を狙っているみたいなことを仰るものですから、驚いてしまって」
「まあ、セラ様はミーシャ様がゴアミー侯爵令息と婚約間近とはご存知ないのね」
「そのようですわ。それにエルロール殿下に選ばれるのはセラ様だから、身の程を弁えるよう仰られて、もう私唖然としてしまいましたの!」
「まったく何様かしら!お兄様があんなの選ぶわけがないじゃない!もしそんなトチ狂ったことをお兄様やお父様たちが仰ったら、私が叩き潰してやりますわ!
あら、こんなこと言うの、はしたなかったかしら!おほほほほ」
もし国王がエルロールの婚約者にセラを選んだとしたら、リリアンジェラはそれが父だろうと許さないだろう。何をして止めさせるのかは想像するのも恐ろしいと、カテナもミサイヤも口を噤んだ。
タイムリミットまで残すところ一年を切ると、社交界は真っ二つに割れた。
エルロールを狙う者と興味がない者。
その日、城の広報部が開催した茶会は派閥の隔てのない大規模なもので、有象無象、はっきり言ってリリアンジェラが嫌いな令嬢たちも多く招かれたものだった。
王子たちは来ていないが、こんな日は情報収集に勤しむとリリアンジェラとカテナは決めている。
「リリ様、例のメンジャー侯爵令嬢がいらっしゃいましたわ」
噂によるとメンジャー侯爵家の令嬢セラは、自身も頻繁に茶会を催しては、招いたエルロールの婚約者候補たちを貶めるような暴言を吐いたり、圧力をかけたりしていると言われている。
噂ではなく、事実を公正に見なくてはいけない。
リリアンジェラは王族として常に公平にと教えられてきたことを、とりあえず自分の好き嫌いは関係なく実践した。
したのだが。
茶会の会場でリリアンジェラの刺すような視線を辿ったラミル伯爵令嬢カテナは、メンジャー侯爵家のセラ嬢とその取り巻きたちが、美しいが大人しいシリーナ・ニュリンゲ伯爵令嬢を囲んでいることに気がついた。
「カティ、側を通り過ぎて何を話しているのか聞いてきてくれない?」
「了解ですわ!」
リリアンジェラにしかわからないニヤニヤ笑いを浮かべたカテナが、令嬢たちの間を縫うように戻ってくると、すーっと近づいて耳元で囁いた。
「聞いて参りましたわ!なんと、セラ様ってばエルロール様と婚約するのはご自分だと。シリーナ様に、伯爵家の令嬢如きが王子に選ばれるわけがないから弁えなさいって」
「まあ、やっぱり噂は本当だったのね!あの方って本当に自分がどれほどの者だと!」
リリアンジェラは前からよい噂を聞かないセラが嫌いだったが、なおさら拍車がかかる。
「それでシリーナ様は?」
「お友達のご令嬢が助けに入られて」
「ふうん、どちらの方?」
「ベリス伯爵令嬢ですわ」
「ああ、オリー様ね。それなら安心だわ」
「はい、伯爵家と言ってもベリス家はその辺の侯爵家では歯が立ちませんからね」
満足そうにリリアンジェラが頷くも。
「え、いやだ!まただわ!」
次の標的を見つけたらしいセラたちが、また別の伯爵令嬢を囲んでいる。どうやらまだ婚約者がおらず、エルロールの婚約者候補となれる伯爵家以上の令嬢がターゲットのようだ。
「わかりやすいわね。ねえカティ!助けてあげて!」
「畏まりっ!」
ニッと笑ったカテナが令嬢たちの間をすり抜け、今度は連れて戻ってきた。
リリアンジェラも親しいミサイヤ・ウィーサー伯爵令嬢である。
「あら、ミーシャ様でしたのね。メンジャー侯爵令嬢に不快なことを言われたりしなかったかしら」
リリアンジェラの口調が気安いものに変わる。
「リリ様、お気づきでしたの!ああ、それでカティ様を寄越して下さったのですね、助かりましたわ。
メンジャー令嬢が、私がエルロール殿下を狙っているみたいなことを仰るものですから、驚いてしまって」
「まあ、セラ様はミーシャ様がゴアミー侯爵令息と婚約間近とはご存知ないのね」
「そのようですわ。それにエルロール殿下に選ばれるのはセラ様だから、身の程を弁えるよう仰られて、もう私唖然としてしまいましたの!」
「まったく何様かしら!お兄様があんなの選ぶわけがないじゃない!もしそんなトチ狂ったことをお兄様やお父様たちが仰ったら、私が叩き潰してやりますわ!
あら、こんなこと言うの、はしたなかったかしら!おほほほほ」
もし国王がエルロールの婚約者にセラを選んだとしたら、リリアンジェラはそれが父だろうと許さないだろう。何をして止めさせるのかは想像するのも恐ろしいと、カテナもミサイヤも口を噤んだ。
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