18 / 42
休学し旅行へ② 動物園編
しおりを挟む
半蝿の処理をし終えた後、動物園に向かう前に
宿で一泊する。どうせならと部屋に温泉がある宿を選ぶ。
三人で温泉に浸かりながら語り合う。不意にバックがウェイの背中の傷に触れた。
「痛くなかったの?」
するとウェイがニッコリ笑って言った。
「ワタクシ、痛みを耐える訓練もさせられましたので、ほとんどの傷はかすり傷と同等ですわ」
痛みを耐える訓練、それは想像してもわからない。バックが考えながら、どんな訓練だったのかを聞くと、ウェイは苦笑した。
「ひたすら激痛を受け続けるんですわ。そうすれば大抵の痛みには慣れますわ」
他にも毒への耐性をつける訓練や、射撃と剣戟の訓練など、普通では考えられない訓練が挙げられる。
「苦しいとは思わなかったの?」
「最初は苦痛で逃げ出しましたわ。でも師匠に連れ戻されては、それを繰り返しましたの。ですから師匠の顔は見たくありませんわ」
ウェイが師匠を嫌いな理由、それはその世界に連れ込んだ事にもある。
「ですが感謝もしてますの。こうしてバックを守れるのはその訓練があったからですわ」
エラは素直に感心した。ウェイは本当にバックのために命を懸けているのだと。自分にできることは何かないかと焦りもするエラ。
その様子を見てウェイは笑った。そしてエラの肩を叩いて頬にキスをした。
「ちょ、ちょっとウェイ!」
「エラ、あなたはあなたらしくいたらよろしいのですわ。ワタクシにできなくて、あなたにできることは必ずありますわ」
「そうかな? それならいいけど」
ウェイは本当に大胆な子だとエラは思う。そんなウェイの言葉を聞いて、自分らしさを貫けばバックの役に立てるのかもしれないという考えに辿り着けて、感謝するエラ。
外を見ると川のほとりがキラキラと光っていた。湯船から上がりベッドに寝転がると、明日の事が思い浮かぶ。
すうっと眠りにつくバックとエラを見て、ウェイは部屋を出て、電話をかけた。
「ウェイですわ。準備は万端でして?」
『問題ない。一般客に紛れて警備を配置してある』
アークの本気度から、旅行先でも気が抜けない。バックに気づかれないように警備体制を敷く。旅行先がバレないようにしながら、場所を移していく予定だ。
まずは動物園。ウェイも疲れを残さないために眠る。
次の日、動物園にて、はしゃぐバックとエラ。だがウェイの表情はどこか固い。エラはウェイに尋ねる。
「楽しくないの? ウェイ」
すると笑顔でウェイは楽しいことを伝えるが、バックとエラはそうは見えなかった。
「ワタクシとした事が、不安にさせてしまいましたわ。今から全力で楽しむことに切り替えますので、それで許してくださいませ」
それからは様々な動物を見て楽しんだ。勿論シャルも一緒だ。
「シャルさん、あのゴリラってフンを飛ばしてくるんですか?」
「呼び捨てでいいですよ。そうです、汚いので離れましょう」
シャルが離れるように言うと、エラは興味深そうに聞く。
「でも本当に投げてくるのかな? 投げてくる瞬間を安全圏から見たいな」
「でしたらワタクシが囮になりましょう」
「ウェイ、無理しなくても……」
「大丈夫でしてよ、バック。避ければいいのですから」
バックの心配も他所に、ウェイは近づいて良いギリギリまで近づき、ゴリラを見つめる。
中々投げてこない。ゴリラも便意がこないのかもしれない。別の場所にも行きたいところだ。
「もういいよ、ウェイ。次行こう」
バックが言う。エラも納得したのでウェイは離れようとした。その時だった。
ゴリラが振りかぶる、それを見逃さなかった。エラは見ていた、その投げる瞬間を。
「ウェイ!」
タンと飛んだウェイはフンの飛び散る金網から前転で回避して難を逃れた。
「見てくださいましたか?」
「うん、凄い前転だった」
バックの言葉にガクりと肩を落としたウェイは項垂れた。
「ゴリラを見ていてくださいませ……」
そんなウェイにエラは笑いながら言う。
「私は見てたよ。凄いね!」
ゴリラが何を思ってフンを投げるのかはわからなかったが、ウェイは呟く。
「ガラスの仕切りくらいつけていてくださいませ……」
