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第16話 満更でもない伴侶候補達
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この世界に来てイッシュウカンが経過したらしい。
らしいと言うのは、まだニホンの時間の感覚がわからないからだ。
タイヨウという星が空に浮かんでいる間は朝、それ以外は夜という感覚は魔界と似ているが、それを七回繰り返すとイッシュウカンと言うらしい。
加えてそれを約四回繰り返すとイッカゲツと言うらしい。
さらにはそれを十二回繰り返してイチネンと言うらしい。
なるほど。わからん。
魔界でも昨日今日といった文化はあるが、ネンやカゲツなどややこしくはない。
精々あるとしても古代か今かくらいだ。
「そういえばリエン君はなんで魔法を使わないの?」
「言われてみればそうですわね。あれだけ魔力操作の能力にも長けているのであれば、魔法が使えないということはありませんわね?」
セイトカイシツでジムの作業を手伝っていると、スミレとアオイに問いかけられる。今この部屋にいるのはイチネンのセイトカイメンバーだけだ。
俺もこのイッシュウカンでニホンゴを覚えて来たな。「セイトカイ」、「メンバー」は特に簡単なニホンゴだ。ジム作業は何一つわからないがな。
「あぁ。親父の言い付けだ。ニホンにいる間は魔法を使ってはいけないというな」
「へぇ……お父さん厳しい人なの?」
「魔法を学ぶ学校で魔法を使ってはいけないなんて、なんとも不憫なことですわね」
「魔法を使ったらもっと強いのですか?」
スミレ、アオイとの会話中に入ってきたのはカエデだ。
カエデはイッシュウカン前からホウカゴになると「私と戦ってほしいです」「私に教えてほしいです」「今日も訓練場に行きますか?」と言われ続けて来た。もちろん俺も予定があるわけではないので付き合ったが。
カエデはすごい。俺が教えたことをすぐに我が物としていく。
教えがいのある弟子のような存在だ。伴侶候補ではあるがな。
「あぁ。魔法を使ったらこの世界の誰にも負けない自信はある」
「誰にも……? それはありません。いくらあなたでも父上には勝てるわけがありません」
父上? カエデの親父は強いのか?
「楓さんのお父さんはね、海軍の大将なんだ。この日本を外敵から最前線で守っている偉い人なんだよ」
スミレが教えてくれだ。とはいえカイグンやタイショウなどわからない言葉だらけだがな。
「なるほど。手合わせしてみたいものだな」
「父上はお忙しいので家に帰ってくるのは年に一、二回です。ですがもし帰って来ることがあればご紹介致しましょう。父上は強者がお好きですので」
「あら楓さん? 抜け駆けですの? それでしたらリエン、私のうちにも遊びに来るといいですわ」
「ちょっと待ってよ二人とも! それだったら告白された私の家が先——」
「告白?」
「告白したのですか?」
「コクハク? なんだそれは」
「あら、リエンはご存知無いようですが?」
「リエン君……はぁ。告白っていうのはね、あなたのことを好きですって伝えることだよ。最初に会ったときに言ってくれたでしょ? 伴侶にならないか? って」
言った気がするな。
「まぁ、大胆ですのね。ではリエンは菫さんに一目惚れしましたの?」
「ヒトメボレ? よくわからんが、俺は伴侶候補を探すためにこのニホンに来たんだ。だからスミレにはどうかと尋ねただけだ」
「だそうですよ?」
「そんなことだろうとは思ってたけどね。はぁ、乙女のハートが傷ついちゃったな」
「でもそれですと私達はその願いを叶えることが出来そうにありませんわね」
「何故だ? 好きじゃないとダメなのか?」
「そうではありませんが、私達の家はそれなりに有名な家ですので婚約者は親が選ぶのですよ。優秀な遺伝子を相続させるためにですわ」
なるほど。さっぱりわからん。
「残念ながらお前達は俺の伴侶候補だ。諦めてくれ」
「諦めてくれって……強情ですわね」
「よくわかってないだけみたいだよ?」
「私は強い男と結婚する。父上も強ければ許可してくださるはずだ」
「なんで私も……」
うむ。四人とも伴侶候補が嫌という感じには見えないな。
やはりこの四人の中から伴侶を選ぶしか無いだろう。
「やっほーー!! 何恋バナ?」
「会長、部屋に入ってくるときはノックをと」
「あ、ごめんね東郷さん。それよりもこれ!! 持って来たよ!!」
セイトカイシツに入って来たのはオボロだ。
オボロは何やら丸めた大きな紙を机に置くと、それを開いてみせた。
「じゃじゃーん!! 学年別デュエルランキングの組み合わせ!! いやぁ~大変だったよ! これは一年生の分ね!」
紙の端の方にはニホンゴが大量に書かれており、それが中央に向かって線で繋がっているものだった。これがなんだというのか。
「遂に始まるのですね! ランキング戦!」
「みんなには期待してるから頑張ってねー! もちろん——」
