「日本で伴侶を見つけるまで帰ってくるな」と言われた魔王子

いくつになっても中二病

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第1話 異世界で伴侶を見つけるまで戻ることは許さん——

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「異世界で伴侶を見つけるまで戻ることは許さん——」

 珍しく親父でもある魔王シタンに呼び出されたと思えば、第一声でそう告げられた。

「ハァ? どういうことだよ親父」

「言葉通りの意味だ。あとはベアルに任せてある。元気でやれ、我が息子よ」

 親父にそう言われた途端、足元に魔法陣が浮かび上がる。これは——高度な転移魔法の陣だ。


 ってかマジで異世界に飛ばす気か!? 俺はこの魔国の王子だぞ!?
 大体、「伴侶を見つけろ」ってどういうことだ!! そんなもの上級悪魔の娘から適当に選べばいいだろ!! 何故わざわざ異世界に行ってまで探さなくちゃいけない!!

 そんなことが脳内を駆け巡る間も魔法陣には魔力が集まっていく。

「ちょっと待て!! いつもそうだがもう少し説明しろ!!」

「男は多くを語らん。覚えておけ、息子よ」

 ピキッ。

 いつもそうだ。大事なことはいつも何も話さない。母上が……死んだ時だって。

「ちっ、わかったよ! 伴侶でもなんでも速攻で見つけて帰ってきてやらぁ!! そしたら一発殴らせろクソ親父!!」

 指を差してそう宣言する。

 すると親父は、

「あぁ。楽しみにしているぞバカ息子よ」

 名残惜しいといった表情でそう言った。
 なんだその顔。お前が仕組んだんだろうがっ!!

 視界が徐々に白くなっていく。
 これは転移特有の感じだ。この後浮遊感を感じて——

 俺は異世界に転移させられた。


 **************


「本当に……よろしかったのですか? 魔王様」

「……支度する。忙しくなるぞ」

「はい……失礼します」



「サクラよ……リエンが行ったぞ」


 **************

 ぼやけていた意識と白く染まった視界が次第に戻っていく。

 ここは……見知らぬ部屋だ。やけに狭い部屋だな。天井も低い。

「お越しになりましたか、坊っちゃま」

 転移してすぐに後ろから声を掛けられる。その声には聞き覚えがあった。
 男の名はベアル。親父の側近で上級悪魔の一人だ。

 白い髭に白い髪が特徴的な爺さん。

「ベアルか。ったくあの親父は……」

「魔王様も期待しております。リエン坊っちゃまが綺麗な伴侶を見つけて魔界に戻ることを」

「坊っちゃまはやめろ。速攻で帰ってやる……というか、ここはどこだ?」

「ここは異世界です」

「それは知っている。魔力の濃度が薄いからな。下位世界か?」

「いえ、魔力は薄くともこの異世界は文明や歴史など、様々な面で我々の世界よりも上位の世界です」

 納得がいかんな。魔力が薄いということは強い奴もいないだろう。
 こんな世界であれば俺が支配することだって容易いはずだ。

「それと坊っちゃま、こちらに異世界生活での注意事項が書いてありますので御一読ください」

 注意事項? そんなのまで用意されているのか。なになに?

 ————————————

 リエンよ。
 伴侶を見つける異世界生活では、以下のことを守るように。
 守れない場合は魔界に帰ることを禁ずる。

 ・人間を殺さない
 ・魔法を使わない
 ・郷に入っては郷に従う
 ・他人に優しく、自分に厳しく
 ・真に愛する人を伴侶とする

 以上。

 魔王シタン

 ————————————

 はぁぁぁぁ!? 人間を殺すのは禁止!? 魔法の使用も禁止!?
 それになんだこの「郷に入っては郷に従う」って。難しい言葉を使うなバカ親父!!

 最後の愛する人については最早意味がわからない。

 愛? なんだそれ。そんなもの生きていく上で一番不要な感情だ。
 どうせ皆、本当は一人なんだからな。

 まぁ魔法など使わなくても伴侶を探すことくらい造作もない。

「面倒なことをしやがって親父め」

「私が監視してますので出し抜くことは困難だと思われますよ、坊っちゃま」

「別に魔法なんか使わなくても伴侶くらい見つけられる。それで、俺は何をすればいい?」

 親父は、「あとはベアルに任せてある」と言っていた。であれば今後についてもベアルに聞けばわかる。

「はい。リエン坊っちゃまには、この異世界の学校に通って頂きます」

「ガッコウ? なんだそれは」

「我々の世界での魔術師教育機関といったところでしょうか。同じ年齢の子供達が集団で様々なことを学ぶ場です」

「教育機関? なんで今更そんなのに通わなければいけないんだよ」

「なんでも伴侶を見つけるのに、ここ日本の学校は最適だという情報を得ています」

「ここはニホンという場所なのか。いいだろう。そういうことなら早くニホンのガッコウとやらで伴侶を見つけてやろう」

「その意気ですよ、リエン坊っちゃま」

「だから坊っちゃまはやめろと——」


 こうして俺の異世界生活が始まった。

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