次のコーナーは鳥コーナーだった。喋る鳥に話しかけてみようというコーナーで、バックが話しかけようとする。すると鳥が話しかけてきた。
「タノシイ? タノシイ?」
驚いたバックは、笑顔で取りに語りかける。
「うん、楽しいよ、ありがとう」
「アリガトウ、アリガトウ」
鳥の言葉は、覚えただけの言葉かもしれない。それでも嬉しくなってしまうバック。
ウェイがふと悲しげに呟いた。
「人は皆、籠の鳥ですわ」
意味深なウェイの呟きに、そうだね、とウェイの手を握る。
「でもいつか羽ばたくわよ!」
エラの叫び、それはバックとウェイの心を動かした。いつか羽ばたく、それはきっと約二ヶ月後に来る事。
大空を舞う鳥のように羽ばたく日がちゃんとやってくる。たとえどんな形だったとしても。
それを胸に秘めて、バックはウェイの手を強く握った。ウェイはそれに対してゆっくり優しく握り返した。
宿で一泊する。どうせならと部屋に温泉がある宿を選ぶ。
三人で温泉に浸かりながら語り合う。不意にバックがウェイの背中の傷に触れた。
「痛くなかったの?」
するとウェイがニッコリ笑って言った。
「ワタクシ、痛みを耐える訓練もさせられましたので、ほとんどの傷はかすり傷と同等ですわ」
痛みを耐える訓練、それは想像してもわからない。バックが考えながら、どんな訓練だったのかを聞くと、ウェイは苦笑した。
「ひたすら激痛を受け続けるんですわ。そうすれば大抵の痛みには慣れますわ」
他にも毒への耐性をつける訓練や、射撃と剣戟の訓練など、普通では考えられない訓練が挙げられる。
「苦しいとは思わなかったの?」
「最初は苦痛で逃げ出しましたわ。でも師匠に連れ戻されては、それを繰り返しましたの。ですから師匠の顔は見たくありませんわ」
ウェイが師匠を嫌いな理由、それはその世界に連れ込んだ事にもある。
「ですが感謝もしてますの。こうしてバックを守れるのはその訓練があったからですわ」
エラは素直に感心した。ウェイは本当にバックのために命を懸けているのだと。自分にできることは何かないかと焦りもするエラ。
その様子を見てウェイは笑った。そしてエラの肩を叩いて頬にキスをした。
「ちょ、ちょっとウェイ!」
「エラ、あなたはあなたらしくいたらよろしいのですわ。ワタクシにできなくて、あなたにできることは必ずありますわ」
「そうかな? それならいいけど」
ウェイは本当に大胆な子だとエラは思う。そんなウェイの言葉を聞いて、自分らしさを貫けばバックの役に立てるのかもしれないという考えに辿り着けて、感謝するエラ。
外を見ると川のほとりがキラキラと光っていた。湯船から上がりベッドに寝転がると、明日の事が思い浮かぶ。
すうっと眠りにつくバックとエラを見て、ウェイは部屋を出て、電話をかけた。
「ウェイですわ。準備は万端でして?」
『問題ない。一般客に紛れて警備を配置してある』
アークの本気度から、旅行先でも気が抜けない。バックに気づかれないように警備体制を敷く。旅行先がバレないようにしながら、場所を移していく予定だ。
まずは動物園。ウェイも疲れを残さないために眠る。
次の日、動物園にて、はしゃぐバックとエラ。だがウェイの表情はどこか固い。エラはウェイに尋ねる。
「楽しくないの? ウェイ」
すると笑顔でウェイは楽しいことを伝えるが、バックとエラはそうは見えなかった。
「ワタクシとした事が、不安にさせてしまいましたわ。今から全力で楽しむことに切り替えますので、それで許してくださいませ」
それからは様々な動物を見て楽しんだ。勿論シャルも一緒だ。
「シャルさん、あのゴリラってフンを飛ばしてくるんですか?」
「呼び捨てでいいですよ。そうです、汚いので離れましょう」
シャルが離れるように言うと、エラは興味深そうに聞く。
「でも本当に投げてくるのかな? 投げてくる瞬間を安全圏から見たいな」
「でしたらワタクシが囮になりましょう」
「ウェイ、無理しなくても……」
「大丈夫でしてよ、バック。避ければいいのですから」
バックの心配も他所に、ウェイは近づいて良いギリギリまで近づき、ゴリラを見つめる。
中々投げてこない。ゴリラも便意がこないのかもしれない。別の場所にも行きたいところだ。
「もういいよ、ウェイ。次行こう」
