「日本で伴侶を見つけるまで帰ってくるな」と言われた魔王子

いくつになっても中二病

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第2話 伴侶候補その1、西園 菫

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「リエンだ。よろしく頼む」

 パチパチ

 異世界に来て二日目、俺はガッコウとやらに来ていた。

 俺が来るまでに様々な手続きを終えていたらしい。妙に準備がいいな。

 ここに来るまでベアルの後を付いて来ただけなので、正直何が何だかよくわかっていない。

 言われるがままにセイフク? とやらを着て、言われるがままにガッコウに来て、言われるがままにショクインシツ? に挨拶をしてベアルとは一旦別れた。

 ショクインシツからはセンセイ? とやらの後を付いて来た。

 そして辿り着いたのが、このキョウシツなる部屋だ。

 キョウシツには40人程度の人間がいた。こいつらがここで魔法の教育を受けているのか。

「リエンの席はあそこの空いている席だ。西園、頼んだぞ」

「はい、先生」

 女が後方で返事をする。なるほど、あいつはニシゾノというのか。

 ちなみに言語に関してだが、こちらの世界の言葉を変換してくれる魔道具により会話は聞き取れた。逆に俺が喋ったことも変換して相手に伝わるので意思の疎通に問題はない。

 これはベアルの発明らしい。いい仕事をするなベアルよ。

 とりあえずニシゾノの元へと向かう。今度はニシゾノに付いていけばいいのだろうか?

「初めまして、リエンくん。西園 菫にしぞの すみれです。よろしくね」

「リエンだ。よろしく頼む」

「ふふふ」

 笑われた。なんだ? 変なことでも言ったか?

「あ、ごめんね。さっきと同じことを言ってたから思わず笑っちゃった」

「おかしいか?」

「おかしくはないかな?」

 そんな会話をしていると、センセイから声がかかる。

「あぁ西園。リエンは帰国子女だからあまり日本語が得意じゃない。そこら辺頼んだぞ」

「だとよ」

「帰国子女なんだ? 意外だね」

 キコクシジョ? あぁ。異世界から来た者のことを指すのか。俺だって馬鹿じゃない。それくらいは会話の流れで察することが出来る。

「あぁ。そうだなキコクシジョだ」

「ふふふ」

「何が可笑しい」

「自分のことを帰国子女ってあんまり言わないかなって」

「そういうものか」

「うん。そういうもの」

 なんだこいつ。さっきから笑ってばかりだな。それよりも、伴侶はもうこいつでいいんじゃないか?

「なぁニシゾノよ」

「菫でいいよ」

「ん? スミレは家名じゃないのか?」

「あ、海外ではそうだよね。日本では家名が先で、名前が後ろなの」

 ほう。これは有益な情報を聞いたな。

「そうか。それじゃスミレ、俺の伴侶にならないか?」

 と言った途端、キョウシツ内の奴らが急に騒ぎ出した。

「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?」

「いきなり告白!?」

「編入生をすぐに惚れさせてしまう西園さん恐るべし!!」

「抜け駆けしやがってぇぇぇ!!! ちょっと顔がいいからってよぉ!!」

「上等じゃねぇかぁぁあ!! 表出ろやぁぁ!!」

 騒がしい奴らだな。ここは魔獣湧きポイントか。



「いいよ」





「え?」

「え?」

「え?」

「は?」

「ほう」

「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええ!?!?」」」」

 よし、これで伴侶は見つかった。魔界に帰るか。簡単だったな。

「リエン君は、私のこと好き?」

 と思ったら突然スミレが変なことを言い出した。
 好き? 初めて会った奴のことを好きなわけないだろう。

「いや、別に好きではない。まだ出会ったばかりだろう」

「そうなの? それじゃやっぱダメ」

 は? なんだこいつ。おちょくってるのか?

「伴侶になるってことは好き同士じゃないとダメなんだよ?」

「なんだそれは。ニホンではそうなのか?」

「う~ん、普通はそうかな。ちょっと……生まれた家によってはそうとも言えないんだけど……」

「おいお前ら、いつまで騒いでいるつもりだ。授業するぞ~」

 センセイが一言。それだけでキョウシツ内が静まり返った。まるで軍みたいだな。となるとセンセイはここにいる奴らよりも偉い地位にいるのか。

 何にせよ伴侶候補は見つかった。あとはスミレを懐柔するだけだ。

 よし、思ったよりも早く魔界へ帰れそうだな。

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