魔法王とその弟子

ルイ

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「うっまー!!」

食堂に通され長い食卓に座ったディルは歓喜の声をあげ用意されたスープを次々と口に運ぶ。

「俺こんっっっな美味しいもの食べたの初めてかもっ!」

貧しい村に生まれたディルにとってスープとは申し訳程度の野菜に出汁を取りつくした鳥の骨を煮込んで、塩を入れただけのものだった。
しかし目の前のスープはどうだ、色鮮やかな野菜と豆に肉まで入っている。あまりの美味しさに目眩がしそうだ。

「それは良かった。沢山ご用意してございます、遠慮なくお召し上がり下さい」

ゼラは笑顔で傍らのグラスに水を注ぐ。

「これってゼラさんが作ったの!?」

「ゼラで構いません。私が作らせて頂きました」

「すごい!天才!料理の天才!!」

水を注ぐ手がぴたりと止まり今度は少し震えはじめた。前のめりになりゼラは左手で顔を覆った。

「!?、な、なに?どうしたの?」

何か気にさわる事でも言ってしまったのか、異常な反応にスプーンも止まる。

「いえ…誰かに召し上がって頂いて、お褒めの言葉まで頂けるのが…嬉しくて、つい……失礼いたしました」

並々と注がれたグラスの水は今にもあふれそうである。先程退室を急かされたのは早く料理を食べてもらいたかったからだ。

「魔法王様は食事を摂られませんので」

「食べないの?こんなに美味しいのに、好き嫌い激しいとか?」

「いいえ、摂る必要がないのです。魔法王様のお体は人間のように食べ物を摂取しなくとも維持できるのですよ」

よく理解できなかったがきっとそれもこれも魔法なんだろうと無理矢理納得し、そっと水をこぼさないように飲んだ。

「ねぇ、ゼラさ…ゼラは師匠の事を魔法“王”って呼んでるけど、それって魔法使いの王様って事?」

その問いに少し驚いたような顔をしてまたすぐにこりと微笑んだ。

「ディル殿は魔法をどのように認識されていますか?」

「え?うーんと…小さい魔法、暖炉に火を着けるような魔法を使える人はたまにいるけど、色んな魔法を使える人はあんまりいなくて使える人はすごい人、魔法使いすごい、みたいな?」

「ふむ、大体の認識は合っていますね」

愛らしい答え方に子供らしさが垣間見える。

「魔法は本来皆使えますが向き不向きがあるようです。まぁ一概にそうとは言えない場合もありますが…その魔法の源となっているのが魔法王様です」

ぽかんと口を開けて眉間にシワを寄せ、ゼラを見つめる。

「少し分かりにくかったようですね、例えば高名な画家がいたとしましょう。画家と同じ道具一式で同じ絵が描けますか?」

「描けない、ムリムリ」

「それが向き不向きです。では画家から絵の具を取り上げたら画家は絵が描けると思いますか?」

「ムリムリ、だって絵の具がなきゃなにも描けないよ」

「ではその絵の具を作れるのが魔法王様だけだとしたら?」

「あ!」

「分かっていただけたようですね、全ての魔法の源は魔法王様にある。世の魔法使いと呼ばれる者はその力を借りて使っているに過ぎません」

ゼラの解説に長く息を吐いた。
師は思っていたよりもずっとずっとすごい人だという事だけは理解できた。
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