バックが言う。エラも納得したのでウェイは離れようとした。その時だった。
ゴリラが振りかぶる、それを見逃さなかった。エラは見ていた、その投げる瞬間を。
「ウェイ!」
タンと飛んだウェイはフンの飛び散る金網から前転で回避して難を逃れた。
「見てくださいましたか?」
「うん、凄い前転だった」
バックの言葉にガクりと肩を落としたウェイは項垂れた。
「ゴリラを見ていてくださいませ……」
そんなウェイにエラは笑いながら言う。
「私は見てたよ。凄いね!」
ゴリラが何を思ってフンを投げるのかはわからなかったが、ウェイは呟く。
「ガラスの仕切りくらいつけていてくださいませ……」
次のコーナーは鳥コーナーだった。喋る鳥に話しかけてみようというコーナーで、バックが話しかけようとする。すると鳥が話しかけてきた。
「タノシイ? タノシイ?」
驚いたバックは、笑顔で取りに語りかける。
「うん、楽しいよ、ありがとう」
「アリガトウ、アリガトウ」
鳥の言葉は、覚えただけの言葉かもしれない。それでも嬉しくなってしまうバック。
ウェイがふと悲しげに呟いた。
「人は皆、籠の鳥ですわ」
意味深なウェイの呟きに、そうだね、とウェイの手を握る。
「でもいつか羽ばたくわよ!」
エラの叫び、それはバックとウェイの心を動かした。いつか羽ばたく、それはきっと約二ヶ月後に来る事。
大空を舞う鳥のように羽ばたく日がちゃんとやってくる。たとえどんな形だったとしても。
それを胸に秘めて、バックはウェイの手を強く握った。ウェイはそれに対してゆっくり優しく握り返した。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
七日後に神罰が落ちる。上層部は「下を切り捨てろ」と言った——私は全員を逃がす
蒼月よる
ファンタジー
七日後、この港に神罰が落ちる。
追放された元観測士イオナだけが、その事実を知っていた。
しかも災害は自然現象ではない——誰かが、意図的に引き起こそうとしている。
港の上層部はすでに手を打っていた。「下層区画を緩衝被害区として切り捨てる」秘密契約。被害を最小限に見せかけ、体制を守る冷徹な計画だ。
イオナは元護送隊長ガルム、荷運び組合長メラとともに動き出す。
犯人を暴き、証拠を公開し、住民を逃がし、工廠を止める——すべてを七日で。
被害を「選ぶ」管理か、全員を「残す」運用か。
追放観測士の、七日間の港湾カウントダウン・サスペンス。
この作品は以下の箇所にAI(Claude Code)を利用しています。
・世界観・設定の管理補助
・プロット段階の壁打ち
・作者による執筆後の校正
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
グレート・プロデュース 〜密かに国をコントロールする最強のエージェントは、恋に落ちた王女を大帝王に即位させることができるのか?〜
青波良夜
ファンタジー
魔法と、魔導科学が進んだ強大な国、グランダメリス大帝国。
俺は、この国を陰からコントロールする秘密組織でエージェントとして働いている。
今回の任務は、豪華客船で行われる密売の現場を探ることだった。
その任務の途中、俺は第三継王家の王女『メリーナ・サンダーブロンド』と出会うことになる。
メリーナ王女は婚約しようとしていたのだが、俺の軽はずみな行動が彼女の運命を変えてしまった。
その後、なんやかんやあり、俺はメリーナ王女に惚れられることに……。
こんなことは、エージェントとしては絶対にあってはならないことだ。
というわけで、俺はメリーナ王女と別れ、二度と会わないよう工作をした。
それなのに、まさか再び出会うハメになるなんて……。
しかも次の任務は、メリーナを大帝王に即位させることだって!?
――これは最強のエージェントが、乙女の恋心に翻弄されながら、過去最難関のミッションに挑む物語である。
※『ノベルアップ+』、『ネオページ』にも投稿してます。
※『小説家になろう』『カクヨム』に投稿し、一度完結済みとなった作品です。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる