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夢は交錯する

第5話

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 カーラの言いたいことを理解したケリンガンは、困ったように眉尻を下げる。

「もともとシルベスは好戦的な国ではないようですし、友好を結ばれれば、ゲルドに注意を絞れると思うんです」

 それは町の立て直しをしなければならないケリンガンにとり、貴重なアドバイスとなった。
 辺境伯だから武力さえ手厚くしておけばよいわけではなく、領民たちの生活も見てやらねばならない。
産業がなければ町は衰退してしまうのだ。

「落ち着いたら、カーラ嬢の忠告も考えてみよう」
「ええぜひ!道を石敷きにするだけでも随分と印象が変わると思います。ここは本当に埃っぽくて嫌に・・・あ、な、なんでもございませんわ」
「いや、いいよ。埃っぽくて嫌になるのは私も思っているからな。しかし、辺境伯には毎年国からかなりの助成があるのに、町の整備をせず軍事力を上げるためだけに使っていたのか?まだ使徒不明な金がはっきりしないんだが、ここは闇が深そうだよ」
「そうですね?でもケリンガン様ならすぐに調べ上げて正されますでしょ?領民たちもこれからは安心ですね。
私の商会が活動を始めましたら、ぜひ支店を置かせて下さい!微力ながら町の発展にご協力したいですわ」

 その夜カーラは前回の滞在も含めて初めて、ローリス家の晩餐に招かれた。
招いてくれたのは新しい当主ケリンガンだが。

「そういえばカーラ様は次の婚約はどうするんだ?」
「白紙ですわ。いろいろありすぎましたから、暫くはいいかなと思っております。そういうケリンガン様は?ボルブにいらした頃婚約されていませんでしたの?」
「いや、私は兄のスペアだったからな。ローリスに入ることになって、陛下が誰か見繕うのだろうと思っていたんだが、今回のことで陛下も思うところがあったらしい。国が選んだ令嬢のなかから、顔合わせして気に入った相手と娶せると言われたよ」
「そうですか!もう二度とマトウ様の奥様や本物のノーラン様のような目に合う方は現れないと言うことですわね」



 辺境ローリスに赴く際に、ケリンガンはわかる限りマトウの行いを調べていた。

「貴族だから諦めねばならないこともあるが、辺境伯が王命を反故にして他国人と結婚したのは、やっぱりまずかったよな。しかし一番驚いたのは、それなら妻と別れこどもを王命に従わせるから自分の罪はチャラにと強請られて、うんと言った先代陛下だよ」

 唇に人さし指を当てながら、ケリンガンは片目を閉じて見せる。

「マトウ様にはその時どれほどのペナルティが与えられたかご存知ですの?」
「まずかなりの罰金が科せられた」

 それから?とカーラが期待の目を向けた。
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