オボロはそこまで言うと、突然空気を変えて言葉を発する。
「生徒会に負けは許されないけどね」
らしいと言うのは、まだニホンの時間の感覚がわからないからだ。
タイヨウという星が空に浮かんでいる間は朝、それ以外は夜という感覚は魔界と似ているが、それを七回繰り返すとイッシュウカンと言うらしい。
加えてそれを約四回繰り返すとイッカゲツと言うらしい。
さらにはそれを十二回繰り返してイチネンと言うらしい。
なるほど。わからん。
魔界でも昨日今日といった文化はあるが、ネンやカゲツなどややこしくはない。
精々あるとしても古代か今かくらいだ。
「そういえばリエン君はなんで魔法を使わないの?」
「言われてみればそうですわね。あれだけ魔力操作の能力にも長けているのであれば、魔法が使えないということはありませんわね?」
セイトカイシツでジムの作業を手伝っていると、スミレとアオイに問いかけられる。今この部屋にいるのはイチネンのセイトカイメンバーだけだ。
俺もこのイッシュウカンでニホンゴを覚えて来たな。「セイトカイ」、「メンバー」は特に簡単なニホンゴだ。ジム作業は何一つわからないがな。
「あぁ。親父の言い付けだ。ニホンにいる間は魔法を使ってはいけないというな」
「へぇ……お父さん厳しい人なの?」
「魔法を学ぶ学校で魔法を使ってはいけないなんて、なんとも不憫なことですわね」
「魔法を使ったらもっと強いのですか?」
スミレ、アオイとの会話中に入ってきたのはカエデだ。
カエデはイッシュウカン前からホウカゴになると「私と戦ってほしいです」「私に教えてほしいです」「今日も訓練場に行きますか?」と言われ続けて来た。もちろん俺も予定があるわけではないので付き合ったが。
カエデはすごい。俺が教えたことをすぐに我が物としていく。
教えがいのある弟子のような存在だ。伴侶候補ではあるがな。
「あぁ。魔法を使ったらこの世界の誰にも負けない自信はある」
「誰にも……? それはありません。いくらあなたでも父上には勝てるわけがありません」
父上? カエデの親父は強いのか?
「楓さんのお父さんはね、海軍の大将なんだ。この日本を外敵から最前線で守っている偉い人なんだよ」
スミレが教えてくれだ。とはいえカイグンやタイショウなどわからない言葉だらけだがな。
「なるほど。手合わせしてみたいものだな」
「父上はお忙しいので家に帰ってくるのは年に一、二回です。ですがもし帰って来ることがあればご紹介致しましょう。父上は強者がお好きですので」
「あら楓さん? 抜け駆けですの? それでしたらリエン、私のうちにも遊びに来るといいですわ」
「ちょっと待ってよ二人とも! それだったら告白された私の家が先——」
「告白?」
「告白したのですか?」
「コクハク? なんだそれは」
「あら、リエンはご存知無いようですが?」
「リエン君……はぁ。告白っていうのはね、あなたのことを好きですって伝えることだよ。最初に会ったときに言ってくれたでしょ? 伴侶にならないか? って」
言った気がするな。
「まぁ、大胆ですのね。ではリエンは菫さんに一目惚れしましたの?」
「ヒトメボレ? よくわからんが、俺は伴侶候補を探すためにこのニホンに来たんだ。だからスミレにはどうかと尋ねただけだ」
「だそうですよ?」
「そんなことだろうとは思ってたけどね。はぁ、乙女のハートが傷ついちゃったな」
「でもそれですと私達はその願いを叶えることが出来そうにありませんわね」
「何故だ? 好きじゃないとダメなのか?」
「そうではありませんが、私達の家はそれなりに有名な家ですので婚約者は親が選ぶのですよ。優秀な遺伝子を相続させるためにですわ」
なるほど。さっぱりわからん。
「残念ながらお前達は俺の伴侶候補だ。諦めてくれ」
「諦めてくれって……強情ですわね」
「よくわかってないだけみたいだよ?」
「私は強い男と結婚する。父上も強ければ許可してくださるはずだ」
「なんで私も……」
うむ。四人とも伴侶候補が嫌という感じには見えないな。
やはりこの四人の中から伴侶を選ぶしか無いだろう。
「やっほーー!! 何恋バナ?」
「会長、部屋に入ってくるときはノックをと」
「あ、ごめんね東郷さん。それよりもこれ!! 持って来たよ!!」
セイトカイシツに入って来たのはオボロだ。
オボロは何やら丸めた大きな紙を机に置くと、それを開いてみせた。
「じゃじゃーん!! 学年別デュエルランキングの組み合わせ!! いやぁ~大変だったよ! これは一年生の分ね!」
紙の端の方にはニホンゴが大量に書かれており、それが中央に向かって線で繋がっているものだった。これがなんだというのか。
「遂に始まるのですね! ランキング戦!」
「みんなには期待してるから頑張ってねー! もちろん——」
オボロはそこまで言うと、突然空気を変えて言葉を発する。
「生徒会に負けは許されないけどね」
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