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夢は交錯する

第6話

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「だから罰金だ」
「え?それだけですか?」
「だから信じられんと言うんだ。まあそうせざるを得ない事情もあったんだけどね。本来、四家の辺境伯に問題が起きたら。
普通は後継がないまま亡くなった時なんだが、他の辺境伯家のスペアを後継に迎えることに決まっているんだ」
「まあ、存じませんでしたわ」
「王家と辺境四家だけの暗黙のルールだからね。しかし、あの時はマトウ様と挿げ替えできる者がいなかったんだよ。各家とも男子が一人づつしかいなくて、マトウ様のことは片目を瞑って続けさせるしか。辺境伯家というのはいろいろ特殊だからこそ、多額の補助金も毎年受けられるし、役目を全うしていれば侯爵と変わらないほどの力を陛下から与えてもらえるというのに、マトウ様は何か勘違いしてしまったんだろうなあ」

 カーラも知らなかったことをケリンガンの話して知り、漸く腹に落ちたこともあった。

「ケリンガン様、私も浅からぬ縁がローリスとはございます。先程も申しましたが、商会を起こした暁には町の発展に助力したいと思っておりますわ。ヴァーミルに負けるな!ですわね」


 こうして、一度断ち切れたローリスとの縁は新たに最良の形で結び直され、カーラたちはヴァーミルへと旅立った。



「いよいよ!ヴァーミルね。そういえばヴァーミル侯爵家にもご挨拶に伺いたいわ。花茶はどうしたかしら」
「先触れを出しますか」

 ナラの声にカーラは頷いた。

「いつなら訪問してよろしいかお伺いを立てて!待っている間にまずはあの宿に行きましょ」




 あの宿、そうヴァーミルに初めて来たとき、たまたま泊まったところだが、カーラがシルベスもといヴァーミル行きを決めた理由の一つでもある。

 フルフラウホテル!

 可愛らしい内装、部屋のブラシひとつまで気を配った素晴らしい宿だと、カーラはその記憶を確かめに来たのだ。

「あれよ!」

 今回は馬車一台多い分、護衛も四人増えている。あの可愛らしい宿にむさ苦しい男を9人も泊めさせるのは心苦しいが、カーラはボビンに全員で泊まりたいと、宿に頼み込ませた。

「本日は9名様ではお部屋はお取りできないのですが、コテージをご利用になられるのは如何でしょうか」
「コテージ?」
「はい、ご覧になりますか?」

 ボビンはカーラに空き部屋が少ないことと、コテージなら借りられると相談に戻ってきた。

「見せてくれるそうですよ」
「じゃあ見てから決めるわ」

 宿の支配人らしい男が鍵をぶら下げながらやってきた。

「ではこちらへ」

 宿の中を抜け、裏口に出ると厩舎と預かった馬車の保管場所が現れた。その先を小道に沿って歩くと庭が拓けて小ぶりのコテージが現れた。


「か・・わ・・・いぃ!何これっ!」
「お気に召しましたか?」
「ええ、中は?中も見せて」
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