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シルベスでの出会い
第5話
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二軒目の店に行こうと、カーラたちがカフェを出た時のこと。
誰かに突き飛ばされてカーラが転びそうになった。
「危ない!カーラ様っ」
ナラとルブが飛びついたが間に合わず、通りがかったフードマントの男がカーラを抱きとめた。
「あ、危なかった」
「ご無事ですか?」
「カーラ様!」
護衛騎士四人と侍女3人が側にいたにも関わらず、怪我をするところだったカーラだが、まずは助けてくれた男に感謝の気持ちを伝えることを優先する。
「ありがとうございました、お陰様で怪我もなく助かりましたわ」
「いえ、それより何か摺られたりしていませんか?」
「「「えっ?スリ?」」」
「可能性は高いですよ、今すぐ確認したほうがいい」
カーラの持ち物はさっき買ったヘアピンとハンカチくらいな物だが、念のためにポケットを探る。
「大丈夫みたいですわ」
「あら?」
「どうしましたのトイル」
「巾着がないのですわ」
上着のポケットや手提げバッグを見たが、見つからない。
「カフェに忘れたということはない?」
「ええ、小さな手鏡とクリームが入っているだけで、出しておりませんもの」
「手鏡とクリーム?それ、コインが入っているような感じだったんじゃない?」
トイルはあっ!と声を上げた。
「そうかもしれません。金貨くらいの大きさでしたわ」
「じゃあ今頃悔しがっているかも知れないわね。それにしても」
カーラの視線は、まんまと摺りにやられた護衛騎士たちに冷たく突き刺さる。
「面目ない」
「そうね、お役御免してコーテズに帰りたい?」
「いや、もっと気をつけますから、このまま続けさせてください。お願いします!」
「エイミ、ナラもよ。もっと気をつけて!」
「申し訳ございませんカーラ様」
カーラとお付きの者たちのやりとりを、助けてくれた青年は見守っていた。
「大丈夫そうですか?」
「はい、お陰様で盗られた物も大したことない物ですわ」
「それは不幸中の幸いでしたね。コーデスからいらしたのですか?私たちの領地で外国の方にご迷惑をお掛けし、申し訳なく思います。お詫びに盗られた鏡の代わりになりそうな物を贈らせて頂きたいのですが」
「そんな、結構ですわ」
そう言ったカーラだったが。
「いえ、ぜひそのようにさせてください。ヴァーミルの思い出が悪い物になってしまったら悲しいですし」
目深に被っていたフードを上げた青年がその顔を太陽の下に晒すと、あまりの美しさにカーラまで見惚れてしまう。
シルベス人には珍しくもない、フードの内側に隠れていた艶々の銀の髪がはらりと落ちてその毛先の動きを追うと、美しい深いアメジストのような瞳とかち合った。
青年がにこりと微笑むと、女性陣はぽうっと頬を赤らめる。
護衛たちは呆れ顔だ。
「あの・・・・・、ではお言葉に甘えてそのように」
小さな声でカーラが答えた。
誰かに突き飛ばされてカーラが転びそうになった。
「危ない!カーラ様っ」
ナラとルブが飛びついたが間に合わず、通りがかったフードマントの男がカーラを抱きとめた。
「あ、危なかった」
「ご無事ですか?」
「カーラ様!」
護衛騎士四人と侍女3人が側にいたにも関わらず、怪我をするところだったカーラだが、まずは助けてくれた男に感謝の気持ちを伝えることを優先する。
「ありがとうございました、お陰様で怪我もなく助かりましたわ」
「いえ、それより何か摺られたりしていませんか?」
「「「えっ?スリ?」」」
「可能性は高いですよ、今すぐ確認したほうがいい」
カーラの持ち物はさっき買ったヘアピンとハンカチくらいな物だが、念のためにポケットを探る。
「大丈夫みたいですわ」
「あら?」
「どうしましたのトイル」
「巾着がないのですわ」
上着のポケットや手提げバッグを見たが、見つからない。
「カフェに忘れたということはない?」
「ええ、小さな手鏡とクリームが入っているだけで、出しておりませんもの」
「手鏡とクリーム?それ、コインが入っているような感じだったんじゃない?」
トイルはあっ!と声を上げた。
「そうかもしれません。金貨くらいの大きさでしたわ」
「じゃあ今頃悔しがっているかも知れないわね。それにしても」
カーラの視線は、まんまと摺りにやられた護衛騎士たちに冷たく突き刺さる。
「面目ない」
「そうね、お役御免してコーテズに帰りたい?」
「いや、もっと気をつけますから、このまま続けさせてください。お願いします!」
「エイミ、ナラもよ。もっと気をつけて!」
「申し訳ございませんカーラ様」
カーラとお付きの者たちのやりとりを、助けてくれた青年は見守っていた。
「大丈夫そうですか?」
「はい、お陰様で盗られた物も大したことない物ですわ」
「それは不幸中の幸いでしたね。コーデスからいらしたのですか?私たちの領地で外国の方にご迷惑をお掛けし、申し訳なく思います。お詫びに盗られた鏡の代わりになりそうな物を贈らせて頂きたいのですが」
「そんな、結構ですわ」
そう言ったカーラだったが。
「いえ、ぜひそのようにさせてください。ヴァーミルの思い出が悪い物になってしまったら悲しいですし」
目深に被っていたフードを上げた青年がその顔を太陽の下に晒すと、あまりの美しさにカーラまで見惚れてしまう。
シルベス人には珍しくもない、フードの内側に隠れていた艶々の銀の髪がはらりと落ちてその毛先の動きを追うと、美しい深いアメジストのような瞳とかち合った。
青年がにこりと微笑むと、女性陣はぽうっと頬を赤らめる。
護衛たちは呆れ顔だ。
「あの・・・・・、ではお言葉に甘えてそのように」
小さな声でカーラが答えた。
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