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第六話「闇のみなさまサヨウナラ・・・」
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ツボの中でもがく様は宇宙遊泳と同じ感覚なのだろう。幾千の星の瞬きをハッキリと目にすることができる。寒さは感じない。おそらく肉体を離れ魂だけが、この世界を自由に行き来できるのだろう。
「あれだ!」
闇の中に見慣れた星がある。地球・・・。だが、その手前に巨大な遺物が見下ろしているかのように存在している。母船のUFOだ。
「まごまごしている余裕はないな。」
遊泳を満喫する暇なく敵の牙城に二人は乗り込んだ。動力室の狭い隙間に潜む影、あかりの灯さない部屋。UFOの内部でも存在する暗闇のフロアへはどこにも出入りすることが可能だ。とりあえず誰も出入りしない動力部をアスカの呪文で破壊する。
その衝撃でUFOが傾く。鈍い音がした、墜落するかもしれない。それならば時間がない。二人はこの空間のもっとも広いフロアに入り込んだ。ダンスフロアといったところか。船体中央にあるそのフロアは戦闘で使用しないからか灯りがついた様子はない。僕たちの意見は一致してその場所をヤミ伝いに移動する。
そこは光が一切届かない世界で僕も先輩も互いを見ることができない。
そこには一つのシルエットがあった。ほっそりとした身体の輪郭を覆う黒髪のようなものがスカートのように下に広がり凛々しく立っている。僕たちは一眼でそれがこの船を指揮する女王であることを察した。
その女王は手にカプセルを手にしている。ちょうど赤ん坊を抱き抱えるようだ。そのカプセルの透明部分には人魂のような火が弱々しく瞬いたいる。
(招き入れられたようだ。)先輩は呟く。
「どうやら、この星の生き物は科学には及ばない特殊技法を駆使することができるようだ。しかし、我々は使命を果たさなければならない。この地球を救うために。」
NR-01と呼ばれるその女王はスピーカーからエコーをかけたかのように言葉を発した。
「地球を救う?地球の侵略者が何をいう。」
「確かに君たちにとってはそう思うであろう。だが我々は星団連合の中では地球の保全はでな、多くの星々のものは地球がこの宇宙の宙流を乱す存在として消滅させることを主張している。」
「宙流?」
ダークマターを潤滑に行き渡らせるための回流。宇宙にはそれを安定させるための流れが存在する。しかしながらその行き先に存在する地球は川の水流を堰き止める砂利のだという。
その砂利である地球を消滅させるべきか?存続すべきか?星間連合は協議の末、投票による採決を行うこととなった。
「だが、消滅への反対票を投じるためには多くの有権者がいる。それは命を有するものでなくてはならない。しかし、我らが星のものには命という概念がない。」
「だから地球人の生命を狙ったと言うわけか。」
「この異世界の人々は生命が存在しないようだ。命あるものは竜型の生物のみ。」
そう言って女王はカプセルをより強く抱える。その中に灯された炎がさらに小さくなっていくのが見えた。
「・・・だが、その野望ももうすぐ終わる。」
そう呟くと唐突にアスカは呪文を唱えた。
「無駄だ、私に貴様の攻撃などは効かん!」
「いや、俺が打つのはこの世界だ!」
僕ははじめアスカの言う意図が理解できなかった。だが、彼の暴挙が本気である事を理解した時にはすでに遅く、「やめろ!」と声を出す前にアスカの呪文は肉体を使って壺を叩き割った。
クラウンの壺からは無限の洪水が放たれて世界を闇で埋め尽くした。それは地球だけでなく光という光全てを飲み込みこの世界を無に変えて消滅していった。
混沌を終息させるブラックホール。それを創り出すことがアスカの狙いだった。
鉛色の女王もその渦の中に飲み込まれる。その断末魔とともにその体は原子崩壊していく。仕留めたアスカは転送された魂が消滅しながらもその最後をじっと見届けた。
「あれだ!」
闇の中に見慣れた星がある。地球・・・。だが、その手前に巨大な遺物が見下ろしているかのように存在している。母船のUFOだ。
「まごまごしている余裕はないな。」
遊泳を満喫する暇なく敵の牙城に二人は乗り込んだ。動力室の狭い隙間に潜む影、あかりの灯さない部屋。UFOの内部でも存在する暗闇のフロアへはどこにも出入りすることが可能だ。とりあえず誰も出入りしない動力部をアスカの呪文で破壊する。
その衝撃でUFOが傾く。鈍い音がした、墜落するかもしれない。それならば時間がない。二人はこの空間のもっとも広いフロアに入り込んだ。ダンスフロアといったところか。船体中央にあるそのフロアは戦闘で使用しないからか灯りがついた様子はない。僕たちの意見は一致してその場所をヤミ伝いに移動する。
そこは光が一切届かない世界で僕も先輩も互いを見ることができない。
そこには一つのシルエットがあった。ほっそりとした身体の輪郭を覆う黒髪のようなものがスカートのように下に広がり凛々しく立っている。僕たちは一眼でそれがこの船を指揮する女王であることを察した。
その女王は手にカプセルを手にしている。ちょうど赤ん坊を抱き抱えるようだ。そのカプセルの透明部分には人魂のような火が弱々しく瞬いたいる。
(招き入れられたようだ。)先輩は呟く。
「どうやら、この星の生き物は科学には及ばない特殊技法を駆使することができるようだ。しかし、我々は使命を果たさなければならない。この地球を救うために。」
NR-01と呼ばれるその女王はスピーカーからエコーをかけたかのように言葉を発した。
「地球を救う?地球の侵略者が何をいう。」
「確かに君たちにとってはそう思うであろう。だが我々は星団連合の中では地球の保全はでな、多くの星々のものは地球がこの宇宙の宙流を乱す存在として消滅させることを主張している。」
「宙流?」
ダークマターを潤滑に行き渡らせるための回流。宇宙にはそれを安定させるための流れが存在する。しかしながらその行き先に存在する地球は川の水流を堰き止める砂利のだという。
その砂利である地球を消滅させるべきか?存続すべきか?星間連合は協議の末、投票による採決を行うこととなった。
「だが、消滅への反対票を投じるためには多くの有権者がいる。それは命を有するものでなくてはならない。しかし、我らが星のものには命という概念がない。」
「だから地球人の生命を狙ったと言うわけか。」
「この異世界の人々は生命が存在しないようだ。命あるものは竜型の生物のみ。」
そう言って女王はカプセルをより強く抱える。その中に灯された炎がさらに小さくなっていくのが見えた。
「・・・だが、その野望ももうすぐ終わる。」
そう呟くと唐突にアスカは呪文を唱えた。
「無駄だ、私に貴様の攻撃などは効かん!」
「いや、俺が打つのはこの世界だ!」
僕ははじめアスカの言う意図が理解できなかった。だが、彼の暴挙が本気である事を理解した時にはすでに遅く、「やめろ!」と声を出す前にアスカの呪文は肉体を使って壺を叩き割った。
クラウンの壺からは無限の洪水が放たれて世界を闇で埋め尽くした。それは地球だけでなく光という光全てを飲み込みこの世界を無に変えて消滅していった。
混沌を終息させるブラックホール。それを創り出すことがアスカの狙いだった。
鉛色の女王もその渦の中に飲み込まれる。その断末魔とともにその体は原子崩壊していく。仕留めたアスカは転送された魂が消滅しながらもその最後をじっと見届けた。
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